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  3. 京都MUSEUM紀行。Special【京都市美術館 リニューアル特集】リニューアルコンセプト編 前編

※この記事は掲載時(2018年11月)の情報に基づきます。

特集記事

京都MUSEUM紀行。Special【京都市美術館 リニューアル特集】

京都ミュージアム紀行 Special 京都市美術館 リニューアル特集

  • リニューアルコンセプト編【前編】
  • リニューアルコンセプト編【後編】
  • リニューアル工事現場見学編

2019年度中のオープンに向けて、リニューアル工事(2018年1月着工、2019年10月竣工予定)を行っている京都市美術館。
これまでも京都の主要なミュージアムとして親しまれてきた京都市美術館ですが、リニューアルに伴いより新たな姿に生まれ変わろうとしています。
今回はリニューアル事業を担当されている京都市美術館総務課の葉山さんに、リニューアルに対する意気込みや目標、そして美術館の目指すこれからについて、お伺いしてきました。

京都市美術館リニューアルの理由とは

今回京都市美術館をリニューアルすることになった理由ですが、まずは建物自体の抱える問題があげられます。
京都市美術館の建物は昭和8年(1933)、今から80年以上前に建てられたものです。そのため、建物の損傷や設備の故障など、施設全体の老朽化は深刻な状態でした。

同時に現代の美術館に対するニーズを十分に果たせるとは言えない状態でした。
例えば、京都市美術館のコレクションには日本画が多く含まれているのですが、日本画は繊細で,作品の保護のために展示室の温度や湿度を一定に管理しなければならないのですが、部屋によってそれが出来るところ出来ないところがあり、作品を展示できる場所が限られていました。

加えて、現状の展示室の仕様では、表現が多様化した現代の美術作品の展示には対応しきれない部分がありました。例えば、天井の高さが足りずに大型作品の展示が難しかったり、空間全体で表現する作品の展示に適していなかったり、といったように。近年建設された美術館は、色々な作品の展示に対応するために可動式の展示壁を備えているところもありますが、京都市美術館は歴史的建造物のため、そのような機能もありませんでした。
この老朽化と新たなニーズへの対応は、特に急がれている部分でした。


開館初期の外観。京都市美術館は昭和8年(1933)に昭和天皇の即位を記念して「大礼記念京都美術館」の名を冠して開館された。

京都市美術館の名品を
多くの人に見ていただきたい

次にあげられるのは、展示室の数の問題です。
京都市美術館は、公立美術館としては比較的規模の大きな施設にあたりますし、展示室の数も多い方だと思うのですが、十分に足りているとは言えない状態でした。

美術館は本来、未来に残すべき作品を収集し、その価値を広めるために展示する場所であり、多くの美術館では、自分達のコレクションを常設展示するためのスペースを備えています。また、一部の美術館では、それに加えて市民や美術団体等の作品発表の場としてや、海外の名品の巡回展等の会場として貸し出すスペースを備えているのですが、京都市美術館はこれまでそれが一緒くたになっていました。文化芸術都市である京都市の美術館ですから、多くの方が作品を発表する場を確保することも大切なことですし、ほぼ常に展示室全てが稼働している状態は、鑑賞に訪れる方にとっても望ましいことです。

しかし、結果的に自分達のコレクションを常設展示するスペースが確保できず、期間限定のコレクション展を年1、2回だけ開催するという状態になっていました。
京都市美術館のコレクションは現在約3,500点あり、重要文化財である竹内栖鳳の『絵になる最初』をはじめ、近代美術を代表する日本画の名品を数多く有しています。でも、肝心の展示場所や機会が限定されていては、市民の皆さんや観光客の皆さんに人気作品をお見せできない。また、今はまだあまり知られていないけど、ぜひ多くの人に見ていただきたい、未来に伝えていきたい隠れた名品もたくさんあるのに、紹介できる機会が十分ではなかったんですね。


