京都の若手アーティスト特集【KYOTO NEW WAVE】

エントリー詳細

学生作家 森川 阿沙子

構想設計/ )

February 13 Thu, 2014

 

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「KYOTO NEW WAVE」第30回目は京都市立芸術大学の版画専攻を卒業し、現在は大学院の構想設計専攻に在籍している 森川 阿沙子さんにお話を伺いました。


取材/小川智美、原野萌 写真/原野 テキスト/小川、井口、原野 編集/松岡

 

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Needles no.1 / 2013

 

大学院受験の際、版画専攻ではなく構想設計専攻を受けた理由は何だったのですか。

 私は制作室に籠りきりで作品を作るのに、発表すると作品だけが商品として外に出ていくことに違和感があって、何のために制作しているのか分からなくなったことがありました。エディションの作れる作品は日本画や油絵より商品になりやすいですよね。だから合評ではマーケットでの戦略的なお話をいただくこともありました。すごく勉強になるけれど作品を考える時に商品としての価値も考えていく事がその時の私にはなかなか腑に落ちなくて。
 ちょうどそんな時に趣味の料理を友達のパーティや知り合いの展示のオープニングで振る舞う機会が増えていて、その延長で週一回、学校の近くで売っている地元の野菜を使った料理を出すご飯屋さんを始めました。今は夕方も学校の食堂が開いてるんけど私が学部生のときは昼間しか開いてなかったので、じゃあご飯屋さんをしようと。
学校の中なのでお金のない人とは物々交換したりと、試行錯誤を重ねたりぶつかる問題に対応していくことがとても楽しく思いました。すると今の構想設計の先生が、この活動は作品ではないけどこんなに熱意を持ってやっている活動が芸術活動じゃないわけがないと言ってくださったんです。
 アーティストになる道以外の、もっとマーケットと距離をおいた作家のあり方、芸術の捉え方もできるんだと思って大学院の構想設計にいきました。

 

制作やプロジェクトを進めるにあたって何を大切にされていますか?

 物事のボーダーラインを越えて何かと出会うことです。今は制作とプロジェクトに分類しているんですけど、見せ方を変えているだけで私のやりたいことや大事にしていることは基本的に一貫しています。違うところは出会い時間のかけ方だなって思うんですよ。たとえば他人の家のなかを通り抜けて目的地までいく映像の作品がありますが、ネタばらしをしないんですね。これが美術と思ってやってるとか、そういうことは全く言わへんから、その人からするとただの変な人と出会ったっていう経験だけが残って。
 それと、私がイベント開いたり、ワークショップしたときには時間を掛けて話しあったりとか、今関わっている震災後の東北とのプロジェクトもすごい長い時間かけて関係性を作っていこうとしていて。関係性を発展させていく時間の長さが違うんですけど、でもどっちもすごく大事やと思うんですよ。
 理解できないから、一瞬の出会いやからこそ強烈に心に残ることもあるし、関係性が発展していくからできる話もあるし。どっちのレベルの出会い方も大事で、創造性を持っていると思ってるから両方のチャンネルを持った人になりたいです。

 

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Straight walk for a cup of coffee /2012

 

南区でのcumin project(※1)という活動ではどんなことをされていますか?

 私が大学院1回生のときに市民の人と遊ぶようなプロジェクトを彫刻専攻の友人とはじめました。たまたま知人から南区から助成金の募集があることを教えてもらって、応募したら通っちゃったんです。
 その区民プロジェクトの目標は、アーティストの人が普通に生活してる人と楽しいことをするっていうざっくりした、街を好きになるとか、街歩きを楽しくするということです。近所の人が面白がって何してるのって見に来たり、子供が学校帰りに遊びに来るようになったりとか、日常の中にするっと入っていくような活動の場にしたいです。
 南区は最近アトリエが増えてきたり、芸大も近くに移転することが決まったし活動を続けたらもっと面白い大きいことができるんじゃないかと思っています。

※1......cumin project cumin新聞の発行、「cuminひろば」の運営(南区の住宅街の中にある農耕地を地元の方に貸してもらっている場所をオープンスペースとして運営。野菜作りやWSの開催など)、小学校で「オノマトペ」をテーマにしたWSや椅子作りのWS(cuminひろばに常設)、HOTEL ANTEROOM KYOTOでの展覧会など
http://cuminproject.hotcom-web.com/

 

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cumin project

 

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cumin project

 

