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アサヒビール大山崎山荘美術館 企画展 「光と灯り」|中里楓のアーティスティック探訪 43

投稿:2014年2月14日

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“The Tudor Gothic villa fascinates every traveler.”

「チケットの有効期限が切れている!」

『京都で遊ぼうART』さんからいただいていたチケットの期限は、もっと長いものだろうとのんびりしていたら、26年の1月13日で知らぬうちに切れていました…

そうは言っても、そんなことがなくても以前からチェックしていた美術館なので、行ってきました。

アサヒビール大山崎山荘美術館
企画展 「光と灯り」
後期:2014年1月17日(金)-4月13日(日)

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急な坂を登って、冷んやりとした空気の中、琅玕洞(ろうかんどう)と呼ばれるトンネルをくぐっていくと、そのおしゃれな英国風の山荘があります。

一歩山荘の中に踏み込めば、壁や梁に使われている栗や松の木の黒光りする色調に包まれて、こころに落ち着きをもたらしてくれます。

「天井が…高い」

三角にとがった天井の下の柱には、大きな置時計があって、その一秒ごとの秒針の滑らかな動きを見ていると、

「この山荘は、呼吸をしている…」

と感じさせてくれます。

今回の企画展は、前期後期に分かれていて、山荘の数ある展示室にそれこそ著名な芸術家たちの作品が厳かに展示されています、そう、厳かに…

今思い出すだけでも、素敵な展示の仕方だと思います、各々の作品が栗と松の漆黒に包まれて。

クロード・モネ、河井寛次郎、バーナード・リーチ、濱田庄司、棟方志功、ルーシー・リー…

●河井寛次郎 海鼠釉片口 1933年頃

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(館内は撮影NGのため、この画像はインターネットから引用しています)

椀の底の釉薬は、青と白の神秘…

この海鼠釉の美しさの残像をまぶたに残しつつ、山荘の階段をその途中のステンドグラスに目を取られながら上がっていくと、

「はっ!なんだこの時計!」

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階段の左の壁の高さ30センチほどの置時計。
撮影NGなのでいつものようにスケッチしてみましたが、この数字盤の上中央から伸びた針金が振り子になっていて、回転するごとに左右に備え付けられている2本の長短の針金に、先に錘の付いた糸が、

「くるくるクル~っ」

と巻きつくのです、大体2秒ごとで。その規則的初体験的な動きがおもしろくて、しばらく見とれていました。この山荘の魅力のひとつ見つけたり!

●ルーシー・リー Lucie RIE  花生 Vase with flared rim

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(大山崎山荘美術館ミュージアムショップの絵はがきから)

この花生(はないけ)の白も、透明な光のなかから抽出された特別な白。
それに、やわらかな炎ゆらめく金色の縁が、周りの空気をキリっとひきしめているようです。

琵琶湖疎水沿いのカフェ mement mori は、ボクのいきつけのカフェ。そこにこのルーシー・リーの作品集があってそれを見たことがあったので、今回実物を見ることができたのは予期せぬ喜びでした。

●カフェ企画 「芸術家たちの光(La Lumiere d’Artistes)」

山荘2階にある喫茶室では、展覧会期間中に3種類の特製オリジナルケーキをいただくことができます。リーガロイヤルホテル京都さんがこの展覧会のために考案したものだそうで、

◇モネの庭(Le Jardin de Monet)
◇クレーの天使(L’Ange de Klee)
◇ルオーのステンドグラス(Le Vitrail de Rouault)

の3種類。せっかくなので趣ある山荘喫茶店で、お茶することにしました。

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(ルオーのステンドグラス&ホットコーヒー)

アーティスティック探訪の中で、はからずも

「おいしいカフェ巡りin 京都~!」

復活です。これを機会に、今年はカフェ巡りもそれなりにしていこうと思います。

このルオーの特製ケーキは、シトラスと苺の生地にレモンジャムが香る爽やかな味わいで、
クランベリー・パパイヤ・パインがトッピングされています。

「フルーツの彩りがカラフルやわ~!」

スポンジ生地のふわふわとフルーツのシャキとした食感が絶妙です。

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この写真は、山荘テラスから撮影したもので、正面に見えるのは岩清水八幡宮のある男山で、その麓には京街道も通っています。

