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ぜんぶ!やなせたかし!~ビールの王様・詩とメルヘン・アンパンマンetc.~(京都国際マンガミュージアム)

投稿:2010年12月 1日

「アンパンマン」に込められた作者・やなせたかしの歴史と思い

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極端な大器晩成型と言おうか、「漫画家やなせたかし」こと柳瀬嵩は、こと漫画に関しては、驚くほど遅咲きだ。

もちろん「アンパンマン」がヒットするまでにも漫画を描く機会はあった。35歳で独立してから描いた四コマ漫画が、ここ国際マンガミュージアムの展示場には所狭しと並ぶ。
私事で恐縮だが、いくら文章を書く機会があっても、それ一本で食べて行けるまでには私も相当苦労している。漫画家やなせたかしが、漫画以外にもテレビや作詞の仕事も来るものはすべてやったというエピソードには、そんな苦悩が裏にはあっただろうことが想像できる。

ところで、ヒット作「アンパンマン」が、やなせたかし50歳の時に晴れて日の目を見るのであるが、この「アンパンマン」という作品には、戦争体験を持つ、やなせたかしのこんな思いが込められているのをご存じだろうか。

「人は傷つかないで正義を行うことはできない」

yanasetakashi-2.jpg 会場展示風景(提供・京都国際マンガミュージアム)

アンパンマンの顔が、簡単に取り替えられるものであることは、誰もが知っていることだろう。例えバイキンマンとの闘いで傷ついても、顔を取り替えて元気を取り戻す姿は、皆が目にするシーンだ。
しかし、この、アニメでは当たり前の事情が、漫画ではいささか異なるという事実を知っている人は、稀であろうと思う。まさに、その、顔を取り替えるという行為において、やなせたかしの信条が、はっきりと現れているのである。

アンパンマンは、例えその顔が傷ついても、町のみんなに残りの顔を全部食べてもらわないと顔を新しくすることができない。これが、「アンパンマン」という漫画に、やなせたかしが込めた思いなのである。

今回の「やなせたかし展」では、順路に従って、漫画家やなせたかしの歴史が、写真などとともに紹介されていた。しかし、代表作である「アンパンマン」にも、いや、代表作だからこそなおさら、漫画家であるとともに一人の人間としてのその歴史が、色濃やかに、反映されているのが見て取れた。いつの時代も「表現者」は、無意識であっても己を作品の中に込めてしまうものなのだなあと、そんなことを考えていた。

文責:梅田たけし 編集:京都で遊ぼうART



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