東北での震災を機に始められたプロジェクトについて教えてください。

 2011年3月11日の震災が起きて、私に何ができるか分からなかったけれど、ただ何が本当か知りたくて、震災について話をしたい人同士で情報を共有する場を作ろうということになりました。ちょうど学生主体の企画授業がその年から始まったので、コミュニティーに関わる活動をされている小山田徹さん(彫刻専攻准教授)を先生に迎えて、友人と二人で授業を企画しました。最初は震災について考えるというテーマで授業を進めていましたが、震災のことだけ考えていてもだめやってことに気が付いて。震災が起きた時の条件が変わっていればもっと違う被害がでたかもしれないという話を聞いて、人が生きる力を持っていないと非常事態に呑まれてしまうんだと感じました。食べることとか、友達と喋ったりとか、充実した時間を過ごすこととか、生きる力について考え始めると授業の質が変わっていきました。
 それから小山田先生が大学外の方とも被災地に関わるプロジェクトをされていて、そのプロジェクトの方たちについて実際に被災地である宮城県女川町に行くようになりました。最初は、カフェを開いて一緒にお茶を飲みながらお話しました。それからは就業支援として、お店が流されてしまった人のためのキッチンカーの外装デザインをお手伝いしたり、仮設住宅暮らしで生活環境がガラッと変わってしまった島のおばあさんたちと何か特産品のようなものを一緒に考えて、新しい手仕事の提案とかをしています。
 活動にあたっては現地の人たちのペースと主体性を大事にして、まずそこの人たちと出会って、友達になるということを心がけています。もっともっと時間をかけたいです。学生の間だけでない、長期のプロジェクトですね。

 

奈良出身の森川さんは京都にどんなイメージをお持ちですか?

 古都と言えば京都と奈良っていうイメージが強いと思いますが、私は奈良でも田舎の方に故郷があるので、初めて京都に来た時びっくりしました。観光地でも当たり前にスロープがついていたり、人がちゃんと券売機のところにいたり、お店や宿泊地が沢山あったり。奈良って実は47都道府県で一番宿泊施設が少ないんですよ。みんな大阪と京都に泊まるから奈良は日帰りで遊びに来るみたいなところがあるんですよね。京都だと歴史的な資料とか建築物が残っているけど、奈良には建物すらも残ってない時代のもの、観光資源になるようなものがあるのにそれを観光客に見せるための施設や設備が十分じゃないっていう問題があって、遺跡を発掘しても研究者の方からは現状維持が求められているから建物も立てられなくて。そんなふうに奈良は観光客へのプレゼンテーションが下手ですけど、私にとってはそこがいとおしくて。その点京都は良くも悪くもなんて上手いことしているんやろうと思います。商売人というか、新しい情報も入ってくるけど、東京ほど商業的ではなく伝統も守っていますよね。
 あと京都ではいろんな人と出会えますね。奈良のすごく田舎の方だと10分歩いてもひとりに出会うくらいやから、すごく活動しやすいです(笑)

 

今後京都とはどのように関わっていく予定ですか?

 そうですね、京都にいようと思います。奈良にもいつか帰りたいんですけど、お金の流れが機能しやすい場所ではないので。京都のものをそのまま持っていくのではなく、持っていけるようなものづくりと見る人のシステムをもっと京都で実験したいなと思っています。
 私は基本的に単発の出会いがすごく好きで、寺山修司さんていう詩人が行っていた「何月何日にタバコの火を借りにいきます」って書いた手紙をポストに入れるっていう書簡演劇の作品があるんです。受け取った人は気持ち悪いけど何もできなくて、同じ手紙が毎日来てカウントダウンするんです。「ご迷惑はおかけしません」とか「普通の煙草なんです」みたいな内容だったり。前日は「明日タバコの火を借りに行きます」って。
そして次の日、本当にその時間にタバコの火だけを借りて帰って行くんです。私はそういうのがすごく好きで。
 意味が分からないけど、待っている方はすごく想像しますよね、本当に来るのかなとか、どんな意味があるのかとか。そういう社会のなかにある意味の分からないものに惹き付けられるので、作品なのか趣味なのか分からないですけどずっと続けて行きたいと思っています。作品だと美術のためっていう意図が分かっちゃうから趣味にしたほうが面白いのかもしれませんね。どっちにしろ、誰も傷つけない変な人になれたらと思います(笑)

 

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Needles no.3 / 2013

 

 

 

 



 

人との関わり方に視点をおいた制作やプロジェクトを進められている森川さん。やりたいことや好きなことを実践して行く力を持つ魅力的な方でした。お話を聞いて、身の回りの社会の変化を受け止め、自分にできることは何かということを考えさせられました。これからの活動も応援しています。

 


 

 

 

 

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Artist Profile

森川 阿沙子 - Asako Morikawa -

 

1989 奈良県生まれ
2012 京都市立芸術大学 版画専攻 卒業
2013  The Royal College of Artへ3ヶ月の交換留学
現在 京都市立芸術大学院 構想設計専攻 在籍

 

|主な展覧会|
2013.3  Little Melody | HOTEL ANTEROOM KYOTO Gallery 9.5 | 京都市
2013.8  無限の数え方 | KUNST ARZT | 京都市
     Dialogue -東北、宮城、女川から- | Garelly@KCUA | 京都市
2013.12  The exchange student exhibition | Hockney Garelly | London

 

 

 


About

展覧会・イベント企画やフリーペーパー発行など、積極的なアーティスト支援活動を行っている京都・関西の美大生団体「SHAKE ART!」による、「京都で遊ぼうART」特別連載コーナー!京都の新たなアートの波=KYOTO NEW WAVE を生み出す、旬の若手アーティストを毎回ご紹介していきます。

Profile

SHAKE ART!

関西の美大生団体SHAKE ART!は若手アーティストや美大生をプロデュース。人や作品を出会い繋ぐきっかけづくりをしています。イベントや展覧会の企画運営やフリーペーパーを発行しています。



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