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【レポ】京都市美術館開館90周年記念展「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)

2024/02/22

現代美術家・村上隆が京都で提示する、1000年続く日本美術への"私淑"のカタチ。

mononoke-kyoto_repo(1).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)プレス発表会のフォトセッション風景。
村上隆さんと本展イメージキャラクター「もののけフラワー」と五山送り火をモデルにした「五山くん」

京都市京セラ美術館で2024/2/4~9/1の日程で開催される、「村上隆 もののけ 京都」。
今最も世界的に知られている日本の現代美術家ともいえる、村上隆さんによる大規模個展です。
日本では2001年、2015年に続き8年ぶり3回目。今までは東京での開催だったため、西日本での開催は今回の京都展が初の機会です。(村上さんにとって日本の公立美術館を会場に展示を行うのは珍しいことで、これが最後ではないか、との噂も...)

村上隆さんといえば、カラフルでポップな、アニメやマンガ調のイラストを積極的に取り入れた作品をイメージする方が多いはず。これは彼が提唱した「スーパーフラット」という概念を形にしたものです。
「スーパーフラット」とは、浮世絵や江戸時代以前からの日本の伝統的な絵画表現と、現代のアニメやマンガといったポップカルチャー(大衆的な表現)は、どちらも「余白が多く、奥行のない平面的な視覚表現」に重きを置いている点でつながっている・同質のものである、という考え。同時に、戦後日本の無階級社会に基づく均質的なポップカルチャー・消費文化のもつ空虚感を孕んだ在り方も、表現様式の中に含まれています。
「スーパーフラット」のコンセプトにより、欧米主体だった現代美術の世界に日本美術に根差した新しい概念を投じた村上さんは、一躍世界的現代美術家として認識されるようになりました。

昔からの日本の文化や芸術の在り方を創作の根底に置く村上さん。そんな彼が、多くの日本文化を生み出した場所である「京都」に向き合って取り組んだ展覧会が、「村上隆 もののけ 京都」です。展示作品の総数は190点以上、その9割が新作という大ボリュームの展覧会、一体どのような内容になっているのでしょうか?

※この記事は2024年2月時の取材内容を基にしています。時期により展示内容が異なる場合がございますので、予めご了承ください。

岩佐又兵衛から村上隆へ。400年の時を越えた《洛中洛外図》

mononoke-kyoto_repo(2).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》(2023-24、部分)
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

第1章は「もののけ洛中洛外図」。展示室に入るとすぐに、《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》が視界いっぱいに飛び込んできます!
この作品は、本展の開催にあたり、キュレーターを務めた高橋信也さんら京都市京セラ美術館側からのリクエストを受けて描き下ろされたもの。当日案内してくださった高橋さんも「こんなに本格的に洛中洛外図を描いた現代の画家は村上さんの他にいないのでは」と仰るほどの大作です。

mononoke-kyoto_repo(3).jpg《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》(2023-24、部分)
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
通りの賑わいを見送る「お花」の下には、よく見ると猿がいます!細かいところにも遊び心が。

「洛中洛外図」は、京都の街の景観や風俗を上から見下ろす視点(俯瞰)で描いたもので、室町時代末から江戸時代にかけて様々な絵師によって制作されました。
この作品は、岩佐又兵衛が江戸初期に描いたとされる舟木本(国宝/東京国立博物館蔵)をベースにしています。もとの舟木本と比較すると3~4倍ほどに拡大されていて、その分描かれた人物の表情など細部までじっくり楽しめる仕様。ついつい足を止めて眺めてしまいます。随所に村上さんのキャラクターも登場していますよ。

また、金箔貼りのすやり霞(雲)には、よく見ると無数のドクロが!死やあの世など目には見えぬ「もののけ」の存在を予感させるモチーフが、賑やかな京都の街と溶け合うように同居しています。展覧会タイトルの「もののけ 京都」の世界観を端的に表した作品といえるかもしれません。

mononoke-kyoto_repo(5).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
《岩佐又兵衛版洛中洛外図が完成していないことへの言いわけをする村上隆》(2023-24)
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
作者による作品解説パネル...ですが、これもキャンバスに絵具で描かれた作品!

