Exhibitions展覧会
ソール・スタインバーグ「シニカルな現実世界の変換の試み」
アメリカでもっとも愛された芸術家の一人、ソール・スタインバーグ(1914—1999)の回顧展です。ソール・スタインバーグ財団よりご寄贈いただいたポスター、リトグラフ、エッチングなどの貴重な作品をはじめ、ドローイングを中心とした代表作の複製作品など、約170点の作品を一堂に展示します。
知的で洗練されたスタイルで漫画(cartoon)の世界に革命を起こし、美術の領域(ドローイング、絵画、版画、コラージュ、彫刻など)に“グラフィック”を取り入れた第一人者、スタインバーグ。その名前は日本でもおなじみですが、今最も再発見・再評価を必要としている芸術家でもあります。
スタインバーグは、ドローイングを「紙上で推論する方法」と捉え、神話化されたアメリカの理想像と現実とのギャップや、不気味で滑稽な不条理、たとえば、古いものと新しいもの、優雅と狂暴といったものの混在とその見えない裂け目(クレバス)を、ユーモアと風刺を備えた、軽妙でしかも鋭利な線(line)で描きました。
彼は、「見えない線」、「見えないもの」、「見えない言葉」、「見えない構造」を視覚化し、意味の変換、概念の変換に生涯挑戦し続けました。
スタインバーグは自分自身の肩書の曖昧さを積極的に受け入れていたようで、世間からも「描く文筆家」、「言葉と音の建築家」、「境界線上の芸術家」、「新しい思想の起案者」など様々に評され、常に未知の視覚的領域を超えて、子供の絵や大人の落書きから、クラシック、バロック、マニエリスム、表現主義、キュビスム、構成主義まで、あらゆるスタイル、あらゆる表現方法を試みました。
「私は読者に共犯を呼びかけている」と、スタインバーグは見る側を、現実の理不尽さに目を向けるために当事者になることを煽ります。スタインバーグが生み出した造形は、このような思索と思想を武器に、イタリアの風刺新聞『ベルトルド』やアメリカを代表する雑誌『The New Yorker』誌をはじめ、数々の新聞や雑誌の紙面を、美術館の壁にあるピカソの絵と同じくらい明確に、芸術の場に変えたのです。
本展は、2021年に東京のギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で開催された日本初の大々的なスタインバーグ個展の巡回展となります。
本展の監修をいただいた矢萩喜從郎氏曰く、「スタインバーグのドローイングを見せられたほとんどの人が、有り得る筈がない情景、と最初笑って反応したとしても、すぐに戸惑い、思考が停止し、宙吊りにされてしまう」。ぜひこの感覚を、会場の作品に直接対面して、ご体験ください。
※この展覧会は「ニュイ・ブランシュKYOTO 2023」の参加企画展です。
ソール・スタインバーグ
1914年、ルーマニアの首都ブカレストの近郊にあるルムニク・サラトに生まれる。ブカレスト大学で哲学と文学を学んだ後、イタリアのミラノ王立工科大学(現・ミラノ工科大学)で建築を専攻、1940年に卒業。ミラノでは風刺新聞『ベルトルド』に積極的に関与するが、ファシスト政権下の反ユダヤ的なイタリアを逃れアメリカに渡る。
第二次世界大戦中は海軍に入隊。戦後はニューヨークに居を構え、『THE New Yorker』誌の仕事に携わる。その後50年以上にわたり同誌の表紙を89点、中面のドローイングを1200点以上手掛けた。
1946年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の「14人のアメリカ人」展に選出。1952年にはニューヨークのパーソンズ=ジャニス画廊、翌年にパリのまーぐ画廊にて初個展を開催する。
1978年、ホイットニー美術館で回顧展を開催。1999年に没した後も、2006年を皮切りに大々的な巡回展『Steinberg: Illuminations』が開催された。主な作品集に『ALL IN LINE』、『The Art of Living』、『The Passport』、『The Labyrinth』、『The New World』、『The Inspector』他多数。日本でも藤子不二雄や柳原良平、和田誠等、多くの漫画家やイラストレーターに影響を与えた。
■ソール・スタインバーグ財団 https://saulsteinbergfoundation.org/
展覧会概要
期間 | 2023/08/09(水) 〜 2023/10/15(日) |
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会場・開催場所 |
京都dddギャラリー
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時間 | 11:00~19:00(土日祝は18:00まで) |
休館日 | 月曜日(祝日・振替休日の場合は開館、翌日休館)、祝日の翌日(土日にあたる場合は開館) ※9/12(火)はCOCON烏丸の特別休業日のため休館。また、9/19(火)・10/10(火)は祝日の翌日のため休館となります。 |
料金 | 無料 |
注意事項等 |
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お問い合わせ |
TEL:075-585-5370075-585-5370
FAX:075-585-5369 |
ホームページ | https://www.dnpfcp.jp/gallery/ddd/ |
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