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知らない人から身近なおじいちゃんに~泉屋博古館、櫻谷文庫を訪れて~

投稿:2013年11月28日

木島櫻谷-このしまおうこく-

お名前を知ったきっかけは通勤途中のとあるお店に掲示されていた「木島櫻谷旧邸一般公開」のポスターでした。
とても雰囲気のある素敵な階段の写真が印象的で是非お屋敷に入ってみたい…そう思っていたら今度は泉屋博古館での絵画展のポスター(こちらは雪の竹林にふさふさした毛並みの狐が静かに歩いている絵)が目に留まるように。

興味が湧いた時が鑑賞どき!と人が少なそうな平日の昼間に行ってまいりました。

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まずは、鹿ケ谷にある泉屋博古館の絵画展から。
美術館前の樹々も秋らしく色づいています。
中庭にも紅葉を眺められる空間があるので絵画を眺めたあとはそこで余韻を楽しむというのも楽しいと思います。

櫻谷さん、若い頃には流れるような勢いを感じさせる武将の絵も描いていましたが、私は展示の全体を通して見て、やはり最初に惹かれた狐などの動物画が印象に残りました。
「しぐれ」では鹿たちのつぶらな瞳、肉感溢れる肢体、特に今にもぴぴぴっと動きそうなかわいらしい尻尾が、「獅子」では王者の貫禄にふさわしい思慮深い眉間が(ライオンですが)、「厩」ではひと仕事終えた後の馬の筋肉や視線がおおらかに描かれています。
「月下老狸」の狸もふわもこっとしていてかわいらしい。(櫻谷さんは「たぬきの櫻谷」という異名もあったそうです)
動物たちがみんな本当にやわらかい印象で、それはきっと櫻谷さんが画題としてだけではなく動物たちに愛情を感じながら筆を動かしていたからだろうなぁと想像ができました。
期間中、展示作品の入れ替えが行われ、2回目の鑑賞は無料になるので(入館券裏に無料スタンプを押してもらえます)来月15日までの間にまた見に来たいと思います。

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美術館を後にして、次に訪れたのは衣笠にある旧邸。
今回が初めての一般公開なのですね!
築100年ということでしたが、時代を経た、つやつやとした飴色の調度や廊下の材、愛情をもって保存されてきたのが伺えるものでした。
階段は常の町家のものよりも大幅に広く、これは絵の発注主に作品を見てもらうスペースである2階に作品をあげやすくした結果のものだとか。櫻谷さん自身が設計に携わったのでこういう実用的なところもしっかり反映されています。

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入場券の写真にもある花嫁衣裳は孫娘の将来の為に制作されたもの。博古館休憩室で櫻谷さんが衣笠の邸宅でお孫さんたちと遊ぶ映像を見ていたので「あの子が袖を通したのか…」とより身近に、家族へのあたたかな感情も感じることができました。

50代に入り、公務から身を引き画壇からも距離を置き、衣笠の邸宅で過ごすことが多くなった櫻谷さん。
地味な着物に小倉の袴、無造作な五分刈り。
外出時には一銭も持たず、懐には写生帖のみ。
祇園、京極には行くこともなく、近郊、動物園で写生して過ごす。
家では読書と画三昧。

衣笠にこんな理想郷があったなんて…。
この日初めて、元・職場の近くにこんな素敵な邸宅があったことを知りました。
そして現在、私が住んでいるのは中京区。櫻谷さんの生家のあったところの近所です。
また、櫻谷さんの絵の師匠が住んでいたお屋敷(現在は懐石料理屋さん)はさらに近所。
作品を見て、邸宅にも訪れて、そして実は近くに住んでいたことも絵を習いに通ってきていたことも知り、私の中で木島櫻谷さんが「全く知らなかった人」から実に「身近に感じられるおじいちゃん」に変貌を遂げた1日となりました。
 



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