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アートを支えるひとたちのことば。

今回は、切り絵作家である川那辺 風雅さんにお話しをお伺いしました。デザイン学科を卒業して、その後切り絵作家として作品を作るようになったという川那辺さん。デザインにとことんこだわって作品を作り続ける川那辺さんの、その作品に込める想いとエネルギーの源に迫りました。

白黒のコントラストに魅せられたんです

――川那辺さんの切り絵との出会いを教えていただけますか。

繊細な作業が必要な切り絵

もともとは成安女子短期大学(現大阪成蹊大学)でポスター等のデザインを勉強していて、切り絵はあくまでデザインの技法のひとつとして少し学んだ程度でした。本格的に切り絵に取り組むようになったきっかけは大学卒業後、切り絵画家である宮田雅之先生の作品と出会ったことでした。作品を見た瞬間に背筋に戦慄が走ったというか、それぐらいの衝撃を受けたんです。それ以来、鋭く冷たい刃物から優しく美しい作品が生まれる切り絵の魅力の虜になって、今もずっと作品を作り続けています。

デザインは、夜中に夢に見て飛び起きて描くこともあります

――作品づくりの中で特に難しい点はどこですか

真剣な眼差しで作品に取り組まれる川那辺さん

切り絵は絵画とは違い、初めにデザインをきっちりしてからでないと作品づくりを始められません。どこを切り落としてどこを残すのか、白と黒のバランスをイメージしながら全体の構成を考えます。下絵を描いてからは割とあっという間なのですが、構成を考えるのにものすごく時間がかかるんです。時には数ヶ月考え続けたり、夢の中でイメージが浮かんできて飛び起きて描くこともあります。 今は切り絵のデザインを、Tシャツやポストカードにしてみやこめっせの地下のミュージアムショップ「京紫苑」で販売していただいています。外国人の方がお土産に買っていかれることがけっこう多いようですね。切り絵そのものは、室町の着物問屋、市原亀之助商店の中にあるギャラリーで販売していただいています。(※) 今時珍しいぐらいの昔ながらの京都らしい町屋のお店で、素敵な所ですよ。

(※作品の鑑賞をご希望の場合は、市原亀之助商店様へ事前にお問い合わせください。)

長年もの間、切り絵を続けてきた理由

――デザインのアイデアはどういった所から生まれるのですか

普段は何でもない風景、例えば橋から川を眺めた瞬間や、木の根元に咲いている桜を見た瞬間などに、ふっと「これを作品にしたい」と思って作品づくりを始めたりします。でも今は人から依頼を受けて制作することがほとんどですね。例えば結婚祝いのプレゼントとか、縁起物をモチーフにした作品とか。

――今まで数多くの作品を作られていますが、中でも印象的な作品はありますか

琵琶湖周航の歌カレンダー(2012年)

特に苦労した作品は、といっても苦労半分楽しみ半分なんですけど、「琵琶湖周航の歌カレンダー」です。京都大学の漕艇(そうてい)部のOB会の方にご依頼を受けてから29年間、毎年作り続けています。同じ琵琶湖をモチーフにしながらも、カレンダーをめくった時にぱっと画面が変わったように見せなければならないので、それぞれ全く違うものを作るようにしています。29年間続けていても、新しい作品を作り始める時には京都から滋賀県の浜大津まででも足を運びます。琵琶湖の風に吹かれてから気持ちを切り替えて取り掛かるんです。カレンダーのご依頼は、これまでずっと切り絵を作り続けてくることができた大きな原動力ですね。

長年やってきたことをベースに新しい作品を生み出したい

――今後なにか、取り組んでみたい作品等があれば教えていただけますか

川那辺さんの作品

今、自分はちょうど転換期に来ているなと思うんです。長年やってきたことをベースにしつつ、従来のやり方を変えて新しいことに取り組んでいきたいと思っています。その試みとして、今は立体作品に取り組んでいます。最近は美術品を額に入れて壁に飾る時代ではなくなってきたようですし。今構想中なのは、切り絵の手法を使った作品を立体的に配置して、ライトを当てて影絵を作り出す作品です。インテリアに使ってもらえるようなものとか、なにか立体で楽しいものが作りたいなと思って。今は一生懸命やるだけです。

 


作品フォトギャラリー

一度作品に向かい始めたら食事を摂るのも忘れるほど没頭してしまうという川那辺さん。「好きだから作り続ける」という、作品づくりの根源にあるシンプルな想いが伝わってきました。

川那辺さんの作品は、ご自身が「刀彩画」とも呼んでいらっしゃるように、一般的な切り絵のシャープで暗めのイメージとは違い、色鮮やかなものが多いのが印象的。長年多くの作品を生み出しつつ、「まだまだ新しいことに挑戦したい、楽しいものを作りたい」と笑顔で話される様子に、こちらもわくわくしてしまいました。

今後の新しい取り組みもとても面白そうで、次の展示会が楽しみです。

お忙しい中、お時間をいただいた川那辺様に、この場を借りてお礼を申し上げます。

【今回お話を聞いたひと】

川那辺 風雅さん(切り絵作家・グラフィックデザイナー)

成安女子短期大学(現・大阪成蹊大学芸術学部)意匠科/ヴィジュアルデザイン科卒
・花鳥風月を作品のテーマとしており、切り絵を使ったのれんやTシャツのデザインも手掛けている
・琵琶湖の様々な姿を描いた「『琵琶湖周航の歌』カレンダー」は1985年創刊よりライフワークのひとつとなっている
・NHK京都文化センター、滋賀県立滋賀会館等の切り絵教室にて講師を務める

■個展「琵琶湖周航の歌」カレンダー原画展
   滋賀会館 文化ギャラリー 1997年・2000年・2002年(3回)
   京都北山 京額ギャラリー「コルニーチェ」2003年・2004年(2回)
   大阪 ギャラリー「さんびーむ」2003年
   高知県いの町 紙の博物館 2006年
他多数の展示会を催す

【展覧会情報】

京の額屋の遊び心展

京都の額屋「京額」と、川那辺風雅さんをはじめ様々なアーティストの方々とのコラボレーションによる展覧会。

「京の額屋に生まれガクヤで育ち、?拾年。ようやく少し皆様に見て頂ける品々、沢山の方にお手伝いも願い出来上がります。
『京の額屋の遊び心展』、お時間の都合にてお立ち寄りください。お待ちしております。」
京額 岩滝絵美子

■ 会期
2012年8月29日(水)~9/2(日)
■ 会場
和風スタイルの京町家ギャラリー ぱるあーと
TEL:075-231-5479 (11:00〜18:00)
住所:京都市上京区西洞院通丸太町一筋

展覧会情報を見る >>



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