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【レポート】酒井抱一と江戸琳派の全貌(細見美術館)【1】琳派と出会った大名子息・酒井抱一

2012/04/16

4月10日より細見美術館にて始まった「酒井抱一と江戸琳派の全貌」展。
琳派関連作品の展示に定評のある細見美術館ですが、今回の展覧会は千葉市立美術館、姫路市立美術館との3館合同による特別企画展!
いつも以上に盛りだくさんのボリューム&豪華内容の展覧会になっています。
スタッフさんも大変気合の入ったこの展示の様子をでご紹介します!

琳派と出会った大名子息・酒井抱一

浮世絵も描いていた抱一

もともと酒井抱一は、姫路の領主酒井雅楽頭(うたのかみ)家の次男として生まれました。
酒井家は徳川家がまだ三河の領主だったころから仕えてきた「譜代大名」と呼ばれる位の高い大名でした。
抱一の実家は中でも特に文武両道を旨とし、彼のおじいさんも、両親も、大変文芸や書画に熱心な人だったそうです。また、家督を継いだ抱一の兄・忠以(ただざね)も、雅号(絵描きとしての名前)を持つほど書画に造詣が深かったといいます。そんな環境で育った抱一が、絵に興味を持つことは必然でした。

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最初の第一展示室は、「江戸琳派」と呼ばれる琳派に影響を受けた作品を中心に、抱一の初期から晩年までの作品をおさらいしたような内容になっています。

意外なのは、抱一は最初浮世絵も描いていたこと。いかにも江戸美人といったきれいな女性が、繊細なタッチで描かれています。

今回の展覧会の企画を担当した学芸員の岡野さんによると、当時は浮世絵は大変俗なもの、破廉恥なものといった意識も強かったため、大名子息である抱一が浮世絵を描くのはかなり破天荒な行動だったそうです。今でいえば、写真週刊誌やグラビアを模写するようなものでしょうか。
ちなみに抱一は、大名の若様なのに吉原の遊郭に足しげく通っていたり、庶民のお遊びだった狂歌や洒落本に投稿したりもしていたそうです。
それでも、抱一を後押ししていた兄は咎めることなく暖かく見守っていたそうです。懐の広い...

琳派との出会いと消化

しかしその兄は抱一が29歳の頃に亡くなってしまいます。
後ろ盾がなくなってしまった抱一は、その3年後に江戸の屋敷を出て、37歳の時には出家。武士の身分を捨ててしまいます。しかし彼にとってそれは身分の縛りを離れて自由になることでもありました。

抱一が琳派の作風に傾倒するようになるのも、ちょうどこの頃からだそうです。
特に彼が熱心に研究したのが、尾形光琳でした。実に100年以上も年が離れている光琳になぜ抱一がほれ込んだのか、その理由はまだ定かではありません。
しかし酒井家には抱一が集めたと思われる光琳の作品がいくつか伝わっているそうで、早いうちから興味を持っていたことが伺えます。

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酒井抱一筆・橘千蔭「桐図屏風」(個人蔵)
展示期間:4月10日(火)~4月22日(日)


こちらは、今回が初公開となる「桐図屏風」(個人蔵)。まだ抱一が琳派を学び始めた頃の作品だそうで、確かに良く見ると琳派独特の技法「たらしこみ(まだ絵の具が乾いていないうちに別の色の絵の具をたらす)」が、少々歪つな感じがして、まだ勉強中であったろうことがうかがえます。

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酒井抱一筆「八橋図屏風」(出光美術館)
展示期間:4月10日(火)~4月22日(日)


向かいにある「八橋図屏風」(出光美術館)。
こちらは光琳の名作「八橋図屏風」(アメリカ・メトロポリタン美術館)を写したもの。こちらはほぼ完璧に、琳派らしい「面で絵を描く」グラフィカルなタッチをマスターしています。
(抱一の描いたものの方が、杜若の数を少し減らして間隔をあけていて、すっきりした印象にみえるかも。ちょっと見比べてみて下さい)
色合いも大変鮮やかで、明るい印象です。これは絵の具が大変高価で質の良いものを使っている証拠だそう。さすが、出家したとはいえ大名家の血筋は伊達じゃない...

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酒井抱一「秋草鶉図屏風」(重要美術品) 山種美術館蔵
展示期間:4月10日(火)~4月30日(月)


そして「秋草鵜図屏風」(山種美術館)。
琳派の装飾的な画風を消化しつつ、抱一の個性もよくわかる作品です。
葉や紅葉には「たらしこみ」技法が使われていますが、全体的に植物も鳥(うずら)もとても写実的で繊細です。
「ススキの細い葉がまるで籠のように重なり合っていて、その奥に絵のメインになるうずらを描いています。何か越しに、少し見えづらい状態にした方が、人はより心で情景を想像するんです。その効果を抱一は意識したのでしょう」(岡野さん)
琳派にはない、風に揺れるようなリアルな植物の描写は抱一らしいポイント。この絵が、後に抱一一番の傑作とも言われる「夏秋草図屏風」の雨風に揺れる草花の描き方につながるのだそうです。

琳派の模倣には終わらない、自分らしい表現を忘れなかった抱一。
「琳派」ではなく「江戸琳派」というもうひとつの流れが生まれた所以がここに見えます。

※「夏秋草図屏風」(東京国立博物館)は後期(5月2日~5月13日)に登場予定です!関西での登場は昭和初期以来!という本当に久々の展示。ぜひお見逃しなく!

第一展示室は、片方に色鮮やかな作品、もう片方がモノクロームのシックな作品が並んでいて、同じ琳派系統の作品なのに印象が全く違います。このコントラストも面白いですよ。

<つづく>

展覧会情報

酒井抱一と江戸琳派の全貌(細見美術館)4/10~5/13(三期構成・展示替有)


※ 途中で展示替がございます。ご紹介している作品が展示されていない場合もございますので、あらかじめご確認下さい。
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