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※この記事は掲載時(2012年7月)の情報に基づきます。

特集記事

京都MUSEUM紀行。第六回【京都陶磁器会館】

京都MUSEUM紀行。vol6 「京都陶磁器会館」

やきものの町、京都発。「やきものの情報発信基地」

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清水寺のふもとにあたる東山五条。

この付近は京焼・清水焼発祥の地であり、400年以上も昔から陶磁器が数多く作られてきた「やきものの町」です。特に清水寺の参道ともなっている五条坂や茶わん坂には、現在も多くの作家が居を構え、焼き物を作り続けています。

そのちょうど登り口にあるのが、今回ご紹介する京都陶磁器会館です。

京都陶磁器会館は京焼・清水焼の文化の紹介・振興と展示・販売を目的とした施設で、財団法人京都陶磁器協会によって運営されています。

以前は「くるる五条坂」という名前で運営されていましたが、2012年にリニューアルされ、現在の形となりました。 建物は道路に面した壁がガラス張りになっており、陽の光が差し込む明るい空間を演出しています。展示作品が外からも見えるため、思わず足を止める方も多いそうです。

京都を代表する観光地だけあり、外には常に人通りが絶えませんが、施設の中は静かで落ち着いた雰囲気となっています。

― 現代の「京焼」が勢ぞろいした常設展示。

1階は主に常設展示室となっており、数多くの作家作品が展示されています。 展示されている作品は皆、京都で創作活動を行っている作家や窯元によるものです。伝統の技を継承した名工から注目の若手作家までの作品を一度に目にすることができます。

絵画的な文様が丁寧に施された伝統的な作品はもちろん、現代的なパターンをあしらったもの、シンプルな青磁・白磁、幾何学的なデザインのオブジェなど、形や表現方法は作品によってさまざまですが、全て京都で生み出された作品であることは共通しています。

見た目や表現が違いますが、皆「京焼」と言えるのです。

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「京焼」と聞くと、一般的には薄手で絵画的な絵付けをした作品がイメージされやすいようですが、実際は「京焼とはこうである」というはっきりとした共通点があるわけではないのです。

むしろ「何でもアリなのが京焼」とも言えるほど多彩な表現が存在し、作家の個性を強く発揮した作品が多い点が、京焼の最大の特徴です。

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ベテランから若手まで、京都で活躍する多くの作家の作品を一堂に集めている京都陶磁器会館1階の展示は、現代における「京焼」とはどんなものか、最先端の姿を知ることができると言えるでしょう。

また「バラエティ豊かな作品の中から、お気に入りの作家や作品を発見する」、そんな楽しみ方もできる展示となっています。

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施設のスタッフにも、実際に自ら作陶を行っている作家が加わっています。

作り手ならではの視点から各作品の見どころや鑑賞の仕方なども丁寧に教えて頂けるのは、京都陶磁器会館ならではの特徴です。

ここもチェック!

常設展示が主体の1階でも、時期に よっては企画展も開催されます。
取材時(2012年7月)には展示スペースの一部を使用して、個展が開催されていました。
また毎年8月には、五条坂で開催される陶器祭りに合わせ、1階全面を使っての京都陶磁器協同組合連合会主催による「第34回京焼・清水焼展」が開催されます。

●イベント案内
第34回京焼・清水焼展」 2012年8月3日(金)~8月10日(金)

マエストロ貴古展(2012年6月29日~7月24日)

陶芸家・四代目貴古さん(貴古窯)と美術家・今橋裕子さんご夫妻の共作・コラボレーション作品展。

”ラスター彩”(※)という技法で作られた作品は、色鮮やかでキラキラと宝石のような美しい輝きを見せます。一方で、作品を彩る文様は昔から食器の絵付に用いられてきた清水焼伝統のものを取り入れているのだそうです。

在廊されていた今橋裕子さんは「昔のものは描くだけでも技術が必要ですし難しいのですが、本当にきれいなもの、本当に良いものを追及した結果、ここに行き着きました。昔からの技を受け継いでいくことは、新しいものを生み出す上でも重要なことだと思います。伝統を受け継ぎつつ、新しい表現をする、昔のものの写しで終わらない姿勢が、京焼・清水焼らしさだと思っています」と仰っていました。

※スズ白釉(はくゆう)をかけて焼いた素地(きじ)に銀・銅などの酸化物で文様を描き低火度で焼成した磁器。イスラム圏で盛んに生産された。虹色を帯びた美しい輝きが特徴。

