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京遊×橋本関雪記念館 白沙村荘の庭から 第十六回

京遊×橋本関雪記念館 白沙村荘の庭から 第十六回  京都市左京区白沙村荘橋本関雪記念館

京都には大小さまざまなミュージアムがありますが、その中には現在も人が暮らしている家の一部をそのまま公開しているようなところもあります。そんなミュージアムのひとつが、日本画家・橋本関雪の建てた邸宅である白沙村荘 橋本関雪記念館。その副館長で関雪の曾孫である橋本眞次様に、普段はちょっと分からない、美術館での日々を徒然と綴っていただくコラムです。

関雪が東山山麓に描いた壮大な山水の全体像

「今から100年前の1914年、当時は水田の広がっていたこの場所に
橋本関雪という日本画家が屋敷を営み始めました。」

いつも庭園を見学される方々にお話をする時はこのように話し始めます。

100年というとそんなに昔のことではないながら、一応最初の大きな節目でもあるので意識をしつつ様々な計画を立てていました。建物の改修であるとか、庭園の復旧であるとかそして美術館の建造であるとか。

建物や庭園は実際に遺されているものが目の前にあって、それは関雪の「作品」と言える物ですから、大きな変更をせずに耐久性を戻していくという作業です。傷んだ木材を交換する、弱体化した壁面を塗り直す、割れた土間を直す。人によっては無理に新しく手を入れる必要は無いという意見もありますが、今からの100年を無事に越せるようにと思えば必要なメンテナンスなのだと思います。

お陰様で工事は半分以上完了し、白沙村荘の建物たちは建造当時の輝きを取り戻しました。まだ残されている正門や主家の工事が、2016年の関雪移住100周年に向けて進行しています。

美術館の建造については、関雪の自筆図面みたいなものが残されているのですがディティールも曖昧であり、特に建築基準などが戦前と今では大きく異なります。試行錯誤の末に今現在建設中の形に行き着きました。木が使えないという時点で、庭園内の建物とのバランスを完全に取ることは非常に難しいのですが、壁面の色調や周辺の植栽などで違和感を軽減する調整を行っています。

現時点では2014年9月9日に内覧会を、10日から一般オープンを予定していますので言っている間に概要は知れてくるものと思います。私としてはこの美術館の完成によって、橋本関雪が当初計画していた白沙村荘の最終形が見えてくるのではないかと考えています。美術館から見える白沙村荘の庭、そして遠くに眺む東山の借景。これこそが関雪が東山山麓に描いた壮大な山水の全体像なのではないか、そう思うのです。

施設情報

白沙村荘(橋本関雪記念館)
京都市左京区浄土寺石橋町37
公式ホームページ

施設の概要はこちら

著者プロフィール

橋本眞次(はしもと・しんじ)
1973年、京都生まれ。
大正・昭和にかけて活躍した日本画家、橋本関雪の曾孫にあたる。
23歳の頃、関雪に興味を持ち父の仕事を手伝いながら資料編纂などに携わる。
現在は白沙村荘 橋本関雪記念館の副館長として活動中。

公式ブログ「京都の庭ブログ」はこちら↓
http://hakusasonso.kyo2.jp/

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