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高麗美術館 朝鮮のかわいいいれものたち展

投稿:2011年7月16日

アーリランアーリランアーリラーン☆
あ、すいませんね。
アニョハシムニカ、一応、ミコ先生は弘益大学に語学留学した経験もある
韓国通なのですが、今まで高麗美術館には行った事がありませんでした。
今回は、下のチラシのデザインが見事なので、
デザインに釣られる形で出掛けるつもりになりました。


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高麗美術館
2011年春季コレクション名品展
朝鮮のかわいい いれものたち展」4月2日(土)~7月10日(日)
10時~17時 (入館受付は16時30分まで)
一般料金500円


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というか、会期は終了してしまいましたが、
高麗美術館のお庭、素敵なお庭でしょ?

まさにこの画像だけ見れば、どこの韓国の美術館か博物館でしょう?
といった風情です。

それでは
高麗美術館の朝鮮のかわいいいれものたち展について
感想を述べたいと思います。

flyer_iremono.jpg

とにかく、もうすでにミコ先生の拝見した「かわいい いれものたち展」は終了しているので、
感想はそもそも高麗美術館自体の話にピントを合わせたほうがいいのでしょうか?
問いかけておいて、特に回答を待たないままお話を進めさせていただきます。
 

美術館の特徴:創設者 鄭 詔文氏の思い

自分はごく最近、京都の私設美術館で一番展示内容やプレゼンテーションの充実している美術館は三年坂美術館ではないか、と考えています。
立地が良い事も去る事ながら、それは創設者の村田理如氏自身の審美眼で選び抜かれた作品と、
コレクションの趣旨である「1900年前後に大量に海外に出回った日本工芸を再び日本に取り戻し、若い世代に職人がその技の限りを尽くした力作たちを見せる事が自分の使命だ」という強い意志とがしっかり繋がっているからです。
コンセプトと厳選された日本随一の白薩摩などの作品たちがしっかりリンクしているので、コレクションがより有意義になり、
美術館が実際スペースが狭かろうが広かろうが、特別展などの企画展の内容が他の美術館から何点借りれようが借りれまいが全く気にならないので、自分は優れた美術館だと思います。

話を高麗美術館に戻しましょう。
高麗美術館の場合、幼い時に日本へとやってきた鄭 詔文氏の在日としての「故郷への思い」がコレクションの原動力だと思います。
この「故郷への思い」とは3種類のベクトルに分かれます。
 

(1)海外成功者として祖国統一の日に無事帰還するという夢への憧れ

映画「パッチギ!」で、サッカーで日本で成功し、いつか祖国の選手としてワールドカップへ出場し錦を飾るのだ!
という壮大な夢を持った若者のエピソードが登場しますが、鄭 詔文氏のコレクターとしての情熱はまさにそれと良く似ています。
異国日本で汗を流して必ず成功し、韓国や朝鮮から流れてきた半島の名品と共に祖国が統一する暁には、日本で亡くなった両親の分まで胸を張って帰還するという夢に憧れ、祖国統一の夢への貯蓄として健気にコレクションを増やし続ける、という側面。

(2)祖国での暮らしへの憧れ

鄭 詔文氏自身は幼少時代に日本に渡ったのですが、
もし、貧しくも両親が祖国での暮らしを続けてさえいてくれれば、自分たち家族は日本に来るよりきっと幸せだったはずだったんじゃないか?
という問いや、
自分が祖国の風土や平凡な暮らしを直接知らない事が
コレクションが美術品だけでなく、より多面的に民族資料館的な要素が強まったと思われます。

(3)在日3世4世たちへの思い

在日として海外生活を始めた世代としての責務は、その息子、孫など未来を担う人たちに祖国の文化を伝えなければならない、
という使命感を持っている様で、
それが(2)で述べた民族資料館的な展示と結びついているように感じました。
 

感想

まず、率直な感想としましては、
本当に、古美術商から買って、そのまま飾っている、という印象です。
展示品として甲乙ないように、下手な共直し部分を再補修してもらうとか、大幅に欠けている部分などは補うとか、
そもそも欠損部分の全くない、もしくは欠損部分が苦にならない鑑賞しやすい作品を美術館に飾ることが
鑑賞側に対するマナーじゃないのか、というか、
そういう対処が余り成されていないのが、悲しいかな「個人の収集家」のレベルを突き破らない印象を持ちました。

そういう完璧に美しい割れのないものばかりをコレクションするという完ぺき主義でなく、欠けてても歴史的価値は十分にある、という
考古学的な価値観を高く鑑みる視点が、自分からすると美術館らしくないと思いました。

自分にとって美術館とは歴史的価値に溢れた知的興奮の場ではあることはもちろん、
そこに展示されている作品は一般庶民が所有するのには恐れ多いに値する品であってこその入場料金(目の保養)だと思うんです。

「朝鮮のかわいいいれものたち」と括って展示を展開していますが
お軸や卓や茶碗や櫛、糸巻きなど「それはいれものかよ」と言われれば、何も反論できないものも多くありました。

要するに、特別展と銘打っても、
高麗の青貝の技術や高麗青磁白磁など、王道の品はどうしても紹介したいし、
女物の小物から、朝鮮の文化も紹介したいし、
それでも「かわいい いれものたち」と括っているので木製6連函などの日本では余り見かけない珍品のいれものも紹介したい。
といった具合で、てんこ盛りなんですよ。
視点が飽和していて、絞りきれていないんです。隙だらけなんですね。

 

しかも、高麗美術館の企画展は一室のみなので、そう、まさに群れで噛み砕かれる思いです。

「自分がここの学芸員だったらどうするかな?」と観覧しながら思いを馳せました。
もちろん、民族資料館ではなく美術館らしい設置に努めると思います。
 

作品リストの無料提供

⇒これで完結させて欲しい。
作品名と作品の年代、大きさをエクセルでまとめた表を下さい。
これがあるのとないのとで相当情報量が異なります。
 

「いれもの」だけに展示品を絞る

⇒例えば「めがねケース」を紹介するためにめがねも展示していました。
こういう部分からどんどんずれていくと思うので、いれものだけに展示品を絞るのが無難だと思います。
というか、もう、いわゆる香合だけに品を絞っても良いくらいだと思いました。
どうせなら、香合だけで質より量で、展示ケース内に沢山敷き詰めてしまっても豪華でボリュームもあるし良いのかも知れません。
 

余談:商売がしたい。

⇒ツアーを企画されていたりするそうですが、
美術館内で、金曜週末限定のナイト営業18:00-20:00で高麗文化の夕べみたいな歌と踊りの集いが毎週あっても良いでしょう。
もちろん、料金は通常の4倍。
でも、大人の知的で優雅な美術館での異国の夕べ。
もちろん学芸員の皆さんは交代制で必須残業して司会。
日常時オープンの美術館併設の高麗喫茶店も喜ばれるはずです。
なぜなら、美術館周辺はお洒落な喫茶店がないからです。チャンスだと思います。
創始者の方も、今の韓流ブームを見たら、きっと泣いて喜んだと思います。



ですので、フルーツパラダイス京都店を作りましょう。
違うか。


とにかく、本日7月16日から新しい企画「花卉草蟲」が絶賛開催中です。

 

文責:目々沢ミコ 編集:京都で遊ぼうART

このレポートは、こちらの記事より抜粋させて頂きました(目々沢さんのブログへ)

 

関連リンク

2011年春季コレクション名品展「朝鮮のかわいい いれものたち」

花卉草蟲(かきそうちゅう)-花と虫で綴る朝鮮美術展

高麗美術館



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