竹内栖鳳《絵になる最初》1913(大正2)年 重要文化財

このように、コレクションを常設展示できる場所と貸会場として利用していただける場所の確保を両立できるようにする必要があったのです。

それから、美術館は作品を収集・保存・展示・研究する施設であると同時に、生涯学習の場でもあります。講演会やワークショップ、体験イベントを行うこともそのためといえるのですが、そういうことを行うためのスペースも不足していました。そのため、「美術って面白い」ということをもっと多くの方に伝える教育普及活動も、開催が限定的になっていたところがあります。

これからの美術館の在り方を考えて、
大きな見直しを

アメニティ機能に乏しい状態だったことも問題でした。
ショップやカフェ、レストランといった施設ですね。展示を見る以外でゆっくりくつろいで過ごせるような場所がきちんと確保されていなかった、とも言えます。これまでにも多くのお客様から、アメニティ機能の充実を求められていました。
というのも、海外の名品の巡回展等を開催した時などはしばしば行列ができますが、待機できる場所が屋内に十分確保されていないので、屋外に並んで頂くことになってしまう。時には真夏の炎天下や冬の寒い時期に2時間、3時間待ちということもあります。待っているうちに疲労困憊されてしまって、いざ入場する頃には作品をゆっくり楽しめない、ということが起きてしまっていたのです。


リニューアルで新たに設置されるカフェのイメージ

京都市美術館ができた当時と比較して、現代は美術館に展示する作品も求められている機能もあまりに多様化していて、想定を遥かに超えてしまっている。現代の、そしてこれからの美術館の在り方を考えれば、大きな見直しが必要な時期にきていたのだと思います。

“世界の文化首都を目指す京都市の美術館”として

そして、建物自体の課題とは別の話になるのですが、リニューアルには“世界の文化首都を目指す京都市の美術館”としての在り方を改めて考える、という意味もあります。

京都は今、世界的な観光都市となっていますし、長い歴史の中で培われてきた多様な文化芸術の魅力も広く伝わっています。様々な国からのお客様が京都へいらっしゃいますが、多くの方は京都だからこそ味わえる日本の美意識や京都らしさとの出会いや体験を求めている。こういった観点で見た時に、京都にある美術館だからできることがもっとあるのでは、と思うのです。


  • リニューアル後の外観イメージ(夜)


  • リニューアル事業を担当されている京都市美術館総務課の葉山さん

非常に高いハードルとは思いますが、世界水準の美術館にしていきたい。「さすが京都の美術館だな」「また行きたいな」「みんなにも紹介したいな」そう思われるような施設にしていかなければならない。それは、市民の財産である美術館を、未来に受け継いでいくためにも大切なことだと考えています。

《2》リニューアルコンセプト編【後編】に続く

京都市美術館

所在地

〒606-8344
京都市左京区岡崎円勝寺町124(岡崎公園内)

開館時間

9:00〜17:00(入館は16:30まで)
再整備のため本館閉館中(別館のみ開館)

休館日

※2019年度中リニューアルオープン予定

お問い合わせ

電話番号:075-771-4107

FAX:075-761-0444

E-Mail:bijutsukan@city.kyoto.lg.jp

公式サイト

http://www2.city.kyoto.lg.jp/bunshi/kmma/

■料金

特別展・企画展:展覧会によって異なる

■交通のご案内

【JR・近鉄】
「京都」駅より
市バス 5、100、110系統にて「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ

【阪急電車】
「烏丸」駅・「河原町」駅より
市バス32系統にて「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車すぐ
市バス5、46系統にて「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ

【京阪電鉄】
「三条」駅より
市バス5系統にて「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ

「祇園四条」駅より
市バス46系統にて「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ

【京都市バス】
5、32、46、100、110系統にて「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ
201、202、203、206系統にて「東山二条・岡崎公園口」下車、徒歩約5分

【京都市営地下鉄】
東西線「東山」駅下車、徒歩約5分

【【自動車をご利用の方】
大阪方面より:名神高速道路京都南I.C 下車 市内へ約10km
名古屋方面より:名神高速道路京都東I.C 下車 市内へ約7km

※ 専用駐車場は無し(二輪・自転車用駐輪場は有ります)お車の方は、岡崎公園駐車場をご利用下さい。
電話:075-761-9617(1時間まで500円、以後30分毎200円)




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