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【記者発表レポート】特別展「京のかたな 匠のわざと雅のこころ」(京都国立博物館)

2018/06/11

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2018年9月29日から開催される京都国立博物館の秋の特別展「京(みやこ)のかたな 匠のわざと雅のこころ」の記者発表会に参加いたしました!
昨今ブームの刀剣を京都国立博物館が本気で紹介する一大展覧会、なんと前代未聞のネット生中継も行われるなど注目度の高さとチャレンジ精神を感じられるものとなっていました。
昨今若い女性をはじめブームとなっている刀剣。実は京都国立博物館で刀剣を特集した展示を行うのはその120年の歴史の中でも初めてのこと。また、国立博物館が行う大規模な刀剣展としても、1997年に東京国立博物館で行われた「日本のかたな」展以来21年ぶりの機会となります。

今回の展覧会は、この「日本のかたな」展の京都バージョンという位置づけにしたいということで、「京(みやこ)のかたな」というタイトルになったとか。

展示品の予定総数は刀と関連資料を合わせて約200点。出品予定品のリストもあわせて発表されましたが、現時点でも150点近くの刀剣がラインナップされています!
まだ出品交渉中のものなどもあるようで、今後追加されたりする可能性もあるとのこと。(期間限定展示品などの詳細もまだ未定)最終的にはどれだけの数が揃うのでしょう...こうご期待!

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<続きでは、展示構成と各章の目玉やポイントを紹介!>

展示はオーソドックスな時系列順構成で、京都の刀の歴史をターニングポイントになった時代ごとに区切った章立てで紹介していくようになっています。
また、岩佐又兵衛筆「堀江物語絵巻」や「阿国歌舞伎図屏風」などの絵画資料などもあわせて展示。刀が生まれた各時代の雰囲気や背景事情を踏まえた視点でも刀を見てほしい、とのことでした。

【1】京のかたなの誕生

メインとなるのは、山城国(京都)の刀の祖とされる三条宗近とその系列の刀匠たちによる刀。
ここであの国宝「三日月宗近」が登場します!
東京国立博物館での公開時には、刀剣ファンが長い列を作ったあの名刀ですね。
実は京都国立博物館での展示は初めての機会!
また、三日月を含め「三条」銘のある宗近作と言われる刀は3口伝わっているそうですが、その全てが揃って展示されるそう。いわば兄弟が勢ぞろいするという感じでしょうか。こちらも楽しみですね!

【2】京のかたなと後鳥羽天皇

京都の刀の歴史を語る上で外せないキーパーソンが後鳥羽天皇。御所内に刀の工房を設け、月替わりで全国から招いた刀匠たちに腕を振るわせ、時には自らも刀をうったとか。そんな後鳥羽天皇自らが制作に携わったという刀が「菊御作」。今回は現存している「菊御作」4口全てが展示されます!
あわせて、現存するなかで日本一古いといわれる刀匠名鑑『「銘尽」観智院本』と、それよりもっと古いかも...?な資料も登場予定とのことですよ。

【3】京のかたなと吉光
3章の主役は粟田口派!京都の東・粟田口近辺を拠点にしていた刀派で、特に吉光は京都の刀鍛冶のなかでも人気・実力ともにトップクラス、到達点とされた人で、京都はもちろん他の地域の刀鍛冶にも大きな影響を与えました。もちろんその作品は名刀揃い!今回はなんと16口が一堂に揃います。こんなに集まるのは日本初の機会では?とのこと。ずらっと並んだ姿を想像すると、壮観です...

【4】京のかたなの興隆

こちらのメインは粟田口と並んで京都を代表する刀派・来派。国宝指定されているすべての刀が集います。また、この章では敢えて京都ではなく、刀の里として知られる備前(岡山)長船の刀も展示。これは京都の刀文化が他の地域の刀匠に影響を与えたように、他の地域の文化の影響も京都の刀が受けているため。決して一方通行ではない、「双方向の文化交流」に触れてほしいとのことでした。王貞治さんの同田貫もこちらに登場します!

