Exhibitions展覧会

大学で始めて塑像制作を体験した１８の時、 作品と呼ばれる物体の内側が多くの場合空洞であることに驚愕した。 高校時代、多くの時間を過ごした図書館脇で、 戦後五十年の鈍い空を背景に四角い雪をその背に負うたコンクリート製の “考える人”も、酸性雨に打たれ鼻がもげ、 そこから二十世紀の空虚を覗かせるヨーロッパの銅像も、すべからくあらゆるモノが、 そのカタチに必然的に空虚を内包しているのだと感じたのだ と、 齡五十を前にして思う。（藤田）

昨年に引き続いての開催となる、藤田マサヒロの個展です。
藤田マサヒロは、社会や人体の表層を剥ぐような表現を通して、 その裏側や内側に潜む何かを提示してきました。
昨年の個展では、自身の顔を型取りしたものの“裏表”に スーパーリアルに顔を再現し、 3次元認識の限界を突きつける彫刻作品としての面白さのみならず、 顔認証を含めた社会的な問題をも考えさせました。
今回の個展では、表現活動の出発点であるロダンの「考える人」の 背中を型取り量産したものを素材に、本体を失い、 始まりも終りもない空間を生み出す構想です。 ご注目頂ければ幸いです。
 

藤田マサヒロ

1963年 滋賀県生まれ。現在、滋賀大学教育学部芸術表現教育 准教授。

【主な展覧会】
2003年 越後妻有トリエンナーレ
2012年 KUNSTARZT preview 新風館
2013年 個展「カタチは表装を纏っている」（KUNST ARZT）