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【レポート】志野流二十一代家元継承記念展 香道の正統 志野流五百五十年 一子相伝の血脈(白沙村荘・橋本関雪記念館)

2026/07/13

「受け継ぐ」ことの重みを感じる。志野流550年の「継承」を見る展覧会

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白沙村荘・橋本関雪記念館にて5月29日より開催の「志野流二十一代家元継承記念展 香道の正統 志野流五百五十年 一子相伝の血脈」。開催前日の5月28日に内覧会・レセプションに参加しました。

室町時代後期に誕生し、550年にわたり一子相伝で「香りを聞く」教えと血脈を継承してきた、香道の家元のひとつ・志野流。京都では2023年の細見美術館での展覧会以来、3年ぶりとなる本格的な展覧会となっています。
細見美術館での展覧会のレポートはこちら

本展は、若宗匠だった蜂谷一枝軒宗苾氏が、この度21世家元を継承されたことを記念するもの。会場である白沙村荘・橋本関雪記念館の橋本眞次館長と宗苾氏が長年親交を結んできたことが、開催の縁となったそうです。

そもそも志野流は、東山銀閣寺で室町幕府八代将軍・足利義政の命により、初代志野宗信が当時最高位の香木コレクションの鑑定・選別を行い、その過程で炷香(ちゅうこう/香を炷く作法)を制定していったことに始まります。

銀閣寺にほど近い橋本関雪記念館は、その「始まりの地」をすぐそばにある会場。その点においても特別な展覧会です。

※本記事の写真は全て許可を得て撮影したものです。


会場は3部構成となっており、
MUSEUMⅠでは初代志野宗信から現代までの歴代家元の肖像画、手紙、門人帳等を展示。
MUSEMⅡでは、歴代家元二十名が命を懸けて守り抜いてきた香木が数多く並べられています。
MUSEMⅢでは、志野流家元に伝わるさまざまな香道具や香炉が展示されています。

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1階:MUSEUMⅢ 香道具・香炉の展示

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1階:MUSEUMⅠ 歴代家元の肖像画や資料の展示

志野流の歴史は長い分、何度も時代の危機に見舞われてきました。

特に大きな転機となったのは幕末期です。
蛤御門(禁門)の変の争乱に巻き込まれた志野流家元は家屋を焼失。これを機にそれまで360年以上にわたり暮らしていた京都を離れ、尾張徳川家や多くの高弟者の庇護を受けて尾張(名古屋)へ疎開することになります。
しかし、その後第二次世界大戦の大空襲にも見舞われ、志野流は流儀存続の危機に何度も瀕しました。

今展示されている品々は、そうした度重なる危機をくぐり抜けて現在まで伝えられたものです。

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1階:MUSEUMⅠ 歴代家元の肖像画や関連資料の展示

展示されている歴代家元の肖像画をよく見ると、平和な時代の家元は穏やかな表情に、困難な時代の家元は厳しい表情に感じられます。時代の空気がそこはかとなく反映されているようで、印象に残る展示です。


二階のMUSEUMⅡには、貴重な香木の数々とともに、本展の目玉作品のひとつ、かつて足利義政公が所持した青磁香炉《あをやぎ》が展示されています。

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2階:MUSEUMⅡ 青磁香炉《あおやぎ》

《あをやぎ》は、義政公が中国から取り寄せた唐物の青磁香炉で、いわゆる「東山御物」と呼ばれる品のひとつです。
義政公はこれを愛用し、蓋には自ら記した「あをやぎ」の字が残されています。
この香炉は現在も大切に保管されており、展示される機会はほとんどないそう。ぜひ一度お目にかかっておきたい一品です。

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2階:MUSEUMⅡ 六十一種名香の展示

香木については、志野流家元に伝わる貴重な香木の塊や、初代宗信が選んだ至宝「六十一種名香」も紹介されています。

そのうち「八重垣」と足利家にとって重要な名香「賀」は、ケース越しではありますが実物を目にすることができます。
家元でなければほぼ拝む機会のない、貴重な品々です。

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2階:MUSEUMⅡ 六十一種名香のうち
(左)香木「賀」(右)香木「八重垣」の展示

特に「賀」は室町幕府三代将軍・足利義満公が秘蔵していた香木で、その銘は義満公五十歳の祝賀の際に炷かれたことに由来します。以来、特別な祝いの席のための香木として扱われ、今も重要な儀式や家元継承の際に用いられるそうです。

宗苾氏も二十一代家元継承の際にこの香木を使用されており、その時の写真は隣室に展示されています。

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2階:MUSEUMⅡ 志野流家元が守り伝えた貴重な香木の数々

「仮に香道具は壊れても直すことができるが、香木は作り直せない。だから何かあれば、最優先で香木を抱えて逃げる」

宗苾氏は、先代家元である父からそう耳にしたことがあるそう。そしていつからか自らもそれを意識していると言います。

香道で使う香木は、東南アジアの森の木が数十年をかけて香り成分を蓄積することで自然に生まれるもので、人の手では生み出せません。

また、香りもその時々の環境や、香木を載せる灰の高さ・火加減等によって変わるため、各香木にとって最もふさわしい方法を家元は作法として受け継ぎ、代々守り続けてきました。

道具も、香木も、ここに展示されているものはすべて「継承」のかたちです。


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内覧会に続いて行われたレセプションでは、一枝軒宗苾氏と橋本眞次館長によるトークイベントも開催されました。
その際にお二人が語られていたのは、ともに過去の先達から「受け継ぎ、守っていく」立場にある者の義務についてです。

宗苾氏は志野流香道と家に伝わる香木や道具類など、橋本館長は近代を代表する日本画家・橋本関雪の作品や自宅兼アトリエである白沙村荘などを、それぞれ「受け継ぐ」立場におられます。
守るものは違えど役目は同じということで、共通する話題も多く盛り上がるトークとなっていました。

文化を、文化財を守るということは決して利益が出るものではない。
それでも、先達が命がけで守り、後世に残そうとしたものを託される立場にある以上、自分の代で止めてはいけない――
そんな強い使命感が、お二人の言葉から伝わってきました。

香道を嗜む方はもちろん、「代々教えと血脈を受け継いできた家」の重みを感じたい方にも、ぜひ足を運んでいただきたい展覧会でした。

会期中には宗苾氏による香道の体験ワークショップも開催。詳細は白沙村荘・橋本関雪記念館のSNS等をご参照ください。

展覧会情報

志野流二十一代家元継承記念展 香道の正統 志野流五百五十年 一子相伝の血脈

会期:2026/5/28~7/26
会場:白沙村荘・橋本関雪記念館

https://kyotodeasobo.com/art/exhibitions/shino550-21/

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