【クラクラするはなし。】第2回。2004年7月13日に亡くなった天才指揮者カルロス・クライバーさんをとりあげます。

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【クラクラするはなし。】7月13日はカルロス・クライバーさんの昇天した日でした。

スタッフ1号

スタッフ1号 (2010年7月15日 09:52)

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奇人?変人?野菜になりたかった天才指揮者クライバーさんのこと。

去る13日は名指揮者カルロス・クライバーさんのご命日でやんした。名指揮者であると同時に超有名指揮者なので「紹介」だなんて恐れ多いのですが、京遊MUSICにクラファンは案外少ない?ような気がするので、地道に布教するのです!

ちなみに、クライバーさんは7月3日がお誕生日で、今年は生誕80周年でした。没後で数えると6年ですか。クラシックでは「生誕」と「没後」ってひとつの大きな話題なんですけど、クライバーさんは7月に生まれ7月になくなったので、話題の切り替えが忙しいです。


クライバーさんはどんな人?


もうね、これに関しては見てもらったほうが早いですね。

曲は「のだめ」で一挙にお茶の間に浸透したベートーヴェン交響曲第7番から4楽章です。画面の中央に踊り狂ってるおじちゃんがいますが、踊ってるわけではないのです。指揮してるのです。そう、これがカルロス・クライバーさんです。

最初は、おじちゃんが音楽に合わせて踊り狂ってるようにしか見えないのですが、よくよく見てると「いや、どうもこの踊りから音楽がつくられてるっぽいぞ・・・?」ということに気づくと思います。これがクライバーさん指揮の特徴「踊るような指揮」です。まるで音楽に合わせて踊っているように見えて、オケのすべての音を体全体を使ってつかんでいるんですね。ふつう指揮者というとなんか棒を上げ下げしてる人程度の印象しかないものですが、クライバーさんは「こうやってこの演奏をつくっているんだ!」ということが目に見えてわかりやすいですね。

演奏に話を戻すと、クライバーさんのヴィヴィッドかつ詩情豊かな楽曲解釈、快刀乱麻を断つごとき快速のテンポ設定が相まって、一時期はベト7と言えばクライバーさん、という時期がありました。

クライバーさんがなぜこんなにもベト7を素晴らしく振れたのか。それは、彼のレパートリーが極端に少ないところに起因します。クライバーさんは完璧主義者で、自分が曲をすみからすみまで理解するまで曲を振ろうとしませんでした。ふつう、名指揮者といえば何百何千とある曲を演奏し、名演を数多く残す人をさしますが、クライバーさんは全くその逆。しかし、残されたわずかな録音(クライバーさんはレパートリーも少なければ演奏会の回数も少なく、レコーディングはさらに少なかった)を聴けば、それが凡百の演奏家が辿りつくことのできない「超名演」であることがわかります。


野菜になりたかった天才指揮者


クライバーさんのお父さんは、これまた有名な指揮者エーリヒ・クライバーさんという人です。「有名」どころじゃなく、もはや伝説の大指揮者と言っても過言ではないほどすごい指揮者でした。そんなお父さんを目指してか、クライバーさんは若くして指揮者を志します。

しかし、父クライバーさんはこれに反対。クライバーさんは工科大学に進学しますが、やっぱり音楽の道に進みます。当時既に不動の地位を築いていた父クライバーさんに気を使ってか「カール・ケラー」という名前でクライバーさんは音楽活動をします。父クライバーさんは息子に厳しく接する反面、音楽関係者に紹介してまわったりもしたようです。親子であり、音楽家として同じ土俵に立った二人の関係は、われわれには想像もつかない複雑さがあったようです。

よく言われることですが、クライバーさんはこの父クライバーさんとの比較を嫌って、自分が自信を持てる曲しか演奏しなかったのではないかという説があります。たしかに、超がつくような世界的大指揮者を父に持てば、下手な演奏はできません。もしかしたら悪評が自分だけじゃなくお父さんにも向かうかもしれない。そう考えたら、普通の神経では演奏できません。

クライバーさんの音楽に対する神経質さは尋常なものではなく、演奏に納得がいかなければ、公演だろうとレコーディングだろうとキャンセルする、ということは日常茶飯事でした。

そうして、クライバーさんの演奏会のチケットは、運良くチケットを買っても「果たしてキャンセルされないだろうか・・・」という不安がつきまとう、プラチナチケットの中のプラチナチケットになっていきました。しかしひとたびステージに上がれば超名演を必ず残す・・・クライバーさん本人の出演回数に反比例して、世間の「幻の大指揮者、カルロス・クライバー」像は大きくなっていきました。

クライバーさんは、周囲の期待に疲れたのか、前回の【クラクラするはなし。】で触れた指揮者のバーンスタインさんにこんなことをつぶやいたと言います。

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まあしかし、1号が思うのは、それでもクライバーさんは音楽が好きだったんだろうなあ、ということです。彼は世間の勝手さや、自分自身の自負や、本気で音楽をやることの厳しさ、そういったものをわかった上で指揮者になり、生涯を音楽家として過ごしたわけです。それは特別な思いがないとできないことではないでしょうか。

もうちょっと環境が違っていたら・・・しかし環境が違えば、名指揮者カルロス・クライバーはいなかったかもしれない・・・クライバーさんからすると大きなお世話ですが、そんなことを考えてしまいます。


クライバーさんの「こうもり」


辛気臭い(けど大事な)話はおいといて!クライバーさんの数少ないレパートリーにヨハン・シュトラウスのオペラ「こうもり」があります。これ、もはや伝説になっているウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでの演奏もあって、そちらのほうが演奏レベルとしては上なのですが、この演奏はとにかくクライバーさんが楽しそうなんですよね。「こうもり」というオペラが、手兵である楽団が、本当に好きだったんだなあということがわかるような表情をしてます。

6年前に本当の意味で「雲の上の人」になってしまったクライバーさんですが、天国ではお父さんと仲良くしてるんでしょうかね。数は少なくともほんとうにいい音楽を残してくれた天才の安息を祈った7月13日でした。


YouTubeでもっとクライバーさんの演奏をみる



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