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【インタビュー】京都造形芸術大学「ものづくりルネッサンス」職人マップ プロジェクト

2011/06/14

DSC_3685.JPG 右・関本徹生先生 左・小西由悟さん



陶芸、染織、漆器、金工...京都には実にたくさんの伝統文化が産業として、現在も息づいています。それらはどれも日本の文化を代表するものばかり。生み出された優れた美術品は昔から多くの人を魅了してきました。

そんな京都の「ものづくり」文化を支えてきたのは、それを作り出す高い技術を持った職人さん達です。もちろん京都には様々なジャンルの職人さん達が数多く存在し、ものづくりに携わっています。
しかし、どこにどんな職人さんがいるのか?までは、あまり知られてはいないのではないでしょうか。

京都のどの地域にどんな職人さんがどのくらいいるのか?
これが一目で分かる「職人マップ」が、このたび京都造形芸術大学プロジェクトセンターと学生グループによって制作されました!

2011年6月19日のシンポジウム「ものづくりルネッサンス2011」にてお披露目となるこのマップ。
今回、マップ作りに携わった京都造形芸術大学教授の関本徹生先生、そして学生スタッフの小西由悟さんに、「京都で遊ぼうART」のスタッフがお話を伺ってきました!


この「職人マップ」を作るきっかけとなったのは、3年前(2007)のこと。
フランス・パリと京都が姉妹都市協定を結んで50周年を迎え ることを記念した企画として、フランスから二人のアーティストが「アーティスト・イン・レジデンス」(アーティストが一定期間ある土地で生活し、そこで作品を制作する事業)のために来日。京都の職人さんとコラボレーションした作品を作ることになったのだそうです。

「じゃあ、頼めそうな職人さんは 京都にどのくらいいるんだろう、と調べようとしたんです。でも情報が殆ど無かった。各業界の団体(組合等)ごとに参加している職人さんはわかるんですが、 団体に属していない人もとなると全く分からない状態でした。団体同士での情報共有もあまりないようで...そこで、だったら自分たちでやってしまおうじゃ ないか、と思い、調査を始めました。」(関本先生)

調査はプロジェクトとして、5人の学生さんによって行われました。京都でも職人さんが多いといわれる東山区・下京区(一部)を対象に、それをいくつかのエリアにわけ、1人ずつ担当地域を歩きながら目視で職人さんのいるところを探していくという、実に地道な調査だったそう。

「看板を出していたり見た目からしてお店と分かるところならよいのですが、実際には看板もないところ、一見して職人さんがいるのかどうかもわからない普通の家 のようなところも多くて。運よく窓から職人さんの姿が見えたら「しめた!」といった感じでした。あとは会った人に尋ねたら近所の人を紹介してもらっ て...という形が多かったです」(小西さん)

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これが「職人マップ」。6/19のシンポジウムで参加された方に配布されます!


完成までには約2年半。できあがったマップに掲載された職人さんは、約300軒!
どのジャンルの職人さんがどこにいるのか、所在地が地図上に記号で表示されています。
職種も、陶器・漆器から、金属加工、染物、扇子などのファッション小物、瓦、インテリア、箔張り、人形やかつら、和菓子などの食料品...実に多彩!これだけ様々なジャンルの職人さんが京都にはいるのか、と改めて驚かされます。

また、地図を見ていると同じジャンルの職人さんが近くにかたまっていたり、様々な特徴も知ることができます。

「ひとつのジャンルに関わる人が同じ地域ごとに集まっているんですよ。ひとつの工場のように分業している人が集まっていたりとか、職人とそれを販売する問屋が すぐ近くにあったりとか。ジャンルにも個性があって、お菓子屋さんは各地区に満遍なくならんでいたりします」(小西さん)
「こういうものづくりの クライアント(依頼主)は神社や仏閣がメインなので、その周りに職人が集まっていることも多いんですよ。また、金工が盛んな地域だと鍛冶に関する神様が祀 られていたり、地域の個性もわかります。それに昔の地形や街のなりたちの流れも、そこから読み取ることができるんですよ」(関本先生)

また、調査の過程では同じ分野の職人同士でも、地域によって立場が異なってくるなど、直接お伺いしなければわからないような貴重な話も数多く得ることができたそうです。

関本先生は、調査をこれで完結させるのではなく、今後はこのような職人さんへのヒアリングに力を
入れていきたい、と仰っていました。

「最終的には、「職人の知恵」を残していきたいんです。
例えば陶器職人が茶碗を作っているなら、「何故「茶碗」を作る必要があるのか?」「何故割れやすい陶器で作るのか?」「この形でなければならない理由は何なのか?」その「ものづくり」への姿勢や考えを残していきたい。
どうして「ものづくり」をするのか、それを問い直すことが、今後の京都の「ものづくり」の文化を考える上でも必要になると思います」(関本先生)

また、今回の調査を実際の企画・活動を行う際のたたき台にもしていきたいとのこと。
最 近では、京都市の地域連携型空き家流通促進事業により、空き家となっていた職人長屋(主に職人が集まって暮らす集合住宅)を借り、そこに学生さんが実際に 入居。アトリエやワークショップ会場としても活用し、町家や地域の再生をしていくという事業も、実際に活動が開始されています。
若者が地域の中に入っていくことで、後継が減り衰退しつつある職人の街に、活気を取り戻す狙いもあります。

「ものづくり」の街・京都の持つ力を再発見し、そしてこれからの未来へつなぐ。
まさに「ものづくりルネッサンス」。「職人マップ」はそのはじまりにふさわしい、大きなきっかけになっていくのでしょう。

今後の活動にも、要注目です!

※職人マップや調査プロジェクトの詳細については、6月19日に開催されるシンポジウムにて報告が行われる予定です。

関連リンク

ものづくりルネッサンス2011 シンポジウム ~日本・京都のものづくりの復興と創造~
日時:2011年6月19日(日) 14:00-17:00
会場:東山区総合庁舎
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