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桃山時代の狩野派・永徳の後継者たち(京都国立博物館)

投稿:2015年5月25日

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京都国立博物館で行われていた「桃山時代の狩野派・永徳の後継者たち」。
大混雑を予想しながら出かけたのですが、午後4時過ぎだったので、ゆっくりと鑑賞できました。

室町時代末から江戸時代の終わりまで、およそ400年にわたり、つねに画壇の中心を走り続けた最強最大の絵師集団、それが狩野派です。

ほとんどの展示物が屏風絵や障壁画であるのは、権力者の御用絵師だった所以でしょう。城や御所の日常を飾った品々に、貧しい庶民の私は日常を忘れて夢見心地になりました。

権力者に庇護されることが制作の条件だった狩野派は、豊臣家、徳川家、朝廷のそれぞれに一族を配して、存続の道を探り続けました。芸術的センスに留まらず、政治的手腕にも長けていた様子が、展示されていた書簡などからもうかがえます。アーティストでいるためには世渡り上手でもなければならない。いつの世も同じですねぇ。

この先は独断と偏見で好みの品だけご紹介させていただきます。

まず目を引いたのは、豊臣秀吉、淀君、小早川秀秋、加藤清忠夫人などを描いた肖像画。
お人柄が伝わってくる生々しい表現が楽しい。日本美術の源流がマンガやアニメに変化したことがうかがえる、生々しさです。セリフがなくてもセリフが浮かんできそうなんですよね。

同じことが、風俗画にも言えました。このコーナーに二時間くらいたたずみ、桃山時代にトリップしてしまいました。酒を飲み踊る侍、彼らにお茶を勧めたりへべれけの侍の世話をしたりする遊女、真剣な顔で踊る人々が、目の前にいるように生き生きと迫ってきました。
片隅に描かれた料理人や、さばかれている鳥と魚の表情までリアルです。どんなものを食べていたんだろうと想像がふくらみました。

ショックだったのは、犬追う物図で。これは、武士が犬を的に弓矢の芸を鍛錬した伝統武術だったようですね。ぐるりと輪になった猛々しい武者の真ん中に引き出されたいたいけなワンコの表情がもう……。動物好きにはたまらんかったです。( ゚Д゚)

南蛮屏風においては、得意げなバテレンの顔とは対照的に、黒人のお供の顔が哀し気に描かれていて、彼らの人生まで伝わってくるかのようでした。

マンガやアニメ好きなら、その原点を見るような気分で楽しめるでしょう。
だから、こういうものは是非、若い方にも鑑賞していただきたいなぁと思いました。

屏風絵と障壁画の王道、花鳥画も見応えたっぷり。清流に遊ぶ鳥たちの色や動きはいくら見ていても飽きさせません。金雲で空間を引き締めながら、わずかなスペースの中に無限の空間を魅せる狩野派の技術に、あらためて感嘆しました。
 



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