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先生の教えたいこと(東山七条・智積院)

投稿:2012年6月 7日

「ここはそこらの美術館より、何倍もすごいんだから!」
 
「ここにはね、先生の教えたいことが全部つまってるんだ!」
 

ある日、七条の智積院の訪れたとき、一人のおじさんがやや興奮気味にそう話していました。
 
おじさんの周りには、おしゃれな若者が20人ほど。
 
おそらくこのおじさんは大学の先生で、授業で襖絵を見に来たのでしょう。
 
この智積院には、長谷川等伯の国宝に指定されている襖絵があるのです。
 
 
 
この先生についていけば、詳しい解説つきで見られるかも。
 
ぼくは学生さんに混じるようにして、収蔵庫に入りました。
 
 
 
中に入ると、金箔で豪華な、そして豪快な襖絵が展示されています。
 
まずは正面の、一番奥の襖絵へ。
 
「みんな、これがザ・等伯ですよ!」
 
先生は相変わらず興奮気味で、熱く語ります。
 
いろんな襖絵を見てきたけども、古松が豪快に描かれているこの感じは、確かに等伯の個性があふれる絵だなと思います。
 

「実はね、等伯はライバルの狩野派に学んだこともあるんだけど、個性が強すぎて独立したんだ。まあ見てよ。」
 
初耳です。やっぱり先生の解説は一味違う。
 
学生さんたちは食い入るように、襖絵を見つめます。
 
それを見て、ニコニコしながら見守る先生。なんだかいい関係です。
 
 
 
続いてその横の「桜図」へ。
 
こちらは等伯の息子、長谷川久蔵が描いたものです。
 
桜の花びらの盛り上がりまで、ガラスケースなしでじっくりと見ることができるので、かなりの迫力です。
 
構図は父親のように豪快な桜の木で、満開の桜を描いたものなのですが、父とは違い少し優しい感じもします。
 
「息子の久蔵はね、これを描いた次の年に死んじゃうんだ。久蔵の絵はほとんど残ってないから貴重だよ。」
 
先生の解説にもあるように、この桜図を残し長谷川久蔵は26歳で亡くなってしまいます。
 
 
 
そしてその横にある、「楓図」へ。
 
こちらは等伯が息子、久蔵の死後すぐに描いたもの。
 
等伯独特の幹の力強さはあるのですが、他の作品に比べてどこか繊細なのです。
 
まるで、息子の「桜図」に合わせるように、優しく楓の葉が描かれています。
 
「先生はこの絵が一番好きなんだ。言葉にできない美しさがあるんだよ。」
 
先生の言葉にもあるように、等伯の気持ちのこもった傑作だと思います。
 
 
 
そして見て頂きたいのがもう1点。
 
入口近くにある、等伯の弟子たちが描いた松の絵があるのです。
 
弟子なので、当然画風は似ています。
 
しかし、等伯独特のニョキっとした幹の迫力が足りないのです。
 
この絵も素晴らしいのですが、見比べることにより等伯の個性が、より理解できると思います。
 
 
 

ここで先生たちとはお別れし、庭園へ。
 
庭園に入るとまず、大きな大きなサツキの刈り込みが迎えてくれます。
 
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江戸時代からの古い木だそうで、迫力満点です。
 
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変わった形の味のある手水鉢と、背後にもあるサツキとの組み合わせでとても美しい庭園です。
 
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お寺の方によると、
 
「今年は見頃が遅いよ。だから梅雨どきに一番きれいかもね。」
 
とのこと。一部のサツキは咲いていましたが、見頃はこれからのようです。
 
yutan201206-4.jpg
 
 
 
三十三間堂や京都国立博物館も近く、アクセスも便利です。
 
サツキも見頃になるこの季節、先生の教えたいことがぎゅっとつまった、長谷川等伯と、息子久蔵の大作をご覧になってはいかがでしょうか。

 

関連リンク

京都宝物館探訪記「智積院」

京都ゆかりの作家 「長谷川等伯」



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