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― 若い作家を育て、紹介する場所として。

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※提供:京都陶磁器会館

京都陶磁器会館では、若い作家の支援にも積極的な取り組みが行われています。

2012年の春、2階には新たにギャラリースペースが設けられました。こちらのスペースは「現代の工芸を志向し思考し模索する若き作家に国籍を超えて広く開放する」ことを目的とした若手向けの展示室です。

今年は京都で作陶活動を行っている若手作家の中から出展者を募集し、5名が選出されました。

ガラスの壁が印象的な1階に対し、2階のスペースは白壁が基調のシンプルな雰囲気。作品の展示はもちろん、空間全体を使っての演出も行えるようになっています。実際に、用意された展示台を全て撤去し、作家が自ら作品に合わせて作った棚に展示をしたこともあったそうです。

スタッフの林さんによれば「芸大出身の作家さんなどは、空間全体、展覧会自体をひとつの作品と考えて、プロデュースされる傾向が多いように感じます」とのことでした。作品ひとつひとつを個別に見るだけでは分からない、作家の世界観自体が味わえることが2階での展示の特徴です。

展示期間中には、スタッフが自ら出展作家にインタビューを行った特集フリーペーパーも配布され、より作家と作品に親しみが持てるようになっています。

「小坂大毅展」
「小坂大毅のぶりこら展」展示風景 (2012年6月11日~24日)
※提供:京都陶磁器会館

「田上真也展」
「田上真也展」展示風景(2012年5月2日~29日)
※提供:京都陶磁器会館

― 作家の顔が見えることが、作品の価値を知ることに繋がる。

京都陶磁器会館では展示だけでなく、ワークショップや製作実演などの企画も行われています。

2~3月には「京都の名工の実演」が開催されました。

この企画は京都陶磁器協同組合連合会主催による、京都市のプロジェクト「京の「匠」ふれあい事業」の一環で、実際に京都で活動している作家・職人を招き、その場でろくろを使っての成形の実演など、焼き物作りの技を披露するという試みです。

職人の方とおしゃべりをしたり土に触れる体験もできたこともあり、リピーターも多く、大変好評の企画だったそうです。

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※提供:京都陶磁器会館

作品は手に取れても、制作の様子を直に見る機会はほとんどありません。「だからこそ、どんな方がどのように作品を作っているか知って頂くことが大切だと思います。何も知らずに作品を見るより、作品がとても大切に思えてくる。作品や、京焼の持つ価値を理解して頂くことにも繋がります」と、スタッフの内海さんは仰っていました。

このほかにも、作家・職人さんと協力して制作した器を近隣の学校の茶道部に寄贈するなど、地域との連携企画も行っていらっしゃいます。

― やきものの町・京都の施設だからこその、日本の焼き物”情報発信基地”としての役割を担っていきたい。

五条坂・茶わん坂地域は観光客の多い地域でありながら、陶磁器の産地であるということを知らずに来る方も、最近は多いのだそうです。

ですが、現在も多くの焼き物作家・職人が京都で作品を生み出し続けていること、京都が多くの作家や職人、焼き物に支えられ歴史を重ねてきた「やきものの町」であることは事実です。地域を支えてきた産業である京焼・清水焼の魅力を知ることは、地域の魅力を知ることでもあります。

「『日本で焼き物の中心的な場所、焼き物といえば京都!』と多くの方に思って頂きたいです。そして、そんな場所にある施設だからこそ、多くの人に陶磁器のことを知ってもらえるスペースでありたいと思います。京都はもちろん、今後は日本の焼き物の”情報発信基地”としての役割を担っていきたいですね」(内海さん)

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清水地域を訪れる際には、清水寺に参拝するだけでなく、京都陶磁器会館にも足を運んでみてはいかがでしょうか。地域のもつ豊かな文化や魅力、そして京都ならではの魅力的な作品との出会いが待っています。

(取材に際しては、スタッフの内海様、林様にご協力をいただきました。この場を借りて御礼を申し上げます)

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京都陶磁器会館

京都陶磁器会館

所在地

〒605-0864
京都府京都市東山区東大路五条上ル

時間

午前9時30分~午後5時
(最終入館 午後4時30分)

休館日

水曜日・木曜日

お問い合わせ

電話番号 : 075-541-1102

FAX番号 : 075-541-1195

公式サイト

http://kyototoujikikaikan.or.jp/

■料金

無料

■交通のご案内

JR東海道新幹線・東海道本線「京都駅」より市バス「五条坂」下車すぐ
京阪電車京都線「清水五条」駅下車 東へ徒歩約10分
名神高速道路 京都東ICから京都・大阪方面へ。
東山五条交差点を右折100m先。約6.6km約11分




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