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京遊×橋本関雪記念館 白沙村荘の庭から 第五回

京遊×橋本関雪記念館 白沙村荘の庭から 第5五回 京都市左京区白沙村荘橋本関雪記念館

京都には大小さまざまなミュージアムがありますが、その中には現在も人が暮らしている家の一部をそのまま公開しているようなところもあります。そんなミュージアムのひとつが、日本画家・橋本関雪の建てた邸宅である白沙村荘 橋本関雪記念館。その副館長で関雪の曾孫である橋本眞次様に、普段はちょっと分からない、美術館での日々を徒然と綴っていただくコラムです。

関雪作品の所在について

まともに揃った数の代表作を見たい。
でも、それを叶えるには中々難しい理由があります。

白沙村荘を訪れるお客様から「絵はどこで観られますか?」とよく質問を受けます。


もちろん白沙村荘の展示室にも季節ごとに展示を換えながら、関雪の作品などを展示していますが小規模なものなので「たくさん絵を観たい」という人には不十分なのでしょう。こちらの収蔵点数は資料も含めて3000点以上あるので展示規模の拡大をすれば要求はある程度満たせますが、今度は入館料が高くなること間違いなし。しかしながら「代表的な作品を見たい」という要求については、中々それを満たす事は困難でしょう。その理由は関雪の代表的な作品の大半を国が所蔵しているからに他なりません。

玄猿 玄猿(東京芸術大学資料館蔵)

「国が所蔵しているのなら、公開の機会は多いのでは?」と思うかも知れませんが、それが何故だか全然出てこないのですよね。
教科書にも載っていた「玄猿(1933)」に関して言えば先日奈良の松柏美術館で展示されたのが約15年ぶり、平成7年の加古川での開催が最後でした。たしかそれ以降にも上野の森美術館で展示はされていましたが、ごく僅かな期間であったと記憶しています。京都国立近代美術館においても「意馬心猿(1928)」が8年前の午年の元日に展示されていると聞き、3日に見に行くと既に引っ込められていました。2日間のみ展示されていたようです。

作家の名前がマイナーなものになっている原因。それは作品が展示されている事が少なく、知る機会が無いことに起因していると思います。

こんな調子ですから、まともに揃った数の代表作を観覧というのは難しいわけです。
橋本関雪といえば大正・昭和期の東西の画壇において重要な画家の一人であり、その画技は継承こそされなかったものの大きな足跡を日本画壇史に遺すものであったと考えます。彼の描く動物そして新南画・新古典の作品群は非常に高い評価を受け晩年には文部省、宮内庁などの買い上げが盛んに行われていました。
ですから各国公立の美術館に下った作品についても、もしかすると「御物」としての扱いを受けているのでしょうか。あまりに出なさすぎるように思うのですが。



唐犬図 唐犬図(大阪市立美術館蔵)

現在橋本関雪の名前はメジャーとは言い難くどちらかと言えばマイナーなものです。その原因は関雪の作品が展示されている事が少なく、知る機会が無いことに起因していると思います。

関雪作品を所蔵している美術博物館を少し紹介してみますと、展示が期待できる館としては大阪市立美術館(大阪)、姫路市立美術館(兵庫)、足立美術館(島根)、川村記念美術館(千葉)、古川美術館(愛知)でしょう。
他に展示は稀ですが所蔵している館というと先述の京都国立近代美術館(京都)と宮内庁三ノ丸尚蔵館(東京)、上野の森美術館(東京)、そして兵庫県立美術館(兵庫)などでしょうか。美術博物館ではない場所ですと、建仁寺(京都)や衆議院(東京)にも作品はあります。

これらの作品を一同に観る機会といえばやはり展覧会しかありません。昨年に行われはしましたが橋本関雪という画家の部分的な紹介に留まっている気がしますので、もう少し穿った内容の展示が出来れば一番良いのですが。


出来れば2015年が関雪没後80年にあたりますから、その辺りでやれないかと真剣に考えています。



 

施設情報

白沙村荘(橋本関雪記念館)
京都市左京区浄土寺石橋町37
公式ホームページ

施設の概要はこちら

著者プロフィール

橋本眞次(はしもと・しんじ)
1973年、京都生まれ。
大正・昭和にかけて活躍した日本画家、橋本関雪の曾孫にあたる。
23歳の頃、関雪に興味を持ち父の仕事を手伝いながら資料編纂などに携わる。
現在は白沙村荘 橋本関雪記念館の副館長として活動中。

公式ブログ「京都の庭ブログ」はこちら↓
http://hakusasonso.kyo2.jp/

「白沙村荘の庭から」過去のコラム


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