村上さんが舟木本をベースに選んだ理由は、村上さんが強く影響を受け、師匠と仰ぐ美術史家・辻惟雄さんの名著『奇想の系譜』の中で岩佐又兵衛が取り上げられていたためだそう。その他、制作経緯等の詳細も、すぐ近くにある「言いわけ」のなかで村上さん自身の言葉で紹介されています。このような作家自身の言葉も作品として展示されている点も、本展の特徴です。作家側が自らの言葉でアプローチしてくれる構成は、作品との距離がより縮まる気がします。

mononoke-kyoto_repo(4).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
手前:《京都 光琳 もののけフラワー》(2023-24)
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
尾形光琳の象徴的モチーフの一つ「光琳菊」を村上隆を象徴する「お花」に!
葉にも琳派の特徴である垂らし込みの表現が再現されていたり、
落款も光琳の「法橋」が入っていたりと、光琳リスペクトに溢れた作品です。
こちらもよく見ると背景にドクロが隠れています。

向かいの壁には、琳派の尾形光琳をオマージュした作品が並びます。また、床にも光琳の象徴的モチーフ・光琳波が広がり、作品の中に自分が取り込まれていくような感覚が味わえます。

四神相応と「メメント・モリ(死を想え)」の地・京都

mononoke-kyoto_repo(6).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

第二章「四神と六角螺旋堂」では、暗闇の空間に、東の青龍・西の白虎・南の朱雀・北の玄武と、四方を守護する四神を描いた巨大な絵が浮かび上がります。元々京都は平安京として造られた際、四神が守る「四神相応の地」として設計されていたという歴史から発想を得たものです。部屋の中心に置かれた柱のようなオブジェは街の中心に位置し"京都のへそ"とも呼ばれる六角堂をイメージした《六角螺旋堂》。展示室全体で平安京=京都を表したインスタレーションになっています。

《六角螺旋堂》には金色のドクロ《竜頭 Gold》がまるで木につかまる蝉のように展示されています。また、暗くてわかりにくいですが、実は床や周囲を覆うカーテンにも髑髏が描かれているのだとか。四神の絵にも、妖怪の様なキャラクターの姿が見られます。

mononoke-kyoto_repo(7).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.


「京都は四神によって平安を祈られた地でありながら、度々戦や伝染病、災害に見舞われるなど、割と「死」が身近にある場所でもありました。それをドクロが予感させています」と高橋さん。日々の生活のすぐそばに、死や病が身近にある。これはコロナ禍や地震などの災害が起きている現代も同じこと。まさに「メメント・モリ(死を想え)」の世界です。
同時に、村上さんの描くドクロはどこかファンキーでチャーミングなデザインで、明るさすら感じさせます。死や畏れをどこかおかしみのある形――妖怪などの「もののけ」として表現することで乗り越えようとしてきた、日本文化のそれとつながっているようです。

「スーパーフラット」とは?村上隆の世界観を知る

第三章は「DOB往還記」。DOBとは、村上さんが1990年代に生み出した代表的キャラクター「DOB-kun」のこと。この章は、村上さんの「スーパーフラット」の概念やそれに基づく創作活動を、様々なキャラクター達をモチーフとした作品を通じて紹介するような内容。平面作品のほか、フィギュアや看板などの立体作品、キャラクター紹介コーナーの様なパネル展示、デザイン画などの関連資料も見ることができます。

mononoke-kyoto_repo(8).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
《772772》(2015)
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

《772772》は、村上さんが「スーパーフラット」への思索を凝縮したような代表作「727」シリーズのひとつです。「727」という3つの数字は東海道新幹線に乗る人なら一度は目にしたことがあるだろう、車窓から見える看板広告の数字からとったもの。村上さんはこれを、現代美術のメイン市場だったアメリカで活動するにあたり、日本人作家である自分の主軸となる「スーパーフラット」に至る思いと結び付けられたそう。

mononoke-kyoto_repo(9).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

また、村上さんは「日本独自の美術の在り方」を表現だけでなく制作スタイルの上でも模索し、手本としたのが狩野派でした。城や寺院などの大規模建築の装飾を手掛けていた狩野派は、師匠と弟子たちが工房単位、いわば"チーム制"で作品の制作を行っていました。村上さんがそのスタイルを受け継ぐ形で自身の美術制作工房「カイカイキキ」を立ち上げます。展示室にはその誕生の経緯や、マスコットキャラクターについて解説した作品もあり、村上さんのこれまでの活動に触れられるようになっています。

村上隆VS琳派・奇想の絵師たち

第四章は「風神雷神ワンダーランド」。こちらでは、様々な江戸時代の名絵師たちの作品と村上さんが"対決"。日本美術史上に残る傑作をリスペクトし、自らのスタイルで描き直した作品を紹介しています。

mononoke-kyoto_repo(10).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
左:《風神図》(2023-24)、右:《雷神図》(2023-24)
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