素敵な眺望を望みながら、山荘テラスにておしゃれなケーキで午後のティータイムでした~。

山荘2階の中央には、喫茶室・テラスと展示室3・4に続く吹き抜けのホールがあります。
ひねり支え柱の手すりの階段が上階に伸び、その先に視線を移せばシャンデリアランプが吊り下げられています…厳かです。

●Polyphon  “Mikado”
 ドイツ ポリフォンムジクヴェルゲ社製 1895年頃

その吹き抜けホールにある大きなオルゴールです。
説明書きには、

今月の曲目 ドイツ歌曲 Das deutsclichelied
作曲 ヨハン・カリヴォダ Johann Kalliwoda ボヘミア

と書いてあり、一日に5~6回、決まった時間に鳴り響くようで、ボクはちょうど14:00に聴くことができました。

「ん~…いい音色…」

ほんの数分の演奏でしたが、それがこの山荘の雰囲気とさっくり合っていて、胸がじ~んとしました。

「今月の曲目…ということは、月ごとに曲が変わるのかな?」

と気になったので、喫茶室のおねえさんに聞いてみました。
そしたら、

「はい、このオルゴールのこの下の部分に何枚か盤が保管されていまして、その月ごとの雰囲気に合わせて、曲目を変えています」

と曲目リストも見せてくれました。

「あの…そのリスト、メモしてもかまいませんか」

と無理なお願いをしました、こんなこと言うゲストもいないでしょうね(汗)
快く見せていただいたリストのいくつかの曲目は、以下のとおりです。

1 La belle Polonaise  美しきポロネーズ  K.Millocker  オーストリー
7 Lohengrin ローエングリン  Wagner ドイツ
12 Jone Marcia Funebre,Spanish  E.Petrella  イタリア
18 Cantigue de Noel  Christmas Song  作者不詳
19 Preciosa Lied Einsam bin ich,nicht alleine  オペラプレシオーサ
C.M.Weber ドイツ ウェーバー

1階の展示室1から伸びる廊下をたどっていけば、その先に「夢の箱」(山手館)があります。

●古陶器の輝き

◇ペルシャ緑釉銀化獣頭瓶 10-11世紀
◇ペルシャ白地藍彩双頭獣把手壺 12世紀

銀化とは…陶器やガラスの表面が、地中に長い年月埋まっていることにより変質し、虹色に輝く現象をいう。ローマグラスやペルシャ陶器、中国漢代の緑釉陶器などに多く見られる。
千五百年、二千年と気の遠くなるような長い時間の先にある、人工では創り出すことのできない、奇跡の美。

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(ペルシャの銀化耳付壺、サンプルとしてインターネットから引用しました)

「この輝きが…人智を超越したものなのか…」

そして、ミュージアムショップ横の扉からは「地中の宝石箱」(地中館)へ行くことができます。

●自然の光、祈りの光

◇クロード・モネ 睡蓮 1907  Claude MONET  Water Lilies 1907

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(山荘ミュージアムショップで買った絵はがきから)

大きなキャンバス一面に、数々の青・水色・緑・藍の水面に、あざやかな睡蓮の花が美しく…
絵のまわりを、5~6分くるくるとめぐって見ていましたが、

「…なんだか、まだこの絵のよさがわからない…」

きっとボクの審美眼が未熟なのでしょう、これは今後の宿題です。
でも、この地中の宝石箱の照明は、

“MUSEUM COB SPOT LIGHT”

と呼ばれる自然光LEDというものらしく、世界の名作を見るのに最先端の技術が導入されていました。

陽が傾きかけた夕刻、山荘を出て急な坂を下っていけば、名作を見たあとの心地よい疲れがあり、

「ふぅ~!この日の収穫は、大山崎山荘美術館そのものやったな~!」



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