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廣誠院 ただ今特別公開中

投稿:2013年4月 9日

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現在、春の特別公開中(3月30日~4月14日)の臨済宗保水山廣誠院は、数寄屋風の建物と、高瀬川から取水された園池を取り囲むようにつくられた庭園が、河原町二条という街中にありながら、周りの喧騒をよそにひっそりと佇んでいる。

玄関で靴を脱ぎ、進んでいくと左手に仏堂がある。ここは、旧薩摩藩士、伊集院兼常が幕末の長州藩邸の跡地に自らの邸宅として明治25年(1892年)に建てたのち、広瀬家にわたり、臨済宗の寺院として今日まで守り継がれてきたそうである。仏堂の壁には歴代の住職の写真が飾られている。一番最近の人であろうか、それでも古そうな写真だが、彼の顔の半分くらいある福耳がとても印象的だった。

さらにすすむと、三畳半ばかりの茶室がある。立ち入ることはできないが、茶室独特の小さなにじり口と、ひなびた感じと、窓から眺められる庭のリズミカルな感じが面白い。

つきあたりは広間で、赤い毛氈の上に久々に正座をして、庭園を眺めながら緑茶と豆落雁とをいただいた。二、三人のグループが3組ばかり、和の空間と雰囲気でそれぞれにくつろいでいる様子だった。

最後に次の間から書院へすすむ。春慶塗の床かまちに北山杉の床柱。床の軸は、大きなだるま和尚がぎょろりとこちらを見ている。

沓脱石に用意されていた茶色のスリッパを履いて庭へ出てみる。桜が満開のこの時期に、一本の桜も持たない庭園の池を覆うイロハモミジの新緑が、午後1時を少し過ぎたばかりの日差しを受けて、青い空ごとくっきりと水面に映っていた。向こう岸の一本の低い椿の花が一つ、水面にポロリと落ちて、その赤い花の姿を保ちながら、ゆっくりとそして着実にこちらやってきて、そして通り過ぎた。

ふと見上げると、3メートルに及ぶ深い庇がまるで和風のテラスのように日差しを遮っている。

夜は6時半から9時まで「維新の光」と称して夜間ライトアップがある。きっと幻想的だろう。水面に何色の光が映るのだろうか…などと思いを巡らしながら再び玄関に戻ってみると、入るときには気付かなかったが、上り口の床が竹を並べて作ってあった。
青竹踏み効果のある健康玄関だ…など摂るに足らぬことを思いながら廣誠院をあとにした。

文責:虹のSIKA

明治日本の発展を担った近代数寄者 伊集院兼常の邸宅 「廣誠院」昼の特別公開と夜間ライトアップ「維新の光」



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