俵屋宗達にはじまり、尾形光琳、そして酒井抱一と、約100年おきに琳派の絵師に描き継がれた作品《風神雷神図屏風》をもとに村上さんが描いたのが《風神図》と《雷神図》です。筋骨隆々ではなく、力の抜けた飄々としたキャラクターとして描かれた村上さんの風神と雷神の姿は、見た目に反して実は強い、というギャップで現代らしさを感じさせます。
高橋さんはこの作品を「明治を飛び越えて200年越しに生まれた新たな琳派」と仰っていました。琳派の特徴は、直接の師弟関係がなくても過去の絵師を模範として学ぶことで表現様式を受け継ぐ「私淑」にあるとされますが、「風神雷神」はその象徴的な画題。村上さんの《風神図》《雷神図》は、現代における琳派への「私淑」を表現した作品といえます。

mononoke-kyoto_repo(11).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
左:雲竜赤変図《辻惟雄先生に「あなた、たまには自分で描いたらどうなの?」と嫌味を言われて腹が立って自分で描いたバージョン》》(2010)
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
右奥は《見返り、来迎図》(2016)。京都・永観堂の「見返り阿弥陀」と京都・知恩院蔵の《阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)》をミックスしたもの。

《雲竜赤変図《辻惟雄先生に「あなた、たまには自分で描いたらどうなの?」と嫌味を言われて腹が立って自分で描いたバージョン》》は、タイトルの通り村上さんが師と仰ぐ辻惟雄さんに発破をかけられて生まれた作品。エキセントリックな表現で知られる江戸時代の画家・曾我蕭白の《雲竜図》(ボストン美術館蔵)からインスピレーションを受け、自ら筆をとって描いた、幅18mにも及ぶ大作です。
以前ボストン美術館でもとになった蕭白の《雲竜図》と並べて展示されたことはありましたが、日本での公開はこれが初の機会。一気呵成に描かれた筆遣い、叩きつけられたような両端の墨が流れ落ちる表現は蕭白を彷彿とさせます。ギョロリとした龍の目は鑑賞者を見定めているかのよう。ぜひ間近で迫力を体験してほしい作品です。

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「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
《金色の空の夏のお花畑》(2023-24)
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

メインビジュアルにも使われている《金色の空の夏のお花畑》は、本展のための描きおろし。夏の空、といえば青空ですが、それを敢えて金箔張りのフラットな背景で表現。その上に同じパターンの花が重なり合うように並ぶ構図は、尾形光琳の《燕子花図屏風》などを思わせます。よく見ると、「お花」たちは一点たりとも同じ色の組合せなく描き分けられてる点もポイント。重なる花と花も、色が被らないようにすべて調整して描かれています。

村上隆の「いま」

続く第五章は「もののけ遊戯譚」と題し、主に近年村上さんが手掛けている最新プロジェクトに関する作品を展示。いわば村上隆の「いま」を紹介する章となっています。

村上さんは近年NFT(非代替性トークン)アートに力を入れられています。デジタルデータの作品に、偽造できない鑑定書や所有証明書となるNFTを紐づけることで、"作家のオリジナルを特定の所有者が保有している"という、アナログの作品と同じような価値を付与するというものです。その流れで最近村上さんが取り組んでいるのが「トレーディングカード」。気軽に手に取れるものながら、種類によって出現率や印刷方法が異なるのでコレクター心をくすぐり、付加価値が付いていくアイテムです。NFTアートではドット絵だったものを新たにイラストとして描き起こしたそうで、デジタルからアナログへの媒体の移動も作品中に取り込まれているようです。

mononoke-kyoto_repo(13).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
《Murakami. Flowers Collectible Trading Card 2023》(2023〜24)
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

《Murakami. Flowers Collectible Trading Card 2023》(2023〜24)はトレーディングカード用の作品を正方形のキャンバスに描いたもの。絵柄は全108種で、除夜の鐘が払う煩悩の数と結び付けられています。
一見CGイラストのように見えますが、すべて手作業で描かれているそう!展示室内の他の平面作品も同じ方法がとられているそうです(キャンバスの横から見ると絵具の圧塗り具合がわかります)高橋さんいわく「まさに超絶技巧」。ここもデジタルとアナログ、現実と仮想の"融合"を感じさせます。

