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【祇園祭レポート】杉本家住宅の「祇園祭 屏風飾り」展に行ってきました!

2011/07/13

7月14日~16日の宵山期間に開催される「屏風祭」。
鉾町近くにある旧家が、玄関を開けたり格子を外すなどして、家に伝わる家宝の屏風や美術品などを一般に公開する行事です。

今回は一足早く、12日に杉本家住宅さんにお尋ねして来ましたので、その様子をご紹介します。
杉本家住宅 夏の特別一般公開「祇園会 屏風飾り」展はこちら!

sugimotoke1.jpg今回はせっかくなので夜の姿が見たいと思い、ちょうど日が落ちたころにお伺いしました。
昼間ももちろんよいのですが、日が落ち、少し暑さが和らいだ夏の夜に見るというのはこの時期ならではの楽しみや風情があります。

屏風飾り(屏風祭)自体は毎年開催されていますが、その作品の展示のされ方、配置などは工夫し、異なったものになっています。
今年の展示は「凝り過ぎず「すっぱり」した空間」だそう。

毎年、夏の一般公開は祇園祭ということも手伝って大変多くの方が杉本家にもいらっしゃいます。
そのため、如何に導線を確保するか、見る人の目線をどうするか、そして如何に風を上手に通すか、が展示を考える上での課題となっているそう。

今回は、屏風を普通に並べるのではなく、ちょっと変わった展示のされ方になっていて、屏風の新たな表情や空間演出の効果を楽しむことができました。

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『時代香袋扇面散図屏風 二枚折』
昨年は広間に鎮座していたこの屏風ですが(昨年のレポートはこちら)、今回は左右の隻を一緒に並べずに、離して部屋の両角に展示されていました。
真ん中が大きく開いているので、風通しもよく奥行きが増して感じられ、空間がとても広く見えます。
また、屏風がまるで壁に描かれた絵か、ふすまのようにも見えます。

sugimotoke4.jpg『時代菊図屏風』(江戸初期)
こちらも去年も登場していた作品ですが、部屋の壁に沿って配置されていたため、まるで寺院の金碧障壁画のような雰囲気になっていました。同じ作品なのに、少しおき方を変えるだけで全く違った印象を受けます。
展示企画を担当している学芸部長の杉本歌子さんにお伺いすると、「この屏風は180度まで大きく開くことができるので、色々な形や置き方をすることができるんです」とのこと。
屏風は常に同じ場所に出しっぱなしにしておくのではなく、その場の状況においてたたんでしまってしまえたり、開く角度を変えたり、自由に移動させることができます。
同じ空間を行事や季節などに合わせて様々な雰囲気に変化させるのが日本の家屋の特徴といわれますが、屏風も同じように、本当に色々な使い方ができるものなんだ、と実感させられました。美術館で「絵画作品」として展示されている状態ではまず味わえない、町家という空間だからこその体験です。

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ふと目をやると、向こうの部屋が見えたり、すだれ越しに灯りや人影が透けて見えたりします。
空間の奥行きや、夏のしつらいならではの効果も味わえます。

sugimotoke3.jpg俵屋宗達(伊年印)『秋草屏風』。今回の主役的存在として、家の中心、「中の間」に展示されています。
金地を用いた屏風は、元は夜間はろうそくや行灯といった明りしかなかった時代、光をやんわりと反射させて少しでも部屋を明るくしようという目的を持っていました。
夜の帳が落ち、薄暗い中でほんのりとひかりを放つ屏風は、昔の人々が目にしていた屏風の姿に近いものが感じられます。
萩、ススキ、桔梗、小菊、さんきらい、葛、藤袴、薊、なでしこ...などなど、繊細なタッチで描かれた秋の草花が風にそよいでいます。まあ夏なのに秋?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、屏風を見て、秋の夜長に思いをはせてみると、少し涼しく感じられるような気がします。

また、ここに登場する花が、あちこちの部屋に生け花などで飾られていました。ちょっと探して見てはいかがでしょうか?

sugimotoke7.jpg今回は初めて夜、薄暗くなってからお邪魔させていただいたのですが、日中とはまた違った雰囲気をゆったりと味わうことができました。
「ハレ」の日の華やかなしつらいの中に、吹き抜ける夜風や、目にも涼しい氷柱。ぼんやりと夜の闇に浮かぶ灯篭の明かり、格子やすだれ越しに透けて入ってくる光。
冷房なんてない時代の人たちは、こんな目に見えるもの、体で感じられるもので涼を感じ、晴れやかなお祭りと共に夏を楽しんでいたのでしょう。
あまりに居心地が良過ぎて、気がつくとついつい長居をしてしまいました。

(ちなみに、氷柱は実際、まだ杉本家が商店として営業していた頃に、夏のお客様をもてなすために実際に置かれていたそう。昔は大きな氷の塊などそうそう手に入りませんから、当時はとても贅沢なものだったことでしょう。贅沢でも、とても風流。町衆の心意気も感じられます。)

ここでご紹介した他にも、祇園祭を題材にした『扇面祇園会図』(山鉾の図柄をあしらった扇面図。よく見るとちゃんとご神体なども描かれています。土佐光吉の作・後陽成天皇所持品と伝わっています)などの祇園祭の時期らしい作品、目にも涼やかな冬の景色を描いた狩野派の『流水雪待柳白鷺図屏風』など、すばらしい作品があちこちで見ることができます。

祇園祭の際は、ぜひ京都の町家で夕涼みをしながら、ゆったりと芸術鑑賞のひとときを楽しんで見るのはいかがでしょうか。

また、14日からの宵山期間中は、同じ建物の「表の間(店の間)」で伯牙山のお会所飾りも行われます。こちらもあわせてぜひ。


関連リンク

祇園祭~京都の街中がミュージアムに!~

京都の街歩きコーナー「京都をぐるっと歩いてみた。」第1回「祇園祭」をテーマにぐるっと歩いてみた。

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