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京都と秋|「光と灯り」(アサヒビール大山崎山荘美術館)

投稿:2013年11月14日

“赤”は魔力を持っている。

真っ赤な口紅はあまりにも刺激的であり、怪我をした傷口を私達は直視することが出来ない。
学生は赤点を恐れ、会社は赤字に悩まされる。赤い絵の具は他の色を消しさり、何にも染まれない一匹狼。
“赤”は不吉なのだ。

しかし、同時に“赤”はとても魅力的である。

私は真っ赤に染まる夕焼けの町並みを眺める事が好きだし、真っ赤に育ったトマトが大好物である。
とりわけ、芸術家にとって“赤”は他の色と比べて特別な魅力をはなっている。
アンリ・マティスは、『赤い部屋』で元々真っ青だった部屋の壁を真っ赤に塗り直した。ポール・ゴーガンはタヒチの明るさと優しい時間のながれ、そこに暮らす人々を赤い絵の具を沢山使って描いている。
日本においても、葛飾北斎は秋に赤く染まった富士を描いた。秋になれば紅葉を、冬になれば赤く染まった冷たい頬を、芸術家は描き、写真に残した。

フランス印象派の、最も有名な作家の一人であるクロード・モネは日本に魅了された作家だ。
当時のフランスの芸術家の中では、ジャポニスムがある意味で流行となっており、ヨーロッパと全く違う遠い異国の文化を芸術家たちは好んで作品に取り入れていった。その中でクロード・モネも他の芸術家たちに負けず劣らずジャポニスムへ関心を示していった。

その中で、最もジャポニスムに影響を受け描かれた作品が『ラ・ジャポネーズ』である。
真っ赤な着物をはおり、大きく扇子を開いてこちらに得意げにポーズを決める西洋風の女性。壁には日本風のうちわが沢山と飾られている。

この作品の中で、一番の存在をはなってるのはやはりその大胆な着物である。
真っ赤な記事にもみじの様な模様と、歌舞伎役者らしき人物がえがかれている。これがクロード・モネを魅了した日本である。真っ赤な背景に綺麗に散っていく紅葉、そして舞台。明るく、そしてどこか謎めいた国。クロード・モネがこよなく愛したこの日本の風景は一体どこなのだろう。

当時の事は私には予想もつかないが、彼の愛した風景が今もしっかりと残っている場所がある。
それが京都だ。
秋の京都の街を歩くと、紅葉が、真っ赤な神社の鳥居が、舞妓さん達が、クロード・モネのあこがれた日本の町並みを感じる事が出来る。少し肌寒くなってきたこの季節に、赤を主役にしたこの町で、クロード・モネはこの異国の文化に大きな衝撃を受けた事だろう。

そんな、日本を愛してやまなかったクロード・モネの作品が京都で展示されている。『光と灯り』展である。
アサヒビール大山崎山荘美術館で行われているこの展覧会ではクロード・モネの他、“光”にスポットを当て、パウル・クレー、ジョルジュ・ルオーと言った有名な作家たちの作品をみる事ができる。

“光”という共通点を持つこれらの作品達を、秋の京都という場所で鑑賞する。
“光”と共に真っ赤に染まる京都とこれらの作品達のコントラストを、この展覧会で楽しんでみても面白いのかも知れない。



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