本展において村上さんは、このトレーディングカードの限定バージョンをふるさと納税の返礼品にすることで展覧会の予算の一部を集めることを試み、結果その寄付金により京都市内に在住・通学する学生の本展入場が無料となりました。
これは日本で現在課題となっている文化や芸術に関して行政からの予算や支援の手が不足していることへの問題提起と解決法の提示。プレス発表時のあいさつの中でも村上さんは、かねてから文化芸術のための特別税制を作る必要があると考えられていたこと、それをふるさと納税の「納税者が納税先や使い道を選ぶことができる」点を利用し、今回の展覧会をひとつの事例として示された旨を語られていました。
これからの展覧会、アートの世界はどうあるべきか、どう支えていく必要があるのか。それを考えるきっかけを、今も文化を大きな収入源としている京都で行われたことの意味を改めて感じます。

村上版「古都歳時記」

しめくくりとなる第六章は「五山くんと古都歳時記」。会場である京都の文化をテーマにした作品が並びます。この展示室は豊臣秀吉の「黄金の茶室」さながらに、壁面が金箔貼りになっている点が特徴です。金箔の背景の上に展示された各作品は、まるで寺社で見る大きな障壁画のよう。

mononoke-kyoto_repo (16).jpg《2020 ⼗三代⽬市川團⼗郎⽩猿 襲名⼗⼋番》(2020)
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

2023年の年末、京都・南座に掲げられた十三代目市川團十郎襲名祝い緞帳の原画《2020 ⼗三代⽬市川團⼗郎⽩猿 襲名⼗⼋番》(2020)もここで見ることができます。シルクスクリーンで擦られたテクスチャの上にこちらも一筆一筆手描きされた、大変手の込んだ作品です。特定の役者が演じた歌舞伎演目の数々を一面に収めた構図は、江戸時代の浮世絵の「続絵」(複数枚を繋げて一枚の絵が完成する構成の絵)を彷彿とさせます。

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《五山送り火》(2023-24)
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

《五山送り火》は、大文字から妙法、舟形、左大文字、鳥居形と山の並びが現実そのまま再現されています。真ん中の文様は太陽と月を表す紋でしょうか。ちょうど京都の街のい真ん中から天を見上げているような、山に囲まれているような、京都の土地の構図が円形のキャンバスにギュッと凝縮されているかのような作品です。

mononoke-kyoto_repo (15).jpg「村上隆 もののけ 京都」(京都市京セラ美術館)展示風景より
© 2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

展示の最後には、本展のイメージキャラクター「もののけフラワー」が登場し、村上さんからのメッセージや展覧会のイメージソング「KKもののけ京都」の歌詞とともに、鑑賞者を見送ってくれます。歌詞の中には「琳派」「平安から江戸、そして今1000年」とあります。過去から現代へ、1000年の文化芸術都市として在ってきた京都の「今」この展覧会が、村上隆という作家が在るのだ、という立ち位置を改めて示しているかのようでした。


恥ずかしながら、筆者は村上隆という作家の存在は知っていても、これまで積極的に触れる機会はありませんでした。この展覧会を通して彼の作品や言葉に触れると、「スーパーフラット」の概念も含め、村上さんは制作工程や精神性を含め、日本美術の在り方そのもの、近世以前から培われてきたさまざまな文化を、時代・時間を超えたかたちで継承しようとされている、日本の文化芸術への壮大な「私淑」をされているように感じました。
企画担当の高橋さんは「将来、今回の展示作品は国宝になっていてもおかしくないかも」と仰っていましたが、確かに未来の"国宝展"をやるなら、琳派や狩野派の作品とともに、20世紀~21世紀の日本美術の代表として、村上さんの作品が並んでいそうです。

普段「現代美術はわかりにくくて...」と敬遠気味な方もぜひ一度足を運んでみてほしい、と感じる展覧会でした。特に、京都の文化や江戸時代の美術に興味がある方なら、村上さんが取り入れた作品やその表現意図がよりクリアになり、より一層楽しめるはず。そして、過去の美術と現代の美術は決して断絶したものではなく一続きの場所にあること、それを古から文化都市として在り続けてきた「京都」で感じられることは、とても特別な機会になるのではないでしょうか。

開催は9/1まで。会期中には季節に合わせて展示変更や作品追加、イベントも予定されているそうなので、時期を変えて鑑賞してみるのも良さそうです。

村上隆 もののけ 京都(京都市京セラ美術館/2024.2.4~9.1)

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