Exhibitions展覧会

【作品画像】
（左） 西山裕希子「reflection_trace the boundary」2014年
（右） 西山裕希子「reflection」2014年
© Nishiyama Yukiko

西山裕希子は染織をルーツに、近年では銀塩写真や鏡、ガラスなどを組み合わせたインスタレーション的な空間展開を試みているアーティストです。

　『人の関係のなかの、精神的な距離の曖昧さや、揺らぎや緊張、他者へイメージを重ね投影するといった「うつす」ことに関心をもっています。』とする西山。彼女は人の姿を主なモチーフに、蝋と蝋の境界に出来る隙間を線として画面に残す蝋纈（ろうけつ）染めの技法を用いて描いています。
この蝋纈染めによる蝋と蝋の境界にある不確定で見えない隙間（距離）を、線として顕在化させるこのプロセスは、人と人との間にある曖昧な境界を巡る行為として作品化されているといえます。

また、このプロセスにおいて西山は「うつす」ということにも興味を寄せています。
プリントされた既存のモチーフを手作業でうつしとるトレースドローイングによる作品は、「うつす」という行為の中に回避し難い僅かな像のズレ（対象との距離）を孕みます。西山はこうした「うつす」行為が「人の関係の間にある距離の曖昧さ」へと繋がるものであると捉えています。
同時に彼女は、ゼラチンシルバープリントやトレースドローイング、鏡や写真、物質への映り込みや光の反射などを要素に、ひとつの像が別の媒体に「うつる」ことにも着目しています。こちらでは、作品の在り方をフレームにより切り取られたひとつの物質に限定するのではなく、空間におけるそれら相互の関わり（距離）へと展開させています。

今回の個展は、2012年から14年にかけて、3度のドイツ・ベルリン滞在を経ての作品発表の機会となります。
西山がこれまで一貫して取り組み・深めてきた「人の関係の間にある距離の曖昧さ」への視点をなぞるとともに、現在の主眼のひとつである「うつす」ことへの関心をも垣間見ることができるのではないでしょうか。
会場内ではそこに作品をはじめとする様々な要素を見出し、それぞれの関わりや狭間にある距離を計りながら、いつしか空間そのものをなぞるかのような鑑賞を体験できます。ご注目ください。
 

【関連イベント】トークイベント：session1　西山裕希子×山本麻友美

京都芸術センター プログラム・ディレクターの山本麻友美氏をゲストに迎え、これまでの西山作品の展開を中心にトークします。

日時：2015年4月4日（土）16:00～（約75分予定）
出演：西山裕希子（出展作家）、山本麻友美（京都芸術センター プログラム・ディレクター）
※予約不要・入場無料

【関連イベント】トークイベント：session2 西山裕希子×林田新

2012年に開催されたた「かげうつし―写映・遷移・伝染―」、現在開催中の「第二回かげうつし展覧会『Here-After』」などの企画を手がける林田新をゲストに、現在の西山の主題のひとつである「うつす」をテーマにトークします。

日時：2015年4月11日（土）14:30～（約75分予定）
出演：西山裕希子（出展作家）、林田新（京都市立芸術大学芸術資源研究センター研究員）
※予約不要・入場無料
 

西山裕希子

2003年 　　　　  京都市立芸術大学大学院美術研究科染織専攻 修了
2013年～14年 Universität der Künste Berlin, Professor Leiko IkemuraのもとGuest Studentとして研修
2015年 京都市立芸術大学大学院美術研究科博士（後期）課程油画領域 在籍

【助成／在外研修】
2012年 吉野美術振興財団在外研修員としてベルリンに滞在 (公益財団法人吉野美術振興財団)
2013年 ポーラ美術振興財団在外研修員としてベルリンに滞在 (公益財団法人ポーラ美術振興財団)
2014年 野村財団より2014年度上半期芸術文化助成 (公益財団法人野村財団)

【主な個展】
2001年 アートスペース虹（京都）
2005年 「seeing with blind eyes」大阪府立現代美術センター
2009年 「鏡のすき間」PANTALOON（大阪）
2010年 「a suite ‒組曲‒」neutron kyoto（京都／’03、’05）
　　　　　 「portrait」Showcase/MEGUMI OGITA GALLERY（東京）
2011年 「室内模様」STANDING PINE -cube（名古屋）
その他グループ展多数参加