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2012.01.29(Sun)
平山健宣さんとお会いして考えたこと 『表現をし始めるとき』
「ゆるめ~る」のねらい
第一回目の「ゆるめ~る」インタビュー、いかがだったでしょうか。
連載を始めるにあたって、「ゆるめ~る」のねらいを簡単に紹介します。詳しくは、Aboutページに思いを書いたので、興味のある方は読んでいただけるとうれしいです。
考えてみたいのは、「表現すること」をめぐって、たとえば、次のようなことです。アーティストは、どんなふうにして表現世界に入り込んでいけるようになったり、そのために必要なネジをゆるめたり、自分なりのテーマをみつけたりしていくのか。
「ゆるめ~る」では、そんな疑問をもちながら、「ゆるめる」を一つのキー概念として、アーティスト・インタビューをしていきます。なにか表現をしたい人にとってヒントになるようなことを、アーティストの方々と一緒に探っていきたいと思います。
平山健宣さんとお会いしてみて
平山さんには、なんとなく、庶民派アーティストという印象が残りました。世の中には、もともと個性的で独特なものの見方をする、根っからの突き抜けたアーティストという感じの人もいますが、平山さんはその対極にある存在かもと感じます。
親しみやすくて、一見、普通の人っぽいです。ポートレート写真を撮らせていただこうと、カメラを向けると、途端に肩に力が入ってしまうようなところにも、親しみを感じてしまいました。
それにしても、独学の勉強からデザインの道に入ったという経歴には驚きました。そのことに、自分もやればできるかも、と励まされる読者の方がいるといいなぁ、と思います。
以下では、そんな平山さんの語りをもとに、表現を始めるとき、おそらく、多くの普通の人が経験する通り道について、考えてみます。
未知の一歩を踏み出す怖さと勇気
平山さんのお話をきいて感じたのは、表現をし始めるとき、やったことのない一歩を踏み出すのは、やっぱり、怖いし勇気がいるということです。
その怖さとは、子どもの頃に初めて自転車に乗ったとき、初めてプールに入ったときのそれと、通じるところがあるかもしれません。後からできるようになってしまえば、どうってことなく平気だけれど、やっぱり最初はおそるおそるだった。そういう感じが平山さんから伝わりました。
たとえば、インタビューのなかに、最初の展示会で「ギャラリーの壁に額縁を描くなんていう暴挙に出た」という語りがあります。この「暴挙」ということばには、え?こんなことまでしていいの!?という驚きや戸惑いが込められています。
この怖さとはどんなものなのでしょうか。アートでは、なにをどんなふうに表現しても「自由」。とはいうものの、私たちは既成概念や日常のパターンから安心感を得て生活しています。そういった既存の枠組みを一歩踏み越えるときには、安心感を手放して、慣れ親しんだ拠り所から離れるっていうことを同時にしなければならないのだと感じました。
既存の枠組みとは、結局は、自分が勝手に捕われている殻のようなものなのかもしれません。この殻を抜け出したくて、表現活動と向き合っている人も多くいることでしょう。自分の殻がひとつ破けた瞬間とは、きっと、うれしい感じがすることが多いと思うのですが、自分が本当にやりたいことが見つかって、新しい自分になれた感じがしたり、自分に納得できる瞬間だったりします。
おもしろいのは、そうやって一つ枠組みを踏み越える「暴挙」を経験すると、つぎの機会ではその経験に後押しされて、少し「自由」に表現できる感じがもてることです。普通の感覚を出発点にして、少しずつ表現の世界へ入って行く道のりとは、幾度となく、枠はずしや枠越えを積み重ねながら、怖くも生き生きとした瞬間をくぐり抜けていくものなのではないかと。
私は、こういった営みに、「ゆるめる」というイメージがとてもフィットするように感じています。みなさんはどうでしょうか。
コミュニケーションは表現への道を支える
インタビューから、平山さんは、コミュニケーションをとても大切にしているアーティストであると感じました。そこから、考えたくなったことがもう一つあります。それは、表現活動に伴う、いろいろなコミュニケーションの重要性ということです。
もちろん、表現活動は、誰かになにかを伝えようとすることなので、そこにはコミュニケーションの要素が当然、入っています。アーティストは、展示会のお客さん、表現の受け手が送ってくれた感想に、手応えやよろこびを感じます。それはきっと、表現者から発せられた表現が、一方通行のものではないと分かり、双方向的なやりとりを実感させてくれるからですね。
そういったコミュニケーションのほかに、表現者同士のコミュニケーションの意義ということについても、考えてみると発見がありそうに思います。
平山さんの場合、表現を始めていく道のりは、先輩アーティストの後押しや助言に支えられています。それから、師匠との関係のなかで、学んだり自問したりということがあります。さらには、そういった重要なアーティストとの関係を取り囲む、アーティスト・コミュニティがあることでしょう。
表現活動における枠はずしや枠越えが、怖さや不安を伴いながらも進めていける背景には、多くの場合、アーティスト同士のつながりやコミュニケーションがうまく機能しているということがあるのではないでしょうか。まだよく分かりませんが、着目して、もう少し考えてみたいです。
「ゆるめ~る」では、こんなふうに、アーティスト・インタビューをもとに、考察のタネをまいて育てていきます。よろしくお願いします。
(文:中野祐子)
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