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「マイ・フェイバリット―とある美術の検索目録/所蔵作品から」(京都国立近代美術館)【展覧会レポート】

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「京都で遊ぼうART」のスタッフが実際に行った展覧会をレポート!
今回は少々遅くなってしまった上にもう終わってしまっておりますが、こちらの展覧会をご紹介させて頂こうと思います。

「マイ・フェイバリット―とある美術の検索目録/所蔵作品から」
(京都国立近代美術館)


マイ・フェイバリット展(京都国立近代美術館)-1 実は一年ほど前にとある美術雑誌の記事でこの企画があることを知ってから、こっそり(?)楽しみにしておりました。
企画者である学芸員の河本信治さんのインタビュー記事で、定年を迎える河本さんが最後に手がける展覧会としてちょっとだけ名前が出ていたのです。
一応事前に情報は得ていたのでモダンアートの展覧会なのは知っていましたが、チラシやプレスリリースの説明には
「京近美のコレクションのなかにある、「その他」という、なんとも表現しにくい、分類しにくいカテゴリの作品を中心にしたコレクション展」

というような表記があるのですが、一体どんな作品が出るのか想像が出来ず、ちょっとしたドキドキ感を味わいつつ、行ってまいりました。


「マイ・フェイバリット」(京都国立近代美術館)-2いざ、突入!するとこんな感じ。
なにやら怪しい音が響いていて一体何?と思っていたら、その正体は踊り場にある物体からの音でした。これは椿昇の作品。ちなみに、左側壁の作品はやなぎみわ。
(左奥の部屋はイチハラヒロコ+箭内新一「プレイルーム。」。こちらは子供と一緒にごろごろできちゃう仕様です。こちらは5/16まで。)

因みに今回、フラッシュさえたかなければ写真撮影もOK!(近美さん、太っ腹です!)でしたので、結構あれこれと写真を撮らせて頂いてしまっております。随時そちらを交えながら、感想を述べてみようと思います。(ほぼ見て回った順番で並べておりますので、文章とは完全に一致していないところもあります。何卒ご容赦下さい)


感じて、楽しむものが満載。美術館、展覧会の面白さが詰まってます。


duchamp1.jpg duchamp2.jpg 入って最初の"デュシャンの部屋"。展示そのものがひとつの作品になっているようです。
右は有名なデュシャンの《泉》。便器に名前(しかも偽名)を書いただけというトンデモ作品ですが...一度見たらこれは忘れられない。
まず感じたのは、一言でまとめると、「美術館って面白い!」を再発見できた展覧会でした。

展示品も、絵や写真といったグラフィックなものは勿論、音や映像、空間そのものを使った作品(インスタレーション)―美術館に実際に行かないと味わえないものが多くあったのが印象的でした。
作品だけでなく、展示室全体がひとつの作品のように感じられるところもありました。作品を見に行く、というよりはむしろ美術館そのものを探検する、といった方が相応しいかもしれません。

myfavorite3.jpg myfavorite4.jpg
左はトーマス・シュトルート《ルーヴル美術館4、パリ》。
展覧会を見ている人々をモチーフにした作品を、見ている人々...何だか自分も同じように後ろから「見られて」いるような気がしてきてしまいます。この部屋は美術館や名画を題材にした作品が多かったです。美術館好きとしては思わずニヤリ。
順路もそこまでがっちりと定まっているわけでもないので、自由に見て回ることができました。
しかしよく見ると作品と作品に関係性があったりして、ちゃんと意図があるのにも気がつけます。

正直現代美術には詳しくないのでちょっと不安もあったのですが、別にそこは問題なし。むしろいつもより素直に作品を楽しめたような気がします。
勿論、予備知識があったほうが面白いものもあると思いますが...理論どうこうというよりは、フィーリングで分かるしかないところもかなりあったように思うので、知識の有無による差を論じるのは正直ナンセンスなような気もしました。なんとなく。

Wodiczko.jpg クシュトフ・ヴォディチコ《もし不審なものを見かけたら...》(2005,© Krzysztof Wodiczko)
すりガラスの向こうに人影。聞こえてくる話し声。近づくと自分の影も映りこんで...まるでビルの一室にいるような感覚。自分も作品の一部になれるこの感じはまさにインスタレーションの醍醐味。絶対に美術館まで行かないと味わえません。すっかり気に入って、この部屋に一番長居してしまいました。
例えば、最初の部屋では有名なマルセル・デュシャンの『泉』が出迎えてくれるのですが、そこにはデュシャンのほかの作品と一緒に、有名な女装したデュシャン(ローズ・セラヴィ名義)のポートレートに扮した森村泰昌の作品『だぶらかし(マルセル)』が置かれていて、と同じ部屋でデュシャン繋がりになっています。他にも美術館を舞台にした作品が連なっていたり、「お金」をテーマにした作品ばかりが集められた部屋があったり、作者繋がりから表現技法、テーマ、時代...と、部屋を進むうちに様々な「繋がり」を確かに見つけることができます。

myfavorite5.jpg
でもそれをほのめかすような説明書きは一切無いので、繋がりや意図には、自分で見て気がつくしかありません。でもそれがかえって宝探しのようで楽しい。見方や感じ方は自分(=見る人)に任せてもらえている感じがして、とてもマイペースで楽しむことができました。


