Exhibitions展覧会
韓国画と東洋画と
日本と韓国を拠点に美術評論の執筆や展示企画を行っている、紺野優希のキュレーションによる展覧会。近年韓国内で精力的に活動している画家8名の作品を紹介し、彼らの作品を通して韓国における現代東洋画を考えます。
韓国の現代東洋画を論じるには、それが二重三重にも捩れている点を捉える必要がある。一つ目は、ファインアートと民俗画。二つ目は過去と現在、そして三つ目は日本と韓国である。書画の切り離しのように、美術という言葉が用いられはじめ、実用性と鑑賞対象に価値の基準が振り分けられた。これらは時代を経ながら、さらに絡み合ってくる。西洋から抽象表現主義などの最新の動向が輸入されたことで、東洋画(日本画/韓国画)は美術史上でアップデートを求められてきた。また一方で、国粋主義や革新を志向する上で、それらは政治的な介入を受けたり、道具として活用された。
西洋対東洋の構図で考えるよりも遥かに、日本と韓国は密接に関わってきた。一つ目と二つ目は、韓国という場において日本の領土的/政治的介入によってはじまった。20世紀を迎えて間も無く日本(大日本帝国)の植民地となった朝鮮半島では、公募展の審査基準、留学先の日本における美術の動向など、アーティストの活動に影響を及ぼしていた。そして日本の終戦(敗戦)、韓国からすれば「解放」を迎えた以降も、三つの捩れは解消されることなく、続いている。「解放」後、絵画における「日本」らしい表現(郷土色や倭色)の清算、先進性への高まりによって掲げられた抽象表現=東洋の精神、墨の黒さではなく色彩感としての民族性の探求、ソウル・オリンピックという舞台を前にして掲げられた「現代性」、そしてグローバル化の最中のアプロプリエーション。激動の近代期から今日にかけてまで、三つの捩れは「韓国画」とも「東洋画」ともジャンル分けすることが難しい韓国画/東洋画の現状を表しているだろう。
本展には8名のアーティストが参加する。8名は、近年韓国内で精力的に活動している「画家」である。東洋画/韓国画を専攻した者もいれば、西洋画を専攻した者もいる。壯紙に描かれた作品もあれば、アクリルで描かれた作品もある。(作品や作風の紹介は、下に続く参加アーティストの情報を参考にしていただきたい。)ここで「画家」たちは、(先に述べたような)過去これまで「東洋画」や「韓国画」というカテゴリーに負わされていた使命から解放されている。だからと言って、「西洋の韓国的解釈」や「過去の現代化」という見た目ばかりの追従(=アプロプリエーション)とも距離をとっている。出展作の中には、一見すると、モダニズム絵画にも見えたり、単なる引用や借用に見えるものもある。しかし、これまで東洋や国家主義、さらには東西の融合=現代性などのアイデンティティを背負わされた歴史を踏まえると、出展作は東洋画/韓国画を規定する枠を越えようとしていると言えないか。それだけでなく、その枠を再検討する試みとして、評価できないだろうか。
企画展のタイトル『韓国画と東洋画と』の後に続く単語は、「西洋美術」かもしれない。もしくは、「抽象」や「具象」、「起源」や「特異性/オリジナリティ」かもしれない。または、支配していた「日本」や先進国入りを目指した「大韓民国」かもしれない。韓国画と東洋画を同一視するのではなく、広い視座から考えられるように、もう一つの軸を掲げること。そうすることで、韓国画と東洋画を分かつ起点は勿論のこと、日本や西洋、国家と個人(アーティスト)との歴史的・社会的・政治的関わり方の中で、見えてくるものがあるだろう。最終的には、単なる「融合」や「ミックス」に落ち着くことなく、定義して/されてきた「韓国画/東洋画」と(いう枠組み)の別れを告げることにも繋がるだろう。(紺野)
紺野優希
現代美術批評家・キュレーター。ソウル・弘益大学芸術学専攻卒。日本と韓国を拠点に、評論の寄稿、美術関係の通訳、翻訳活動などを精力的に行う一方、企画展のキュレーションにも携わる。これまでにキュレーション担当・協力した企画展に『アフター・アフター・10.12』(ジョン・ユジン、杉本憲相、Audio Visual Pavilion、韓国ソウル)、ソウル・フォトフェスティバル『素敵な新世界』、特別企画展『Walking, Jumping, Speaking, Writing. 境界を、 ソウルを、 世界を、 次元を. 경계를, 시간을, 세계를, 차원을. 신체는, 링크는, 언어는, 형태는.』(SeMA Storage、韓国ソウル、2018)、『新生空間展: 2010年代の新しい韓国現代美術』(カオス*ラウンジ五反田アトリエ、2019)、『韓国からの8人』(パープルームギャラリー、2019)、パク・ジヘ個展『Lepidoptera』(FINCH ARTS、2021)、『HOI-POI:Korean & Japanese Contemporary Painters』(FINCH ARTS、SPACE Four One Three、2021)などがある。GRAVITY EFFECT 2019 美術批評コンテスト次席。
出展作家
※出展作家の詳細についてはギャラリーのホームページをご確認ください。
展覧会概要
期間 | 2022/06/03(金) 〜 2022/06/28(火) |
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会場・開催場所 | FINCH ARTS |
時間 | 13:00~19:00 |
休館日 | 月~木曜日(会期中の金・土・日のみオープン) |
料金 | 無料 |
注意事項等 |
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お問い合わせ | TEL:080-1351-9467080-1351-9467 |
info@finch.link | |
ホームページ | http://finch.link |
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