Exhibitions展覧会

伝統的な町家や日本家屋のイメージが強い京都ですが、1920年～70年代にかけ、京都では様々なモダニズム建築が建てられました。この展覧会では、それら京都のモダニズム建築の軌跡を辿ります。

「モダニズム建築」とは

工業化を前提に、合理主義と社会改革的な思想を背景にして生まれた近代建築を「モダニズム建築」と呼びます。装飾を排した抽象的な形と、外観だけではなく空間の構成を重視するデザインが特徴です。

「モダニズム」という考え方自体は、20世紀の初頭にヨーロッパを中心に生まれ、その思想にもとづいた建築は、世界的なスケールで展開されました。そこには、科学技術の進歩を前提とする、普遍性をもった世界共通の方法を求めようとする共通認識が見られます。

けれども同時に建築は、必然的にその土地の気候風土の違いや地域的な特性・伝統とのつながりなどの影響を受けます。そのため、モダニズム建築は、実はその当初から、国や地域による違いについても議論されてきました。

近年ではこの「国や地域によって独自の展開を遂げたもの」という部分が注目されています。そして改めてモダニズム建築とはなんだったのかを再検証し、これからの建築や都市を考えるための貴重なヒントとして共有しよう、とする動きが顕著になってきています。

伝統とモダニズムが連続する「もうひとつの京都」

こうした中、1200年の歴史を持つ古都・京都は、他の都市とは違う側面を持っています。
関東大震災や太平洋戦争での空襲で焦土と化したことのある東京や大阪とは異なり、京都は幕末の大火の後は、ほとんど無傷の状態でした。京都は、長い木造文化の伝統と歴史的な町並みが絶えることなく連続してきた、とても稀有な都市といえます。

この展覧会では、これまであまり意識されてこなかった視点で、1920年代～70年代までの京都のモダニズム建築を概観します。
展示では、様々なモダニズム建築の「撮り下ろし」写真、実際の設計図面や建築家本人によるスケッチといった資料を中心にご紹介します。

モダニズムの思想がいかに京都の人々に受け入れられたのか。京都という場所を、建築家たちはどのようにとらえて設計を行ったのか。そして、明治以降の近代化と西欧化の流れの中でモダニズムへの転換はどのように進んだのか...
そこに見えてくるのは、伝統と現代をつなぐ貴重な文化の水脈であり、「もうひとつの京都」の姿です。
戦前／戦後という従来の枠組みにとらわれることなく、一続きの流れの中で京都のモダニズム建築の価値と意味について幅広く考え、その文化遺産としての貴重性を再確認します。