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【レポ】新春特集展示「卯づくし-干支を愛でる-」+名品ギャラリー(京都国立博物館)

2023/01/05

美術館・博物館の新年は意外と早いところも多いのをご存じでしょうか。そのひとつ・京都国立博物館では1月2日からオープンし新しい展覧会が開催されます。新年に相応しく、お正月を意識した内容の親しみやすい展示になっていますよ。今回は一足先に内覧会で取材させて頂いた展示の様子をご紹介します!

「かわいくない」から「かわいい」まで。うさぎのイメージ今昔を探る。

京都国立博物館の恒例となっている、新春特集展示「干支を愛でる」。
毎回その年の干支にちなみ、干支の動物をモチーフやテーマにした作品が、所蔵品を中心にピックアップして展示されます。
2023年の干支は卯、兎(うさぎ)です。今回は「卯づくし」と題し、うさぎに纏わる日本と中国の美術品24点が並びます。

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うさぎと聞くとまずは「かわいい」イメージが先行しますが、今回の展示作品のうさぎたちは正直かわいらしくないものもあるのがポイント。展示室の真ん中に鎮座している仁阿弥道八作の炉蓋は、等身大の二羽のうさぎが鎮座していますが、その目つきは何だか鋭くリアルです。(学校の飼育小屋で大きく育ったうさぎはこんな顔をしていたような...)

この「かわいい」だけではない、昔の人たちのうさぎのイメージをたどるのが、「卯づくし」展のテーマです。

展示品を見ていると、うさぎとよく一緒に表現されている共通したモチーフに気づきます。
例えば「月」。月の模様がうさぎに見えることから、「月にはうさぎが住んでいる」という伝承は古くから知られており、その起源は古代インドにさかのぼるそう。仏教説話にも月とうさぎのお話が見られます。

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こちらは中国の古い鏡。上の小さな〇の中に、月でうさぎが杵をついている姿が表されています。
中国では月に住んでいるうさぎは臼と杵で不老不死の薬を作っているとされていたそう。それが日本に伝わったときに「薬」が「餅」に置き換えられたようです。
一緒に刻まれているのは「桂の木」。日本でいうモクセイ(金木犀・銀木犀)です。(中国では「金桂」「銀桂」と呼びます)

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真ん中の掛軸《秋桂月兎図》は中国の画家・陳星の作品(京都国立博物館蔵)。
中国の伝説では「月には桂(=モクセイ)が生えている」とされていたため、同じく月に住むといわれたうさぎと一緒に描かれています。(白い花が咲いているので、こちらはギンモクセイでしょうか)

月とうさぎの組合せはやがて月が美しい秋(中秋の名月)のイメージが重なり、秋の草花があわせて描かれるようになります。連想ゲームの感覚で様々な表現が生まれていったそうです。

udsukushi2023 (4).jpgこちらの《月兎蒔絵象嵌盆 笠翁細工》は、お盆の丸い形を満月に見立て、中にうさぎと秋の草花をあらわしています。月そのものを直接描くのではなく、作品全体で「月」を表現するひとひねりがユニークです。

こんな風にモチーフを手掛かりに作品を見ていくと、いろいろな発見ができより楽しく作品を味わうことができました。

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他にも「かわいい」うさぎの作品もあるので、お見逃しなく!時代を経ると、かわいいイメージの方が強くなっているようです。

今回は小さいお子さんでも楽しめるよう、作品の解説パネルはやさしい文章で書かれています。また、展示室の入口にはお子さん向けのわかりやすい解説シート「博物館Dictionary」、ゲーム感覚で展示が楽しめるワークシートも用意されています。モチーフも身近なものなので親しみやすく、まさに「初めての展覧会」にもぴったりの内容になっていますよ。

「卯づくし」展は1月29日までの開催です。

新春特集展示「卯づくし─干支を愛でる─」

ユニークなテーマやセレクトが光る!
収蔵品展「名品ギャラリー(平常展示)」のススメ。

なお、同時期には他の展示室でも「名品ギャラリー(平常展示)」として京都国立博物館の収蔵品展が開催されています。

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3階の陶磁器コーナーでは馬やラクダにカラフルな唐三彩作品がずらり!
胡人(古代中国の北・西方に住んでいた異民族のこと。後にモンゴルや中央アジア圏の遊牧民、中東系の人たちも含まれた)たちがモデルの作品で、衣装や装飾品の表現に現地の文化が感じられます。

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考古コーナーでは特別公開「熊本・宮崎の古墳文化―石人と貝輪―」として、九州の古墳で見つかる石造彫刻「石人」や、南国の貝を使ったアクセサリー(貝輪)など、普段京博では見られない九州の考古出土品が展示されています。黄色の解説パネルが目印ですよ。

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2階の絵画コーナーでは弘法大師・空海のお話を描いた《高祖大師秘密縁起》(安楽寿院蔵)を展示。ちょっとファンタジーな描写があったり、動物が沢山登場したり、お子さんが見ても楽しめる内容です。

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また、洛中洛外図屏風ばかりを集めた展示室もあります!一度に洛中洛外図をこんなにみられる機会はないので、描かれているものや場所を見比べてみると楽しそうです。こんなちょっと豪華なテーマ展示も名品ギャラリーの見どころ。

卯づくし展の行われている特別展示室と同じ1階では、書作品や彫刻、着物、金工、漆芸の展示も。着物・金工・漆芸は、時代や分野は違えどファッションやデザインに関係する内容が共通しているので、ちょっとした繋がりを感じられます。

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金工は「刀を飾るⅡ」と題し、刀を装飾する拵(こしらえ)に注目。シックに全面黒で統一してみたり、花柄をびっしりと飾ったり、昔の人のセンスが味わえます。
上の写真、《虫尽蒔絵藤巻鞘刀拵》(京都国立博物館蔵)は、セミやカブトムシ、ちょうちょなどをあしらった虫篭のようなデザインで個性的!

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一振だけ、刀《太刀 銘 波平行安(号笹貫)》(京都国立博物館)も展示されています。展示室の中心に刀、その手前にその刀用の拵《重文 黒漆太刀拵》の配置なので、拵が刀をどう飾るのか、イメージしやすいかもしれません。

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隣の漆芸コーナーは化粧道具特集。
神様に捧げられたものや大名や公家の女性が使った豪華なものまで、多彩な道具が並びます。
中には写真のような、刀の鍔や透かし彫のデザインを取り入れた、ちょっと変わった形の化粧道具セットも。昔の人たちの遊び心が伝わってきます。

名品ギャラリーは「卯づくし展」の料金でまとめて見ることができるので、ぜひ併せて足を運びたいところです。

※名品ギャラリーは3月5日までの開催(一部展示替有り)。卯づくし展とは異なります。
※名品ギャラリーは、展示室によって期日が異なる場合があります。詳細は京都国立博物館のホームページ等をご確認ください。


つい大規模な特別展ばかりに目を向けてしまいがちですが、ユニークなテーマや作品セレクトが楽しめる収蔵品展は各担当学芸員さんたちのこだわりや工夫が光る面白さがあります。

お正月らしいものを眺めに行くもよし。お子さんの展覧会デビューにもよし。
この機会に、新年の「美術はじめ」に出かけてみてはいかがでしょうか?

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