Exhibitions展覧会

アン・リスレゴー展「Shadow Ya Ya」

2015/10/27(火) 〜 2015/12/25(金)

京都芸術センター 

PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015でも注目を集めたノルウェーの現代美術家、アン・リスレゴーの個展。今回は日本未発表の2作品を京都芸術センターの空間を使った新たな映像インスタレーションとして提示します。SF小説をベースにその世界観をダイナミックに表現するその世界観をお楽しみください。

ノルウェー出身の現代美術作家、アン・リスレゴーの個展です。

2015年5月のPARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015に出展した映像インスタレーション作品でも注目を集めたリスレゴーは、10月から京都に滞在し、現在新作に向けて京都市内の建築や文化のリサーチを行っています。
フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』やU・K・ル=グウィンの『闇の左手』、川又千秋の『幻詩狩り』など、主にSF文学からインスパイアされた彼女の作品には、動物や人間、20世紀の建築や美術作品の一部などが登場し、音響や光の効果と一体となって複合的なイメージを構築します。

今回の展覧会では、ともに日本未発表となる《Time Machine》(2011)、《Crystal World(after J・G・Ballard)》(2006)の2作品を、京都芸術センターの空間を使った新たなインスタレーション作品として提示します。

《Crystal World》は同期されていない2つのスクリーンを使った3Dアニメーションによる作品。リナ・ボ・バルディがサンパウロ(ブラジル)郊外に自邸として建てた「ガラスの家」(1951)や、オスカー・ニーマイヤー率いる建築家チームが設計したサンパウロのシッシロ・マタラッツォ・パヴィリオン(1957)が、熱帯のジャングルの奥にたたずむ緩慢に結晶化していく近代的なホテルに置き換えられています。
ベースとなっているのは小説家J・G・バラードの中編小説『結晶世界』。熱帯雨林の奥深くで発見された謎の結晶化ウィルスがあらゆる有機物を化石に変えていく、という作品です。バラードは悪夢のような世界を旅する傍ら、文明社会の劣化や解体、人間性の喪失を描いた黙示録区的な作品を通し、無意識の領域に取り組みました。断片からなるバラードの文章は、ハイブリッドな現実を構築しながら、人間が直視しがたい問題を投げかけます。この作品の持つ不穏なイメージが、リスレゴーの作品では結晶化して化石の世界となったジャングルを舞台に、長く延びる影のイメージと結びつきます。

もう1つの《Time Machine》では、解体されたミラーボックスの中に映し出されたキツネのような生物が、どもりながらSFの巨匠H・G・ウェルズの小説『タイムマシン』の主人公さながら、彼が訪れたはるか遠い未来の世界についての報告を物語ります。話を続ける間にその声と語りは徐々に崩れ、単語が繰り返され言語は入り混じり、センテンスは溶解していきます。まるで、未来への長い旅と同時に「語り」自体が自らを構築する「言語」そのものへと、危険な冒険の乗り出しているかのようです。

綿密なリサーチに基づき、重層的に構築されたリスレゴーの作品。彼女の作品を通し、私たちは物語の持つダイナミックな世界観を目の当たりにします。同時に、それらがどこか遠くにある別の場所ではなく、現代の精神的なあり方をも示していることに気がつくでしょう。
今回の京都滞在を通して、リスレゴーは「談話室」というより生活空間に近い場所での新たな作品提示を模索しています。さまざまな記憶が蓄積した京都芸術センターの空間を歩きながら、日常と地続きにある異相の世界に足を踏み入れてみては如何でしょうか。
 

アン・リスレゴー(Ann Lislegaard)

1962年ノルウェー・トンスベルグ生まれ。現在コペンハーゲンとニューヨークを拠点に活動。ヴェネツィア・ビエンナーレ(2005)、サンパウロ・ビエンナーレ(2006)、リヨン・ビエンナーレ(2013)、シドニー・ビエンナーレ(2014)に参加。また、アストルップ・ファーンリ現代美術館(オスロ、2007)およびデトロイト現代美術館(2009)、テルアビブ美術館(2015)などで個展を開催。 S.R.ディレイニーの『ダールグレン』やU.K.ル・グィンの『闇の左手』などのSF小説から着想した3Dアニメーションや音響+光のインスタレーショ ンの作品で知られる。2015年3月、PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015に参加。
http://lislegaard.com/

展覧会概要

期間 2015/10/27(火) 〜 2015/12/25(金)
会場・開催場所 京都芸術センター
時間 10:00~20:00
休館日 会期中無休
料金 無料
お問い合わせ TEL:075-213-1000075-213-1000
FAX:075-213-1004
E-Mail info@kac.or.jp
ホームページ http://www.kac.or.jp/

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