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アートを支えるひとたちのことば。ART STAFF INTERVIEW -ZIPANGU展 2 YUZO-IMURA

2011/10/07

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アートを支えるひとたちのことば。
ART STAFF INTERVIEW
"ZIPANGU展" Vol.2
YUZO-MIMURA(井村優三/企画ディレクター)

高島屋京都店で9月28日より開催されている「ZIPANGU/ジパング展」。
今回、展覧会を主催されたギャラリストさんお二人に、お話をお伺いしました。
2回目はZIPANGU展の企画・プロデュースを担当された
井村優三さん(イムラアートギャラリー ディレクター)のインタビューをお送りします。


アートって、今はなかなかマーケット自体がそんなに広くない、とよくいわれています。
でも日本の美術って、実は京都市美術館よりも百貨店である高島屋の方が歴史が古いんですよ。高島屋の美術部がずっと美術品を売ったりしていたんです。横山大観とか、竹内栖鳳とか、名だたる日本画家の作品も、高島屋で売られていたんです。

zipangu-imura2.jpg実は当時、百貨店で販売されたアートの売り上げ金は、国家予算の一部に充てられた時代があったんです。つまり「国」と「アート」に、ものすごく密着性があったんですね。
そこで国はアーティストに対して何か権威をつけよう、ということで、今で言う文化勲章みたいな資格とか、一種の「お墨付き」を与えるようになったわけ。それがつくことによって、そのマーケットでの作品の値段が上がったんですよね。

でもこれって、世界のアートマーケットでは「あり得ない」ことなんです。日本国内だけのマーケットの話。
実は当時日本はすごく美術の消費大国であって、北は北海道、南は沖縄まで、美術品を百貨店で売買していました。そして、国からの「お墨付き」がついたものに高値がついていたんです。
でもやっぱりそれでは、日本が不況になったら日本のマーケットでは値段がつかなくなって、売れにくくなってしまう。百貨店での取引というのは、結局国内だけの市場なわけですからね。

「次の世代のアーティスト」を紹介する機会を作らないと、日本の美術は先が続かなくなって駄目になってしまう。
次を担うアーティストたちが国内だけでなく世界のマーケットに出て行くようになれば、美術の歴史は繋がっていくんです。


でも、今はそうじゃない。
今は、例えば何か美術館とか評論家に文章を書いてもらったりして、自分でプログラムをしっかり組んでるアーティストもいるんです。それが国内で認められて、世界に出て行きます。すると世界のマーケットにのっていく。
zipangu-imura3.jpg本来成熟した国では「国」と「アート」というのは分かれているもので、自由な表現を求められるようになっています。昔は国とアートが依存関係にあったけれど、今の日本では、この「現代アート」の中にそんな、自由な表現をする作家が出てきているんです。
だから、世界のマーケットでも認められる作家の集まり―これから伸びるであろう作家たちを、まずは百貨店の中で一度展覧会をやることで、中をちょっとでも「シャッフル」できたら面白い、と思ったんです。
今までの権威とかだけじゃない、自由に表現者を集めた「次の世代のアーティスト」を紹介する機会を。これをやらないと、美術の歴史が断絶する。先が続かなくなってしまいます。
文化勲章とかが悪いとは思わないけれども、今のまま、国内だけのマーケットでアートをやっていては、日本のアートは駄目になってしまう。
今、次を担う若いアーティストたちが世界に出て行くようになれば、歴史は繋がっていくんです。
それが「ZIPANGU展」を開催するコンセプトであり、きっかけのひとつです。

近代の百貨店で取引されていた時代のアートと現代のアートををつなぐ、橋渡しの役割をするのが、僕、企画担当のプロデューサー。その展覧会に実際に出す作家を選定する役割は、今回は三潴さんが担当しています。
実はこの役目を「ギャラリストがやる」ということが、とても珍しいこと。普通その役割は評論家とか、その時代の専門家の人がやることが多いんですよ。
それを何故僕らギャラリストがやるのかというと、僕らがより、現代のアートのマーケットに密着している存在だからです。

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染谷聡作品展示風景

今回、高島屋さんを会場に選んだのは今までの日本のアートのマーケットを担ってきた百貨店と一緒にやりたい、という思いからです。最初は周りから無理だとも言われましたし、時間もかかりました。この展覧会の開催には高島屋さんのご理解が大きいです。美術部の担当者さんにも、現代アートに理解のある方が結構いらっしゃったのは大きかったですね。
ZIPANGU展は、今後は美術館にも巡回することが決定しています。その次は海外でも開催したいと考えています。無理だ、という人もいますが、新しいことをしていかないと、決して前には進んではいけませんからね。

現代アートに触れる機会が少ない、経験が無い人も、まずは展覧会に来て、生の作品を見てほしいと思います。カタログや写真で見るのではなく、実際の作品にその場で対面してほしい。
そうすればきっと、何か感じるものを得られるはずです。

また、ジパング展では何人かの出品作家に自分の作品について語ってもらいます。
10月8日(土)には森淳一さん、9日(日)には三瀬夏之介さん、10日(月・祝)には山本太郎さんのアーティストトークがあります。(※山口晃さん、宮永愛子さんは終了致しました)
貴重なお話が聞ける機会ですから、ぜひ会場までお越しください。」



「京都で遊ぼうART」でもご紹介させて頂いている河井寛次郎や、上村松園といった京都にゆかりの深い作家も、高島屋で展覧会を開催し、評価されていったという経緯があります。

これまで、日本のアートが羽ばたいていく過程を支えてきた百貨店・高島屋。
そして、現代の若いアーティストたちを支える存在であるギャラリーと、アーティストたちを世に送り出す手助けをするギャラリスト。
これまで、とこれからのアートをひとつの流れとしてつないでいきたい、日本のアートの歴史を絶え間なく次につなげていきたい。そんな思いが、お話からはひしひしと伝わってきました。

お忙しい中お話くださった井村さんに、改めてこの場を借りて御礼申し上げます。



PROFILE

井村優三(いむら・ゆうぞう)
1959年、京都生まれ。イムラアートギャラリー京都 / 東京ディレクター。
1990年、イムラアートギャラリーを設立。96年、丸太町に移転。
2010年には、東京神楽坂にセカンドスペース、イムラアートギャラリー東京をオープンした。
美術館などでの企画展も多数展開し、幅広い美術の世界をプロデュースしている。
主な展覧会に「ZAPANGU展:31人の気鋭作家が切り拓く、現代日本のアートシーン。」
「セラミックロード:海を渡った古伊万里」、「ルネラリック:光への軌跡」「没後100年記念エミール・ガレ展」「ユキパリスコレクション:ヨーロッパアンティーク美しきくらし展」「木梨憲武 色の世界展」など。

■ イムラアートギャラリー:http://www.imuraart.com/
→京都のギャラリーではZIPANGU展にも参加している染谷聡さんの展覧会を10/29まで開催しています!

関連リンク

ZIPANGU/ジパング展-31人の気鋭作家が切り拓く、現代日本のアートシーン。-
2011/9/28-10/10 高島屋京都店グランドホール

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