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【DWK2019|OPEN FACTORY】見学レポ《2》三浦仏像彫刻所(仏像制作・修復)

2019/03/15

DESIGN WEEK KYOTO 2019|工房見学レポート
「京都をよりクリエイティブな街に」をコンセプトに、京都在住の職人やクリエイター有志により開催されているプロジェクト「DEDIGN WEEK KYOTO」。
今年も1週間限定で実際のモノづくりの現場を公開するオープンファクトリー企画を開催されました。

DESIGN WEEK KYOTOに広報協力している「京都で遊ぼうART」では、そのうち4つの工房をスタッフが実際に見学!その様子を改めて、少しですがご紹介します。

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【2】三浦仏像彫刻所(仏像制作・修復)

DSCF2289.jpg2件目は「三浦仏像彫刻所」の三浦耀山さん。木彫仏像の制作や修理を行う仏師さんです。

場所は京都市役所にほど近い一角。京町家の奥に工房があります。
玄関から工房までの周辺には、材木が山と積まれていました。

仏像には金属性の鋳造仏像や塑像(粘土で造った像)、乾漆像(麻布を漆で塗りかためた張子形式の像)など様々ありますが、仏像が大量に求めらられた平安時代からは数が作りやすい木彫が中心となりました。現在新たに作られる仏像も殆どが木彫で、三浦さんも木彫を専門としています。

DSCF2166.jpg木の種類は加工しやすく香りも良いヒノキを中心に、ケヤキ、カヤ、クスノキ、カツラなど多彩です。仏像修復の際には元の仏像と同じ素材の木が必要になるほか、お客さんから素材を指定されることもあるので、様々なオーダーに応えられるよう常に多くの種類をストックしているそうです。
また、木材はそのままでは中に水分が残っていて加工に適さないため、2,3年以上は乾燥させなければいけません。そのため常に周辺は木材が山積みの状態だとか。

「大きなものや古くて良い木ほど早い者勝ちになるので、材木屋さんで良い木を見つけるとすぐに購入してしまうんですよね」と笑う三浦さん。

DSCF2214.jpg工房に足を踏み入れると、木の良い香りが部屋いっぱいに漂っていました。
工房は材木を像のサイズにカットする加工場と、彫刻作業をする部屋に分かれています。
現在はお弟子さんと2人体制で作業されているそうです。

DSCF2194.jpg壁には図面(設計図)や資料写真がびっしり!図面は基本的に全て手描きだそう。この図面を基に仏像の大まかな形や大きさを決め、パーツごとに材木をカットし組み合わせていきます。

これは現在の仏像の主流である寄木造の手法。一本の木から彫りだす一木造の場合、仏像がすっぽり収まるほどの大きな木が必要となりますが、大きな材木は手に入りにくいこと、そして小さな木材まで無駄なく使うため、寄木造が主流となっていきました。また、頭や腕などパーツごとに分けて制作することで、各部位を複数で分担して作業でき、より効率もあがるそうです。

DSCF2224.jpg「木材には限りがありますから、手持ちの木を見て、どの木をどのパーツに、どのように組み合わせるか考えるところも、腕が問われます」

この仏像の場合、左右の腕と頭・体の前半分・後ろ半分でパーツが分かれています。体を前後に分けることで内側をくりぬき、軽量化も図られています。内側にお経などを収めることもあるのでこのような作りになっているとか。
DSCF2191.jpg他にも仏像として製作する仏様の種類はおおよそ決まっているため、予め如来用・菩薩用など種類ごとに共有できるベースパーツを作っておくことで、さらに効率アップを図っているそうです。(写真は仏像の後ろにつける光背。これを細かく彫り込んだり透かしを入れたりして仕上げます)

DSCF2227.jpgのサムネール画像また、非常に大きな仏像を作る際にも、どのようにパーツを組み合わせるか、作業手順をどうするかを考えるため、まず同じ形の小さな仏像を同じような手順で作成するそう。大きな建物を作る前に立体模型を作るのと同じ発想です。

芸術としての側面を強く見られることの多い仏像ですが、同時に職人が作る工芸品でもあることを感じました。


木材を切り出し、パーツ分けが完了すると、図面を木に写し、いよいよ彫りの作業に入ります。

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箪笥一杯に収められた彫刻用の刃物はなんと数百種類!1㎜程の細い彫刻刀から、カンナのような大きなものまで揃っています。普通の彫刻よりも使う道具の数は多いかもしれません。

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こんな指先サイズのカンナも!これは「豆カンナ」というそうで、仕上げ作業に使います。

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なんと仏像の仕上げにはヤスリは使いません。全てを彫り・削りで仕上げるのだそうです。
紙やすりで表面を磨くとどうしても木肌が粉を吹いて白っぽくなってしまいます。これを防ぐため、手間はかかりますが丁寧に豆カンナなどで表面を削ることで、つるりと滑らかな肌を創り出しています。
カンナがけも普通は引くところ、押して削ります。実際に見せて頂くと、仕上がりの違いは一目瞭然でした。

DSCF2211.jpg「昔は仏像に後から彩色をしたり漆を塗るなどしていたので、継ぎ目や木肌もあまり気にせず、木組みも大胆で自由でした。しかし、今は木の質感がわかる無彩色の作品が好まれるので...できるだけ継ぎ目が目立たないように、木目が美しく出るように神経を使っています。仕上げが一番大変な作業ですね」

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日々新たな仏像の製作や、持ち込まれた仏像の修復に勤しんでいる三浦さん。

そんな三浦さんが近年取り組まれている新しい試みが「ドローン仏」(!?)です。

DSCF2277.jpg小型ドローンに小さなマスコットサイズの仏様を載せて空中を自動プログラムで飛ばす、というもの。
一見荒唐無稽に感じますが、これにはとてもまじめな理由が。

「人が亡くなる際に空から仏様、阿弥陀如来様が雲に乗ってお迎えにくる「阿弥陀来迎図」という仏画があるのですが、それを再現しようという試みです。元は仏像や仏画も仏様の姿をわかりやすく現したものですし、現代の技術で空を飛ばせるようになったならそれを使って仏様の世界をより表現できたらと思って」

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近年では滋賀県のお寺で行われた音と光で仏様の世界を表現した「テクノ法要」に合わせてドローン仏を飛ばし、ニュースにも取り上げられるなど話題を集めたそうです。

"仏教の世界を現す"仏像、その表現の可能性を現代の技で広げようとする三浦さんの姿は、とてもアグレッシブでした。

DSCF2248.jpg三浦さんはこの他にも、3Dプリンターの会社と協力してガチャポンで気軽に手のひらサイズの仏像を手に入れられる「ガチャ仏様」など、仏像に親しみを持ってもらえるようなチャレンジに取り組まれています。
ドローン仏も今後より改良を加えて、色々な場所でお披露目していきたいとのこと。今後の活動にも期待です!

DSCF2251.jpg京都にはお寺も仏像も多数ありますが、制作現場が見られることはなかなかないため、大変貴重な機会でした。
三浦さん、お忙しい中ありがとうございました!

(撮影:浜中悠樹/文:そめかわゆみこ)

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■ DESIGN WEEK KYOTO http://www.designweek-kyoto.com/jp/
■ 三浦仏像彫刻所 http://www.designweek-kyoto.com/jp/store/detail/?id=9

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