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※この記事は掲載時(2009年6月)の情報に基づきます。

特集記事

京都MUSEUM紀行。第一回【何必館・京都現代美術館】

京都MUSEUM紀行。

京都市東山区何必館・京都現代美術館

京都にある、個性豊かな博物館・美術館施設の数々。その中から毎回ひとつをピックアップし、そのこだわりや魅力などをご紹介していきます。さて、今回は・・・

喧騒の中にある、心地よい非日常空間。

車も人の波も絶えることのない、京都を代表する観光地の一つである、祇園。
舞妓さんも行き交うことも多い通りの一角に、美術館があることをご存知でしょうか。
八坂神社のほど近く、四条通のアーケード街の中に建っている、飾り気のないモダンなビル。間近でみると壁に穴がぽっかり口を開けているかのように見えます。そして一歩中に入ると、そこに広がるのは静寂。ひっそりと静まり返り、外の喧騒が一瞬で消え、今自分がどこに来たのかと思ってしまうほどの差に思わず戸惑ってしまうほどです。
まさに、異空間という表現がしっくりきます。

美術館の名前は「何必(かひつ)館・京都現代美術館」。一見、何と読むのかも分からないような不思議な名前です。
この名前は、「何必」即ち「何ぞ必ずしも」とは、「定説を常に疑い、それに縛られない自由な精神を持ち続けたい」という館長の願いからつけられたものだそうです。
一体何のことだ、と思ってしまいそうですが、美術館自体がその名を体現しています。

村上華岳「太子樹下禅那」 1938

名は体を表す。確かに息づく「何必」の考え

館長の梶川芳友さんは、村上華岳の「太子樹下禅那」という一枚の絵画に出合い、美術に関わる道を志したそうです。
晩年の作者が、病に苦しむ中で描いた、それを微塵も感じさせないあまりにも穏やかな表情の悉多太子(若き日の釈迦)の姿。
病への苦悶とは無縁のその姿は、辛さなどに縛られることなく、どこまでも自由な魂の形。それは梶川さんにとって「あらゆる考え方の出発点」、即ち「何必」の考えにいたる始まりとなったのだそうです。 そしてその考えは、収蔵品のメインとなっている村上華岳・山口薫・北大路魯山人の三人をはじめとしたコレクション全てにおいて、確かに息づいているのです。

「何必」の考えは、建物そのものにおいても貫かれています。
シンプルモダンな一階からエレベーターで上階に上がると、中に広がるのは床の間だったり、障子だったり、茶室に坪庭まであったり、と実はかなり和風な空間。
外観からはとても想像がつきません。見た目がモダンだから中身も…という思い込みは禁物、ということでしょうか。建物の中全体には、どこか凛とした空気が漂っています。

5階の茶室は、「太子樹下禅那」のために作られた空間だったそう。

開催されている展覧会も、現役で活躍している現代アーティストの作品を和空間の中に展示していたり、茶室の床の間に油絵を飾っていたり。 「こうでなければならない」というような決まった形や枠に囚われることのない、空間の使い方がされています。

思わず不思議だな、面白いな…と感じたその瞬間。
はっ、と定まった考えに縛られていた自分に気づかされました。

坪庭の上は屋根がなく、外光がそのまま入ってきます。

この美術館でもう一つ、注目したいのは光の使い方。
せっかく素晴らしい作品を展示していても、それを生かすも殺すもライティング次第といってもいいほど、光の当て方は作品の見え方も決めてしまう重要な要素。
ここでは、白い壁に反射した光や障子越しに入ってくる光といった間接照明、坪庭の上の明り取り窓からの自然光を上手に利用したり、かと思えば彫刻作品は暗がりからぼんやりと浮かび上がってくるような演出のライティングがされていたり。その作品が一番「映える」光の使い方がされているのです。

「定められた」日常の枠から一歩抜け出して、「自由な」非日常へ。ちょっと日頃の喧騒を忘れたいときに訪れたい、心地よい非日常への小旅行ができる、そんな美術館です。

じっくりと作品を鑑賞する時間を過ごし、外の喧騒へと帰っていくとき。
身の内には心なしか、何かから解き放たれたような、そんな感覚が残っていました。

参考 梶川芳友『何必館拾遺』(淡交社刊)

施設情報

何必館・京都現代美術館
京都府京都市東山区祇園町北側271

施設の概要はこちら

学芸員より

賑やかな通りに面していますが、中に入ると驚くほど静寂な空間が広がっています。コレクション展では村上華岳・山口薫・北大路魯山人の作品を展示し、年に数回行われる企画展では現代作家を扱い、幅広い作品を見ることができます。作品だけでなく5Fの光庭など館の空間にも注目してご覧下さい。(コメント:内田学芸員)



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