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【レポ】日本画革命 ~魁夷・又造ら近代日本画の旗手(福田美術館)

2023/02/07

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京都の美術館の中でも特に近世・近代の日本画コレクションが充実している福田美術館。今回、そこに広島出身の企業家・美術コレクターの山本憲治氏による近代日本画コレクションが加わりました。
この展覧会「日本画革命」はその初お披露目展となります。

展示構成は、コレクションの中から近代から現代の代表的な日本画家たちがどのような新しい表現を生み出していったかを通覧できるようになっています。
また、展示品はすべて今回が福田美術館では初公開。これまでに来たことがある方も初めて見る作品ばかりの、とても新鮮に楽しめる内容です。

その見どころと展示の様子をご紹介します!


※この記事は2023/1/27の取材時の様子を基にしています。観覧時期によっては内容が異なる場合がありますので、ご注意ください。
※写真は全て許可を得て撮影したものです。(一部作品はメディア掲載に規制があるため掲載を見送っております)

第1室:日本画革命の始まり

空気を描く"朦朧体"の誕生

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冒頭は近代日本画の巨頭、横山大観・菱田春草らの作品から。
彼らは、師・岡倉天心から問われた「日本画で空気感を表現できないか」を達成するため「朦朧体」という画法を生み出しました。
これは、輪郭線を敢えて省き、"ぼかし"と"絵具の濃淡"で表現するもの。

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見ているだけで、霧のしっとりとした肌触りや、滝の飛沫から生まれる湿気といった、本来は見えない空気感が伝わってくるようです。それまでの日本画における当たり前の存在であった輪郭線を、敢えて無くしてしまう、まさに大革命。当時は批判も多かったといいますが、日本画の新境地を一気に開くものでした。

額装が生んだ"クローズアップ"

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それに続く世代が、「院展の三羽烏」と呼ばれた安田靫彦、小林古径、前田青邨らです。大観・春草の用いた朦朧体とは対象的に、彼らは輪郭線を活かした線描など伝統的な日本画表現やモチーフを多く用いましたが、彼らの"革命"は構図の取り方にあるそうです。

画面を最初から横向きにしたり、富士山の山頂だけ、お花の上だけといったようにモチーフの一部をぐっとクローズアップしたり。

彼らの時代には、それまでの掛軸や屏風など表具による飾り方から、公募展でよく用いられる額装展示が定着してきていました。そのため、最初から額装された際に映えることを意識した、それまでにない大胆な画面構図が増えて行ったのだそうです。
飾り方が絵の表現に影響したというところがユニークです。

西でも起きた!日本画革命

ここまで登場したのは東京を拠点に活動した画家たち。
一方で、同時期の京都を中心とした関西圏の画家たちの中でも「革命」が起こっていました。

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例えば、動物画の名手として知られる山口華楊。円山・四条派に学び、その写実を基礎とした彼ですが、構図や色の塗り方は近代的なものになっています。展示されている《待春》は、ふわふわの毛並みのかわいらしいうさぎが雪の中に隠れているという構図。敢えて上から穴の中のうさぎをのぞき込むようなカメラワークと、白い絵具を塗り重ねることで雪の厚みや感触を表した描き方が、彼の工夫を感じさせます。

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他にも、日本画と西洋画の表現を合体させた作品、日本画の絵具で油絵のようなタッチを再現した作品など、ユニークな作品も並んでいます。

また、逆に敢えて保守的な、日本画の伝統技法を研究しようという動きも起こっていました。これも、「新しいものを生み出そう」という革命の中で生まれた、「古いものの良さをより深めて行こう」という意識の表れだったのでしょう。

第2室:東山魁夷と加山又造~戦後の"新しい日本画"

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第2展示室は、東山魁夷と加山又造、戦後の日本画を代表する作家2人をピックアップした特集展示となっています。

二人の作品の特徴は、その色鮮やかさ!
日本画の画材や筆致のテイストを活かしながら、色彩のコントラストを意識した表現が目を引きます。これは戦後、日本画を「弱弱しい」と非難する空気への反発から、日本画の顔料を用いながらも、洋画のようなはっきりとした色彩表現を試みる傾向があったためだとか。