【5】京のかたなの苦難

京都を舞台にした戦が続いた南北朝~室町時代にかけては、京のかたな文化は苦難の時代でした。この章では戦乱のなかでも京都に残って刀を作り続けた刀派・長谷部派や信国派と、地方に移動した京の刀鍛冶たちに影響を受けた刀派の作品が登場します。
目玉はもちろん国宝「圧切長谷部」(福岡市博物館)ですが、粟田口派に影響を受けて生まれ逆に京都の刀文化にも影響を与えたとされる相州鍛冶の傑作「会津新藤五」や、刀好きでも聞いたことのないような!?レアな刀派の刀が並ぶところも見どころ。戦乱の世だからこそ生まれた豊かな個性が楽しめそうです。

【6】京のかたなの復興

桃山時代に入ると、戦乱はひとまず落ち着き京都の街は再びみやことして復興していきました。それに伴い、地方の腕利き刀匠たちが「みやこでひと花咲かせよう!」と京都へ移り住むようになりました。ここでは、埋忠明寿や三品金道、堀川国広など外からやってきて京都で育ち、時代の最先端を担った、新刀と言われる時期の作品が並びます。京都の文化は京都のなかだけで生まれ育つわけじゃないのです!
また、ここでは刀の鑑定文化の誕生についても紹介。刀鑑定のスペシャリスト・本阿弥光徳による名刀カタログ「刀絵図」も見られます!

【7】京のかたなの展開
最先端のモードであった京のかたな。これを学んだ刀匠たちがまた各地に散らばりその文化を広めていくことで、京のかたなは全国へと再び展開していきました。
こちらではその代表例として、京の刀派の流れを汲んで大坂で花開いた「大坂新刀」の刀たちが紹介されます。京のかたな文化から生まれた新刀の完成形ともいえる名刀がずらり!

【8】京のかたなと人々
最終章では、京都の人々の生活という視点から刀にアプローチ!
寺社に奉納された名刀をはじめ、祇園祭の「長刀鉾の長刀」、なんと京大や立命館大にあった工房で作られた刀(!)などが登場します。刀や刀を作る人が身近にいる環境で、人々がどのような受け取り方をしていたのか、人と刀の深いカンケイに迫る内容です。
注目は、長刀鉾の長刀は、存在は知られていたのに表で展示されることはなく、それどころか町内の人もほとんど見たことがない!という幻の一品!この機会を逃すとお目にはかかれないかも...

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京のかたな、と一口に言っても、そこにはすべての時代を通じてある共通点があるわけではないので、各時代ごとに活躍した流派やその特徴を見てほしい、それが外部に広がり、逆に京のかたなにも影響を与える、その文化の繋がりを見てほしい、そんな思いを込めた構成になっているそうです。
今回の展覧会は、「刀を通して見る京都の文化の展開と地方との交流の歴史」展ともいえるのかもしれません。

このほかにも、人気ゲーム「刀剣乱舞」とのコラボレーション企画も予定!
まだまだ進行中の内容も多いので、随時発表していくとのことでした。

京博の「本気の刀剣展」、開催&続報をお楽しみに!

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なお、今回記者発表にあわせた特別企画として、切れないように刃を落とした取扱い練習用のものですが、実際に刀を持たせていただくという機会をいただきました。(写真でスクリーン前に展示されているもの)
実際に持ってみると、意外と軽くてびっくり!一見重そうに見えますが、一般的な長さの刀(打刀)ならおおよそ1㎏程度しかないんだそうです。
手元に持って刀を見ると、光の加減で細かな刃紋もくっきり見えて、より刀を身近に感じることができました。
もしかしたら、会期中にも実際に刀を持てるような体験ワークショップが開催されるかもしれませんね(ぜひやってほしい!)

ちなみに、刀剣の展示方法は東西では微妙に異なっているそう。

例えば、東では刀の手元部分にハバキという金具を付けた状態で展示するのが主流ですが、西では逆に外して素の状態の刀全体を見せるスタイルなのだそうです。
今回は京都、関西圏での展示なので、刀は全てハバキを外した状態での展示になるとのこと。所蔵元が東京で普段ハバキをつけて展示している刀も今回はハバキなし!つまり、普段は隠れている部分も見られる!というわけです!

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