Exhibitions展覧会

©Mugyuda Hyogo

大阪出身の麥生田兵吾（むぎゅうだ・ひょうご）による写真展です。

タイトルとなっている「Artificial S」は麥生田が主題に掲げているもので、Sは「sense＝感覚・感性」の意味を持つことから、彼自身は「人間の手によりつくられた感性」というような意味で捉えています。

麥生田はこの「Artificial S」という主題を補完・構成する試みとして、2010年1月より、毎日撮影した写真を撮影したその日のうちに自身のウェブサイト（http://hyogom.com）内の「pile of photographys」にアップすることを4年以上絶え間なく続けています（現在も継続中）。この試みは、

「進まねば失い、怠れば後退する、そういった性質の感性ともいえるものを手に入れたい」
「それは瞬間瞬間に、肉体と精神に訪れ過ぎ去っていくもの」
「私はこれを、例えば表現においても、先んずるものにしたいと考えています」

という麥生田の願いに基づいて行われており、それはとりもなおさず、「人間（＝麥生田）」の手によりつくられた感性」の存在を確認するための行為とも呼べます。ここでは「写真」はその照査（証左）としてただ存在しているものといえるのです。

麥生田は「Artificial S」を現在5つに分けており、今回の展覧会ではその2つ目「Daemon（ギリシャ神話におけるダイモン＝神と人の間に介在する二次的な神）」をテーマとして「人の心におさまっている正体を定めないイメージを露に」します。
展示されるそれぞれの写真は、いずれも日常で目にする風景の一部がただ「写った」ものであり、それ自体は「意味」を持つものではありません。しかし、鑑賞者は目の前の写真を「見る」うちに、そこに「勝手に」「意味のようなもの」を「見たり見なかったり」します。
鑑賞者に内在する茫漠としたイメージ（想像）が、目の前のイメージ（図像）を借りて、イメージ（想像や図像や意味）を成すこと。いわば偶像崇拝にも似たベクトルが、鑑賞者の目に前にある「世界を写した写真」によって引き起こされます。そのとき、私たちは確かにソレ（写真あるいは世界）に出会い、ソコ（写真あるいは世界）に何かを見つけます。ただソレだけのことです。

20点あまりの写真がただ「在る」この展覧会で、皆さんは何を見つけるでしょうか。

※ この展覧会は、国際写真フェスティバル「KYOTO GRAPHIE」のサテライト展「KG+」の参加展覧会です。Gallery PARCでは、KYOTO GRAPHIEの会期中、この展覧会を含め3つの写真展を開催します。今回はその第3弾となります。
 

麥生田 兵吾 （ むぎゅうだ・ひょうご）

1976年 大阪生まれ
2010年 1月より写真作品「 pile of photographys 」をweb上で更新開始（現在も継続中）
　　　　　 「THE TOKYO ART BOOK FAIR 2010」（3331千代田ARTS /秋葉原）：「Zine port」の一員としてZineを出品
2011年 「THE TOKYO ART BOOK FAIR 2010」（3331千代田ARTS /秋葉原）：「Zine port」の一員としてZineを出品
2012年 グループ展　「in the waitingroom」（waitingroom/恵比寿）
2013年 グループ展　「溶ける魚 つづきの現実」(京都精華大学ギャラリーフロール/Gallery PARC /京都 )

http://hyogom.com