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※この記事は掲載時(2015年4月)の情報に基づきます。

特集記事

京都MUSEUM紀行。第二十三回【京都工芸繊維大学 美術工芸資料館】

京都ミュージアム紀行 Vol.22 京都工芸繊維大学 美術工芸資料館

  • “日本のデザインミュージアムの先駆
  • “大学ミュージアムだからできること

大学ミュージアムだからできること

「この資料館の特徴のひとつは、美術品としてではなく教材として集められた資料を扱っている点です。だからこそ、その資料をどのように教育へ生かすかを考えることはとても重要なポイントです」と、仰っていたのは、ご案内くださった美術工芸資料館館長を務める並木誠士さん。
そのお話の通り、美術工芸資料館では大学の施設としての特性や目的を生かした事業・企画も積極的に行われています。

例えば、美術館や博物館などで働く学芸員の養成。これは他大学でも行われていることですが、美術工芸資料館では学生が実際に収蔵品そのものに触れながら取り扱いを学ぶことができます。開催されている展覧会のなかには、学生・院生が資料整理・調査活動、現地調査や展示カタログの編集、付随して展示する模型の制作といった活動に積極的に参加しているものもあります。
また、2013年度からは文化庁の助成を受け、より専門的なスキルを学べる「アートマネージャー」の養成講座も開講。これは学生だけでなく一般の人も受講することができ、前半は100名程度の受講生が美術品の知識や取り扱いなどについての基礎事項を専門家から学び、後半は10数名程度までに選抜されたメンバーがより深く実践的な学びを体験することができます。
取材時にはアートマネージャー養成講座の一環として「まなぶ・まねぶ・まねる」展が開催されていました。この展覧会は受講生が自ら企画・運営を行っているもので、テーマの設定はもちろん、展示品も数ある収蔵資料からテーマにあわせて受講生が選び、構成を行っています。
この時のテーマは「模写」。うつすこと、と聞くとコピーやパクリといたネガティブなイメージを思い描きがちですが、デザインの技術を磨くために手本を模写したり、既にある美術品の姿を保存・記録するために実物を描き写すといったことは不可欠な要素。デザインの学校である京都工芸繊維大学では昔から行われてきた大切なことでした。そんなポジティブな側面に改めて注目し、考古学資料から美術品まで、さまざまな分野の資料を通して「写す」ことの意味を問う、それが展覧会のコンセプトとなっていました。
単純に見栄えのする作品を展示するのではなく、実際の学びや学校の教育活動に注目した内容を取り上げるのも、大学ミュージアムならではのものといえます。
「芸術系の大学は一見、どんな活動をしているのかわかりにくい部分がありますが、その点を改めて振り返って紹介することも大学の施設の役目であると思います」と並木さんは仰っていました。


また、活動は美術工芸資料館の中だけには留まりません。
2011年には、並木さんが声掛人となり、美術工芸資料館をはじめ京都市内に点在する他大学のミュージアム施設と「京都・大学ミュージアム連携」事業を設立しました。これは京都市内に点在する他大学のミュージアム施設とともに展示企画などの活動を連携して行うことを目指しており、現在は14大学の15ミュージアムが参加しています。2012年には各施設の目玉収蔵品をジャンルを問わず一挙公開するユニークな展覧会「大学は宝箱!」を開催し、これまでに京都のほか、九州や東北などにも巡回し、注目を集めています。このように、さまざまな大学のミュージアムが横のつながりを持って活動することは、全国的に見ても他にあまりない取り組みなのだそうです。
この他にも美術工芸資料館では、2013年度から行われている「大学美術館を活用した美術工芸分野新人アーティスト育成プロジェクト」という、将来有望な若手作家の活動を支援する活動もスタートしています。その一環として2014年1月~2月には、参加メンバーに展示会場として美術工芸資料館を提供し展覧会を開催しました。その会期中には、アーティストトークなどのイベントを「大学ミュージアム連携」のネットワークを活かし、他施設の学芸員さんらと共同で開催しました。所蔵品の展示公開に留まらない、新たな大学ミュージアムの活動にも精力的に取り組んでいます。
資料の展示施設としての枠を超えて、活動の幅を多岐に広げている美術工芸資料館。しかしその根底にはひとえに将来を担う人々への「教育」のため、という確固たる思いがあります。その思いは、明治時代に学校が設立された頃から変わることのないものです。
「資料を通じ、幅広く教育へ寄与すること、それがこの資料館における大きなコンセプトです。"大学のミュージアム”だからこそどんなことができるのか、それを常に考えていきたいと思っています」と、並木さんは仰っていました。
大学のミュージアムという役目を踏まえ、だからこそできることを模索し続ける美術工芸資料館。その無限大の可能性を探る取り組みは、これからも続きます。今後どのようなアイディアを生かした展示や企画が行われるか、要注目です!




建築の装飾デザインや家具調度品の図面、織物図案の見本帳とそこからのスケッチなど、まさに講義で使用されていた教材類もコレクションの一部となっています。普通の美術館では見られないような資料に出会えるのも、大学ミュージアムの面白さです。

(取材に関しては、京都工芸繊維大学美術工芸資料館館長・並木誠士様、広報ご担当木村幸央様にご高配を賜りました。この場を借りて厚く御礼を申し上げます)


こちらは寺社の壁画を模写した作品。(右が金閣寺、左が宇治の平等院鳳凰堂のもの)カメラや写真が一般に普及していなかった時代は、細密な模写による記録が文化財保存において不可欠でした。京都高等工芸学校における、作品を創作することだけに留まらない、絵を描く技術の教育を伝える一品です。

京都工芸繊維大学 美術工芸資料館

所在地

〒605-8585
京都市左京区松ヶ崎橋上町

開館時間

10:00~17:00(入館は16:30まで)

休館日

日曜日 年末年始、大学入試期間
※休館日は時期や展覧会によって変わることがございます。
詳細は公式HPを参照、またはお問い合わせ下さい。

お問い合わせ

電話番号:075-724-7924

FAX:075-753-3277

E-Mailsiryokan@kit.ac.j

公式サイト

http://www.museum.kit.ac.jp/

■料金

大人:200円、学生:150円(高校生以下無料)
※展覧会によって異なる場合があります

■交通のご案内

【京都市営地下鉄】
*烏丸線「松ヶ崎」駅下車、1番出口から徒歩8分

【京都バス】
*「高野泉町」下車、橋を渡り東へ徒歩8分

■その他注意事項など

※京都・大学ミュージアム連携所属、大学の学生・院生は、学生証の提示により無料で入場できます。




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