Exhibitions展覧会

鬼海弘雄 写真展「この人を見よ Ecce Homo」

東京・浅草に訪れる人々を撮影した肖像写真シリーズ等で知られる写真家、鬼海弘雄(きかい・ひろお/1945-2020)の展覧会です。本展では、鬼海が残した肖像写真から選りすぐった作品を「一人と向き合う肖像写真展」として展示します。


すべての人間は、肉体をもって生まれてくる。
そして他者と出会うとき、最初に認識されるのは、その身体である。
一方で私たちは、「人は外見ではない」「見かけによらない」と語り、心と身体を切り離して考えがちでもある。
外見によって判断されることに、抵抗を感じる人が多いのもまた事実だろう。
しかし、人の思考や感情、日々の習慣が長い時間をかけて身体に刻まれていくとき、外見は内面の痕跡を静かに滲ませはじめる。
「Ecce Homo(この人を見よ)」 それは、新約聖書において、苦しむ人間としてのキリストが群衆の前に示されたときに発せられた言葉である。
ローマ総督ピラトが民衆の前で「この人を見よ」と指し示したその人物は、果たして神なのか、それとも鞭打たれ、いばらの冠をかぶせられた一人の人間にすぎないのか。
この呼びかけは、目の前にいる他者を見るという行為そのものを問い返すものであり、14世紀以降、多くの画家によって繰り返し描かれてきた主題でもある。
では、肖像写真はどこまで一人の人間の時間を写し取ることができるのだろうか。
写される姿と内なるものは一致するのか、それとも乖離したままなのか。
写真に写るのは、その人の現在の姿でありながら、そこには過去の時間の痕跡が重なっている。
一枚の肖像の前に立つとき、私たちはその人物の職業だけでなく、日常の振る舞いや声の調子、手の動きに至るまでを想像してしまう。まるでその人の人生が、次々と立ち現れてくるかのように。
写真家の鬼海弘雄は言う。「ポートレートは時間。その人が来た時間、これから行く時間を撮るんだよ。それは内面性と言ってもいい。そうしたら、情報の少ないモノクロで、背景は無地に行き着いたんだ」
鬼海は東京・浅草寺で、1973年以来、無名の人々を40年以上にわたり撮り続けた。
彼もまた、人間の中から滲み出る時間を写すことにに情熱を注いだ写真家である。
この展覧会は、ただ一人と向き合うことから始まる。
そしてそのとき、見ているのは他者なのか、それとも自分自身なのだろうか。

鬼海弘雄

1945年山形県生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。トラック運転手や造船所の工員、遠洋マグロ漁船の乗組員など様々な職業を経て写真家の道へ。1973年より東京・浅草寺に訪れる市井の人々を被写体とした『PERSONA』シリーズで脚光を浴びる。本シリーズは45年間にわたって続いた。その他、独自の視点で街を映した『東京迷路』シリーズなどで知られる。
主な受賞歴にAPA賞特選、日本写真協会新人賞、伊奈信男賞、第23回土門拳賞(2004)、第36回東川賞飛騨野数右衛門賞受賞(2020)など。
2020年75歳で没。

展覧会概要

期間 2026/04/19(日) 〜 2026/05/10(日)
会場・開催場所 LOAF- Laboratory of Art and Form
時間 13:00~19:00
休館日 月~土曜日
料金 無料
注意事項等
  • 本イベントは会期中の日曜日のみの開催となります。
  • 状況により、やむを得ず予定が変更となる場合がございます。最新情報はギャラリーのホームページをご確認ください。
E-Mail info@loaf-jp.com
ホームページ http://www.loaf-jp.com

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