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特集記事

京都MUSEUM紀行。第十七回【相国寺承天閣美術館】

京都ミュージアム紀行 Vol.17 相国寺承天閣美術館

  • “禅寺の美術館”ならでは、庭へのこだわり
  • “禅”が育んだ文化芸術に触れる
  • フォトギャラリー

京都御所のすぐ北側。今出川御門の目前から続く道を進んだところに、京都を代表する禅寺のひとつ・相国寺の境内が広がっています。足利将軍家ゆかりの寺として600年以上の歴史を持つ相国寺は、京都五山の第二位に位置する格式高いお寺です。その境内の中に建つ美術館が、今回ご紹介する「相国寺承天閣美術館」です。

全国でも類のない、お寺の本格的な美術館

相国寺は、正式名称を「萬年山相国承天禅寺」といい、承天閣美術館の名前もここから取られています。創建は明徳3年(1392)、室町幕府の三代将軍・足利義満により、禅僧・夢窓疎石を開山として建てられました。臨済宗相国寺派の大本山であり、全国に多数の塔頭寺院や末寺を持ちます。実はあの鹿苑寺(金閣寺)や慈照寺(銀閣寺)も、相国寺の塔頭です。

承天閣美術館は、その相国寺の創建600年記念事業の一環として、相国寺や塔頭寺院に伝わる美術品の展示公開と保存修復、調査研究、そして禅文化の普及を目的に、昭和59年(1984)に設立されました。
収蔵されている文化財は、国宝5点、重要文化財144点を含め数百点以上にのぼります。
宝物館など所蔵品の展示施設がある寺社は多くありますが、保存・管理の問題などから主に重要文化財や国宝といった貴重な作品は、寺社ではなく美術館に寄託している(預けている)場合が多くあります。相国寺も美術館ができる前は、多くの文化財が京都国立博物館などに預けられており、所蔵品が一般の眼に触れる機会はほとんどありませんでした。
しかし、承天閣美術館の設立にあたっては、「単に展示するだけの施設ではなく、多くの方に見てもらうための正式な“美術館”を作りたい」というコンセプトがあったそうです。鉄筋コンクリート製・大規模な美術品専用収蔵庫を備えた建物を準備し、開館時には国立博物館に寄託していた美術品を全て手元に戻し、以来自らの手で管理を行っています。
平成19年(2007)にはリニューアルが行われ、震度7にも耐えられる最新式の免震構造も導入されました。寺院でここまでの規模の美術館があるところは、全国でも他にありません。
来館者は学生さんからお年寄りまで年齢層は幅広く、国内はもちろん海外からも、毎年多くの観光客が訪れています。

禅寺の美術館ならでは、「庭」へのこだわり

承天閣美術館の建物には、他の美術館施設では見られない特徴が多数あります。寺院らしい伝統的建築を模した外観ももちろんですが、特にこだわりを感じられるのが「庭」です。

館内には、展示室以外の各所に大きなガラス窓が設けられ、様々な庭を眺めることができるようになっており、場所によって異なる景色を楽しめます。
通常、美術館や博物館は展示品を日光などで傷めないために窓はむしろ少なめにするなど、外部と遮断したような状態になっている場合が多くあります。しかし、承天閣美術館はあえて外の景色との繋がりを感じさせる構造になっています。

「禅寺、そして禅文化にとって「庭」はとても大事な存在です。この美術館も禅寺の一部ですから、その雰囲気を生かすためにも、庭も重要な見せどころなんですよ」
とお話くださったのは、当日取材させて頂いた事務局長の鈴木景雲さんです。


中央廻廊の壁側はギャラリーとして活用されています。現代作家の作品や、展覧会の関連資料、お寺の歴史などの展示が行われます。

日本で特に庭園が発達したのは鎌倉から室町時代にかけてとされますが、ちょうど禅宗が日本へ伝わった頃と重なります。禅宗では自然界の姿は仏法の本質、悟りに通じると考えられていました。そのため、自然の姿を表す庭園は、禅の教えの体現、禅とはなにかを形にしたものであり、作品であると同時に教えを伝える場・修行の場として寺院に欠かせないものとされました。禅寺の庭はただ美しいだけではない、仏教美術の作品なのです。

「この美術館の目的のひとつは禅文化の普及です。日本の文化と深い繋がりをもつ禅の教えを多くの人に知っていただくこと。その上で、禅文化と結びついて発展した庭園は切っても切れない関係です。ですので、美術館の建物は、展示品だけでなく庭園もじっくりとご覧頂けるようなつくりになっています」と鈴木さんは仰います。

庭園をじっくり眺められる一番のスポットは、二つの展示室を繋ぐ中央回廊です。外の庭園に面した側は全てガラス張りの大窓。休憩スペースも兼ねており、ベンチに座ってじっくりと庭を眺めることが出来るようになっています。ここは庭の景色を来館された方に見てもらうため、あえて展示室間に距離を設け、意図してこのような設計にされたのだそうです。庭には多くの木々が植えられており、まるで森の中にいるかのような安らぎを感じさせます。

