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【内覧会レポート】美人のすべて~初公開、松園の「雪女」(福田美術館)

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嵐山の福田美術館で2020年1月29日より開催の「美人のすべて」展の内覧会に行ってきました。

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今回のテーマは「美人画」。
「容姿や装い、感情の動きや内面から醸し出される美しさなど、さまざまな観点から女性の魅力を描いた絵画」(プレスリリースより)のことです。江戸時代から女性を主題とした絵は描かれてきましたが、「美人画」として確立したのは明治以降のこと、日本画の重要なジャンルとなり、多くの画家が絵筆をふるいました。

なかでも特に知られるのが、京都を代表する日本画家・上村松園です。
松園は女性がまだ職業画家として生きることが難しい時代にあって、独自の美人画で道を切り開き女性初の文化勲章受章者となった、美人画の第一人者。
今回はその松園の作品を中心に、同時代の他の画家たちや松園に続いて活躍した女性画家によるさまざまな美人画を一堂に集めた展覧会となっています。

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今回は松園の作品はまだ初々しさの残る若年期から、美人画を通じて理想の美を描き続けた円熟期までが揃います。

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こちらは若描きの頃の作品「四季婦女図」。女性たちの着物で春夏秋冬を表したもので、色や文様の取り合わせの工夫を楽しめます。松園自身も楽しんで着物の柄を描いているような感覚が伝わってきます。

着物は「美人画」の見どころのひとつ。
着物の柄はもちろんのこと、生地の質感、色柄の取り合わせ、帯の結び方など、どれも松園のこだわりが感じられます。もちろん今見てもお洒落で素敵なものばかり!
また、人物の年頃や絵に込められた物語や背景事情も、人物の仕草や表情と着物の組合せから読み取ることができます。

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例えば、この「姉妹之図」は、髪型や装いから、一番奥がもうお嫁に行っている長女、真ん中はまだ未婚の次女、手前が幼い末っ子とわかるように描き分けられています。帯の結び方も末っ子は大きく華やか(リボンみたい!)で可愛らしいです。

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こちらは「しぐれ」。雨上がり、ふと目に入った紅葉に目を奪われて傘を閉じる手を止めてしまった美人の姿。すっと惹かれた眉と視線の織りなす表情がなんとも上品です。
空色の着物と赤の帯の組合せは松園は好きだったのでしょうか?他の作品でもしばしば見られます。
白い襟や襦袢の地紋様までしっかりと描かれ、下から覗く赤がアクセントになっています。
地紋様は写真ではわかりにくいので、ぜひ実物を見て欲しいポイントです。

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そんな中でひときわ目立つ異色作が、この「雪女」。
雪の中で命を落とした女性が、魂だけになっても想い人を救おうとする「雪女五枚羽子板」という浄瑠璃(近松門左衛門作)に材を得たもので、版画の原画として描かれた作品。今回が初公開となる展覧会の目玉です。

華やかな着物姿の美人図が並ぶ中、ぼんやりとした白い影のように描かれた女性の姿は松園作とは思えないほど異彩を放ちます。しかし、うっすらと描かれた顔や髪の影、輪郭や着物を纏っていることのわかるシルエットは確かな美しさも感じさせます。彼女の魂をも、少ない色数だけで描き出した松園の力量が伝わります。

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なお、今回の展覧会は表具にも注目。
実際の着物の生地を転用したもの、丁寧に刺繍を施したものなど、こちらも華やかです。
前述の「雪女」も一見地味に見えますが上下に大変細かな鹿の子絞り、風帯や絵の縁を飾る一文字はお揃いの織紐のような生地で飾られ、手が込んでいます。
絵と表具のコラボレーションも楽しみながら鑑賞してみるのもおすすめですよ。

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松園以外の作家による美人画も見どころ。松園とはまた違う個性が感じられます。
こちらは木島櫻谷の「婦女図屏風」。動物画で知られる櫻谷としては珍しい作品で、こちらも長く所在不明になっていたものだそう。左右に庶民と富裕層の女性を描き分け、それぞれの持つ異なる美しさを表現しています。立ちと座り姿勢の対比も、画面にリズムが感じられます。

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こちらは山川秀峰の「振袖物語」。美少年と彼への叶わぬ恋に焦がれ涙する娘たちの姿を2幅の掛軸で描いた大作。美少年の向ける思わせぶりな視線には、思わずこちらもドキッとさせられてしまいます。
美少年の纏う赤い振袖と娘たちの青ベースの着物の対比も見事。柄も、美少年の振袖にはおどろおどろしい火車が描かれているところ、不穏さを暗示させます。娘たちの装いは下の襦袢の色を白い着物に透けさせていたり、帯は絵具に雲母が混ぜられているのかキラキラとしたラメ感を表現したり、工夫が感じられます。じっくり眺めたい作品です。

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2階展示室には江戸時代の浮世絵(肉筆画)など、明治の美人画以前の作品も。女性たちの装いや着物の着方ひとつにも当時の風俗や流行が表れています。

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江戸時代に活躍した円山派の絵師・山口素絢(そけん)の「やどり木」。旅の途中らしい女性の姿を描いています。動きやすいように着物を腰に巻いた布でたくし上げています。この頃は現在のように着る際におはしょりを作らなかったので、長いまま着た着物を布をひも状にしてたくし上げ、丈調節していたのだそう。(他の江戸時代の女性を描いた作品でも似た装いが見られます)
布の色合わせや上着の襟もとの柄におしゃれ心が感じられます。

女性の見かけの美しさだけではなく、日々のお洒落を楽しむ姿であったり、何気ない生活の息遣いで合ったり、内面に秘めた想いであったり、さまざまなものを絵から読み取ることができる「美人図」。その楽しみ方を多彩な角度で味わえる展覧会でした。

開催は3月8日まで。

■ 展覧会の詳細はこちら

美人のすべて~初公開、松園の「雪女」


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