「どこでもある風景」を美しく

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東山魁夷の作品で注目の一枚が右端の《夕月》。
戦争で家族を亡くし喪失感の中にあった魁夷が、戦後間もない頃に描いた作品だそう。同じ場所をモチーフにした作品が出世作として知られていますが、それよりも前に描かれたという記念碑的な作品です。
この作品は魁夷の没後に前所有者の山本さんが遺族から持っていてほしいと望まれ、最初に購入したものだったそうです。

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魁夷作品は、特に尖ったところのないどこにでもありそうな風景を徹底的に美しく描こうとした点が特徴です。緑の森と湖、紅葉と川、モチーフ自体はシンプルながら、色彩によって見る人の印象に残る作品になっています。

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また、魁夷は西洋をよく旅し、そこで見た風景も好んでモチーフにしています。西洋の風景を描いた日本画はそれまでにないもので、これも魁夷が日本画に起こした「革命」といえます。レンガの質感を日本画の顔料の塗り重ねで表し、門の飾り枠をクローズアップした大胆な構図が面白いですね。
手前にシルエットのように別のモチーフを置く構図取りは、ちょっと浮世絵の影響も感じました。

「伝統」も「現代」もある、"新しい日本画"

一方、加山又造は東山魁夷の20年ほど後に生まれた、次世代の画家にあたります。

色のコントラストは魁夷以上に強く、モチーフの表現もより抽象的なテイストを取り入れた、華麗で斬新な表現が特徴です。
その一方で琳派など伝統的な表現にも強く惹かれ、昔の作品の要素を自らに取り込み昇華した作品も手がけました。特に琳派がお気に入りで、尾形光琳の紅白梅図屏風を題材にしたものが展示でも見られます。

加山又造の日本画革命は「現代」と「伝統」どちらかをとるのではなく、「融合」だったのかもしれません。

第3室:日本画家が描く、"故郷の風景"

第3室のパノラマギャラリーでは、作品の寄贈者・山本憲治さんの故郷である中国地方の風景を描いた作品が展示されています。コレクターの見ていた風景を絵を通じて体験してほしい、という企画意図もあり、展示作品は小野竹喬と奥田元宋、共に中国地方出身の画家がピックアップされています。

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小野竹喬は繊細で写実的な線描と、パステル画のような柔らかな色彩が特徴です。よく見ると絵具が少しキラキラと輝いて見えます。これはガラス成分の入った当時新開発の絵具を使っていたためだそう。竹喬は京都で絵を学び、伝統的な写生技法に南画や西洋画の要素も取り込んで画風を確立した人。新しいものを取り入れようとする姿勢は「革命的」です。今回は若い頃の作品と年を経てからの作品が一緒に並んでいるので、変化も見比べて楽しめます。

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一方の奥田元宋は、展示作品も全て紅葉や夕暮といった"赤い"景色を描いたものです。
東山魁夷と同じくどこにでもありそうな風景をモチーフにしていますが、色彩のコントラストを活かした魁夷に対し、元宋はむしろ大観や春草に近い、空気感を描き出す朦朧体を用いています。柔らかな空気の中から、赤色がぶわりと浮かび上がってくるようです。

展覧会の最初、日本画革命の"はじまり"を担った大観や春草の朦朧体に、最後にかえってきたような感覚を覚えました。


今回の展覧会は額装作品が多いことから、見やすさを高めるため額のガラスを外した状態で展示したものも多いそうです。作品の色彩をじっくりと楽しめるように考慮されています。

また、一部を除いてほとんどの作品は写真撮影OKとなっています。
比較的新しい作品は著作権が切れていないものが多いので、権利関係で撮影許可が難しい場合が多いのですが、今回は作家のご遺族の了解も多く得られたのだそうです。個人で楽しむ(個人SNSにアップする)程度なら大丈夫だそうなので、お気に入りの作品を見つけたらシェアしてみてはいかがでしょうか?

日本画革命 ~魁夷・又造ら近代日本画の旗手(福田美術館|~2023/4/9)

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