初めて展覧会に行った時の、「いいなあ!」を思い出しました。

実は入り口の横には、今回企画を考えられた河本さんによる序文が掲示されていました。
→詳しくはこちら「とある種別の検索目録、あるいは【その他】への誘い
(展覧会図録の最初のページにも掲載されています)

展覧会を見終わってから改めてこちらを読み直してみると、色々と考えさせられるものがありました。

myfavorite7.jpg膨大な美術作品の流れを分かりやすくするためには「絵」とか「彫刻」とか、ある程度整理して考えたほうが楽である、ということはよく分かります。
でも、そうやってきちんと分けていこうとすると、どうしても枠に収まらずに取りこぼしてしまうものが出てくる。アートは人間が想像して作るものですから、枠に収まらないものが出てきてしまうのは当然です。例えるなら「個性的過ぎてどのグループの仲間にもなれなかった子供」のような感じでしょうか。
myfavorite8.jpg 壁にipodが設置されていて、そこで音を聞くという趣向の作品もありました。
それを、無理に分けることをせず、とりあえず「その他」というところにおいておいた。河本さんはこれを『曖昧さの中に含まれる可能性を惜しみ愛したこと』と表現されています。
無理に枠に当てはめてしまうと、どうしてもその枠...絵なら絵、彫刻なら彫刻といったようにしか見られなくなってしまうところがあります。でも、それを「どれでもないもの」としておいたことで、見る人はそういう枠に囚われずに、「自由に」見ることができるようになった...のかもしれません。

勿論、その分解釈も難しくなるので「え?これって一体何?」「わけがわからない...」(実際展示室でそう言っている人、結構いました)となってしまうわけですが。
でも、かえってそれがとても新鮮な感じがします。同時に、どれだけ自分が普段「枠」にあてはめて物を見てきたのか...も痛感させられました。そのために、どれだけのものに気づかなかったり、取りこぼしたりしてきたんだろう...とも。

myfavorite6.jpg 奥の蛍光カラーの作品は横尾忠則。存在感は群を抜いてます。ケースには以前別の展覧会でお目にかかった、横尾さんデザインの少年マガジンを発見しました。他にも、あちこち見覚えのあるものがちらほら...
序文の中でも、
『種別【その他】の検索にはキーワードではなく、「より非言語的で身体的な何か」でアクセスすることが有効かもしれません。
とありますが、言葉で解釈する術が通用しない分、もっと感覚的な「何か」で作品に触れるしかなくなる。
でも、それは逆に美術の知識がある人もそうでない人も、皆同じ高さから作品を楽しむことができる、と言えるようにも思いました。

掲示されていた序文は、こう結ばれていました。
『今回の展覧会のタイトルに「マイ・フェイバリット」という、一人称+極めて主観的な言葉を用いた理由は、「何か」の発見は一人一人の意志と営為に依存するしかないという思いが込められています。』

myfavorite9.jpg一人一人がそれぞれ自分の感覚や心を頼りに、「何か」が引っかかる"お気に入り"を見つけること。
それが、この展覧会を楽しみ、そして理解するための方法...ということなのでしょう。
それは、ある意味、初めて展覧会に行った時に素直に「いいなあ!」と思ったときに近い気持ちのように思います。
この展覧会は、確かにそれを思い出させてくれるものでした。

惜しむらくは、会期ギリギリに行ってしまったため、リピートは無理な状況になってしまったこと。(まさに噛めば噛むほど味が出る、リピート向きの内容でした)
じっくりと全部の作品を鑑賞していると、本当に時間が足りなかった...!
もっと早いうちに行って置けばよかった、と正直後悔しております...
(収蔵品の展覧会なので、平常展でお目にかかる機会もあるかもしれませんが...)
また是非、機会があればこんな面白い企画をして欲しい!心からそう思うばかりです。

関連リンク

「マイ・フェイバリット―とある美術の検索目録/所蔵作品から」
京都国立近代美術館

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