「京都では町の中心部にあたるような場所で、このような静かな佇まいがある。街中にいるとは思えないような空間を、ぜひ味わって頂きたいですね」と鈴木さん。美術館を訪れた際は、ぜひ「庭」にも注目したいところです。

承天閣美術館の「庭」ピックアップ

普陀落山の庭

美術館の入口左手に広がる枯山水の庭。手前に白砂で海を表し、奥には小山、岩が配された構図は、伝統的な禅宗枯山水庭園の形です。「普陀落山」とは、南の海にあるという山で、観音菩薩が住む浄土とされていました。即ち、この庭は観音菩薩の極楽浄土の姿を表しているのです。庭を囲むように配された蘇鉄の木が、南国風の雰囲気を感じさせてくれます。

中庭

美術館の建物の合間にも、小さな中庭が設けられています。こちらは白砂をコンクリート状に固めた上に、波文様や岩、石のオブジェ、灯篭などを配しており、水の上に小さな島が幾つも浮かぶ風景を表しています。中には地面に古い瓦(寺で以前使われていたもの)を埋め込んで波を表した箇所もあります。お寺の雰囲気を意識しつつもとてもモダンな、現代的枯山水庭園です。

十牛の庭

中央回廊に面した、美術館で一番大きな庭です。地面には苔が敷き詰められ、各所に岩が配されています。奥行きが広い庭ではありませんが、開放感すら感じさせる意匠は流石です。草木が数多く植えられており、美術館にいることを一瞬忘れてしまいそうな見事な景色が広がります。秋には見事な紅葉も楽しめるなど、季節によって違った表情を味わえます。
庭の名にもなっている「十牛」とは、禅宗において人が悟りを得るまでのプロセスを表した絵「十牛図」からきたもの。この庭に置かれている岩は、その絵に登場する牛と人の姿を表しているそうです。

コラム「十牛図」とは

別名「十牛禅図」ともいい、人が禅の悟りへ至るまでの道筋を牛を主題とした絵で表したものです。ここで登場する牛は人の「心」の象徴、本来生まれながらにもっている「仏性」や「悟り」そのものとして、途中登場する童子は修行中の人と見立てられています。承天閣美術館にも、相国寺で修行した室町時代の画僧・天章周文が描いたという「十牛図」が所蔵されております。 「十牛図」は以下の十の場面・段階に分かれています。「十牛」の庭も各場面を岩や木などの配置で表しているそうなので、庭を見る際に参考にしてみてください。

  1. 「尋牛」:牛(本来の仏性)を見失った童子(修行者)は牛を探しに出かける。
  2. 「見跡」:童子は牛の足跡(仏性への手がかり)を発見する。テキストである経典が読めるようになったくらい。
  3. 「見牛」:童子は牛を見つけるが後姿のみで、全体を見たわけではない。仏法の一部が少し分かるようになったくらい。
  4. 「得牛」:暴れる牛に童子は手綱をかけて捕まえようとしている。仏性を自らのものにしようと苦心している状態。
  5. 「牧牛」:牛をやっと馴らしたところ。ここで初めて牛の顔、即ち仏法の姿が見える。しかし少し油断すればいつまた牛を見失うかわからない。
  6. 「騎牛帰家」:童子は牛にまたがり、笛を吹きながら家路につく。人牛一体となった、つまり仏法の真理を自分のものにした(悟った)状態。
  7. 「忘牛存人」:帰宅した童子は手に入れた牛のことを忘れてしまう。牛を得た=「悟った」ことそのものを忘れた境地。
  8. 「人牛倶忘」:牛どころか人すら忘れてしまう。悟りも迷いも消えた、まさに「無」の世界。
  9. 「返本還源」:水が流れ花が咲くいつもの風景。苦労の末たどり着いたところは、当たり前の世界だった。
  10. 「人鄽水腫(にってんすいしゅ)」:「鄽」とは町にある店のこと。禅宗を含め大乗仏教では悟りを開いた人はそれを自分だけのものにせず、まだそうでない人・民衆に仏法を教え、救済せねばならないとされた。童子は町で布袋に出会い、言葉を交わす。

相国寺承天閣美術館

所在地

〒602-0898
京都市上京区今出川通烏丸東入ル

開館時間

10:00~17:00(入館は16:30まで)

休館日

年末年始、展示替期間(展覧会の会期中は無休)

お問い合わせ

電話番号:075-241-0423
FAX:075-212-3585

公式サイト

http://www.shokoku-ji.jp/

■料金

一般 : 800円(団体700円)
65歳以上・大学生 : 600円
中・高生 : 300円
小学生 : 200円

■交通のご案内

【京都市営地下鉄】
 * 烏丸線「今出川」駅下車、徒歩10分
【京都市バス】
 * 59、201、203、102系統にて「同志社前」下車、徒歩10分
※ 専用駐車場:有り(無料/自家用車10台分)




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