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明楽和記「16LB」(Gallery Ort Project)

投稿:2013年11月25日

16LB-AKIRA.jpg

―「彼は、描かない画家である(He is a painter who dosen’t paint.)
つまり、絵筆を執らないことによって「絵画」を制作する。


キュレーター・吉田モモコフ氏のことばである。
「描かない画家」とは一体どういうことなのか。
描かないことを前提とする画家は、果たして画家なのだろうか。
それを知りたいと思い、左京区岡崎に位置するGallery Ort Projectへ行ってきた。

私は映画や舞台を見に行く時、フラットな状態で鑑賞し純粋な感動を得たいと考えているため、できるだけ前情報は仕入れずに行くようにしている。
この日も同様に、ギャラリーを訪れる前に作家・明楽和記氏の個人サイトは見ずに「京都であそぼうART」でギャラリーまでのアクセス、展示概要を確認するだけに留めて出かけた。

日も暮れた18時過ぎ。
ガラス張りのGallery Ort Projectから見えるのは煌々と照らされた真っ白なギャラリー内部。そして、数人の人たち。
絵画らしきものは外から見えない。
本当にここが展示会場だろうか?と地図を確認すると、はたして合っている。
ガラス張りだから中からは私が怪訝そうに様子を伺っているのが丸見えだ。
―入るしかない。

入ったものの、壁には何も掛かっておらず何を見ていいのかわからない。
天井を見上げると、色とりどりの(形も、用途も様々な)電球がつけられている。
でも、これは絵画なのか?
てっきり絵画的な何かがあるものと想像してきた私はギャラリーに入室してからひと時、戸惑いの時間を過ごした。
スタッフの女性(モモコフ氏だった!)が、作者プロフィールや個展内容について記載されたペーパーを手渡してくれる。

―ここで彼があくまでも「画家」でる理由は、色彩の布置、それら相互の関係、あるいは一の全体への関係といったものを、まさに「画家」が筆を執る際の慎重さでもって吟味し形成するためである。

―ギャラリー(あるいはホワイト・キューブ)という潔癖な中立的空間に作品が意味として侵入し図化されるという、従来の「展示」のあり方を解体し、作品と空間との図と地の関係性を解消してしまうのだ。空間そのものが作品となり、さらにその作品/空間に鑑賞者をも取り込んでしまうのである。

電球に照らされるギャラリーの中に自分(を含めた複数の人間)が存在している、その空間全体が作品である、という感覚は理解できる。
しかし、その他のことが「なんとなく」でしかわからない。
幸いにもギャラリーを訪れた日は明楽氏も在廊しており、過去の作品ファイルを見せていただきながら今回の作品についても少しの時間だがお話を聞くことができた。

今までの作品の中には実際に紙等に絵具を塗布することによって作成された、いわゆる絵画的なものもあったが、「鑑賞者に白い卓球台で卓球を行ってもらい、カラーのピンポン玉の軌跡を体感してもらう作品」、「白い壁の前に色つきのシャボン玉を発生させ、浮遊するシャボンが破裂した時に壁に付着する色を鑑賞する作品」といった色の軌跡を鑑賞する、一般的な感覚では絵画とは言い切れないものもあった。

(目に見える光線としての)色彩が描く軌跡を含めた空間そのものが作品である。

この日、ギャラリーでなんとなく理解・想像できたことを表すならばこう言うしかないし、「なんとなく」でしかわからなかったからこそ、今後、明楽氏が作品を発表する時にはまた見に行きたいと思えた。


さて、話は明楽氏の作品とは変わるがこのGallery Ort Projectは11月いっぱいで閉廊することになったそうだ。
クロージングイベントは29日(金)と30日(土)。
30日17時からはパーティも行われるとのこと。
詳しくはこちら→ http://www.gallery-ort.info/

 



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