Exhibitions展覧会

《Transparent room No.2》2013年

スタンダードな油彩技法ながら、洗練された美しい描写や日常を繊細に切り取る視線で注目を集める中比良真子による個展です。
2008年のアートフェア「ART OSAKA」にて大絶賛を受けて以降、中比良は年を追うごとに評価を着実に上げてきました。作家としてのキャリア10年目を迎える現在に至っても、その独自のスタイルは変わることなく更なる進化を遂げようとしています。

中比良の作品は表現しようとするテーマによりシリーズとして枝分かれしていますが、全ては中比良が紡ぐひとつの物語で繋がっているようでもあります。毎日を過ごす中で、通り過ぎていきがちな些細な出来事（風景・事象・心象）を繋ぎとめるかのように描かれ、中比良の関心がそれぞれの作品に色濃く反映していると言えます。

前回から約1年ぶりとなる今回の個展では、新たに制作されたシリーズ「Transparent room」と、併せて“gallery S”では「On the way home」の展示を同時開催します。
「On the way home」では、夜景の光を構成している住居の「窓」に焦点を当て、窓から漏れる光景を描いています。新作の「Transparent room」も同じく「窓」をテーマとしており、こちらでは風景の一部である建物の窓から、更にその先に見える窓越しの風景を描いています。
両シリーズに共通しているのは、窓越しに見た誰かの日常、確かに存在するの風景を描いていることです。しかし、現在の場所から見えるものは限られており、窓の向こう側に存在する景色は現実なのか虚像なのか、資格や意識を通り越した先にあるものは不確定でありながらも、曖昧だからこそ託せる希望やぬくもりがあることを示唆しているようです。
中比良はこうした不安定で不確定な現実世界の中にある風景を描くことで、より確かで丁寧な日常を見出します。そして、すさまじいまでの速さで過ぎていく現代社会に生きる私たちに、本当の意味での「日常」を取り戻させてくれるようでもあります。

この機会にぜひご覧ください。