京都の若手アーティスト特集【KYOTO NEW WAVE】

エントリー詳細

学生造形作家 笠原 美希

立体造形/ )

September 21 Sat, 2013

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『KYOTO NEW WAVE』 第26回目は京都精華大学大学院一回生の笠原美希さんにインタビューさせて頂きました。


取材/原野萌、佐賀遥菜、川久保美桜 写真/原野 テキスト/佐賀、川久保 編集/松岡

 

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右も左もわからない / 2013

 

今までの活動について教えてください。

京都精華大の立体造形コースに入って院まで進み、いわゆる「彫刻のコース」でものづくりをしてきましたが、クラシックな作品には全く興味が向かずに、どちらかというと素材遊びのようなことをし ていました。やはり立体的な仕事が多いですが、自由な環境で好きにやってきましたし、表現にもこだわりは持っていなくて素材も決めていません。最初のほうはFRPというプラスチックの作品が多かったのですが、最近は絶対的な必要性や理由がないかぎり既成品を使うようになりました。 私の作品はこうですって言葉でなかなか言えないんです。これからの目標とかを言いたい気持ちはあ るんですが、表現にもこだわっていないしこうしたいっていう気持ちもなく自然に気になったものを作っているんです。私は自分がいる立場だとか周りの状況、身近なことや政治的なこと、世界のこと まで色々と自分のものの見え方を作品を作ることで整理しているように最近思うようになりました。 大学3,4回生の時にモノ作りが楽しくなってきて、方向性なども模索しながら大学院に進むことを決 めました。卒業後は作家になると決めていて、今は色んな人に出会ったりしてどんどん経験値を積んでいる段階です。

 

精華大学の立体造形コースに行こうと思ったきっかけは何ですか。

高校のとき、当時の友達に感化されて美術館に行ったんです。そこでいちばん立体物に影響された経験があります。彫刻という考えはなかったのですが色んな大学を調べた時に立体造形コースは色んな 素材が学べると知り、それも決め手のひとつになりました。

 

奈良の高校から京都の大学へ行かれましたが、京都にはどのような印象を持っていますか?

京都というか関西という言い方になってしまうんですが、関西は雰囲気がおおらかなので制作はしやすいかと思いますね。どうやったら売れるか、競争社会のなかで勝ち残っていくかを考えるときにアート人口が多い東京に出て行くっていう選択肢をとる人は多いと思いますが、それとは全く関係なく 制作という状況や環境を考えた時に、自分が育ってきたこともあり、関西がやりやすい、過ごしやすいって思います。

 

『テーマパーク』について詳しく聞かせてください。

バレンシア・ビエンナーレで展示した作品です。 東京都現代美術館チーフキュレーターの長谷川裕子さんにピックアップしてもらい、出させてもらいました。英語が分からなかったので怖くてしんどい思いもたくさんしましたが、いい展覧会でしたね。 『テーマパーク』は2011年の震災を受けて作ったもので、これは原発の公式と非公式のキャラクター なんです。そのキャラクターを知っている人たちから見ると、子供たちが乗っている状況っておぞま しいと思うんですよね。そのおぞましさが分かるのと分からない状況を同時に作りだした作品なんで す。アラブの石油エネルギーがあるから世界で成り立っている事業もありますし、石油がそもそも高 いから日本の原発もありますし。という日本のエネルギー問題を関連付けて、この3体と向こうの石 油エネルギーのあれでアメリカの石油会社のキャラクターを作って合計5体で向こうに展示しました。

 

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テーマパーク / 2010

 

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Theme park / 2013

 

エネルギー問題など自分の周りで起きたことを作品にすることが多いですか?

というよりはこの作品を面白いって言ってくれる人がいるので、私自身もそういうふうに作品を見せるんですよ。ネタとしては原発とか震災とかは流行りのネタですよね。けれど私は別にそれが言いたい訳ではなくて。いまいち原発や震災にリアリティをもって感情移入できなくて。実際に私は被災者 ではなくてテレビだけを見ている人間だから、実生活にも影響はなくて、可哀想だし大変だなとは思うのですけれど。山本太郎みたいに実際に自分が動くかというと動かないわけじゃない。そういう人 間のほうが多いじゃないですか。そういう傍観者っていう立場を捉えたかったんです。自分の立場や状況というものを世の中の流れというよりは、その生ぬるい空気を『テーマパーク』のゆるキャラみたいなところに繋げたくて、ポップさや子供が乗る状況のかわいらしさという雰囲気を利用しているんです。自分がどういう世代でどういう影響を受けてきてどのように育ってきたかというのを踏ま えて、社会の流れをどう整理するかっていうところが今の作品の基礎ですかね。

 

日常的なものをモチーフにしていますがどのような考えで作られていますか。

自分がどういう作品を作ってきたかというのが分かったのは本当に最近のことです。コンセプトの必要性をちゃんと自分の中で整理できていないまま、「作品を作るならばコンセプトがいるものだ」っていうのを言われてそのまま受け入れていたので作品の意味合いとか方向性とかテーマのようなメッセージ性に苦しんでいた時期があったんです。コンセプトはこれで作りましたって言ってもいまいちピンと来てもらえないし、自分もピンとこないしそれで結構悩んでいてしんどくなってコンセプトを考えるのをやめたんですよ。囚われるのをやめようと思って。それからも色々あって、『おまい♪ り』は神社で作ると決めて参拝者を作りました。この時は神社という存在とお参りという行為とその社会的な意味合いも含めてのズレを参拝者とギャルという感じで造形的に作りました。 『defoem』のときは自分の中での「外」の部分を探そうと思って作りました。鳩という風景によく入ってくる動物を奇形化させて自分の中の社会的なところと内面的なところのズレを表現したかったんです。そんなふうに自分がしたいことを徐々に掴んできました。今までもそうだったように、これからも考え方はどんどん変わっていくと思います。だから最初に言った通り、私こういうことしてますって言えないんですよね。もっと色んな関心を持って色んなことを吸収したいなと思っています。

 

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おまい♪り / 2010

 

『and a Happy new year!』について教えてください。

発表したのは2012年の2月、大学院の進級展で展示しました。毎年、各家庭のクリスマスイルミネー ションって規模のすごいところがありますよね。ああいうのってクリスマスっていうところからかけ離れた意味合いが出てきてると思うんです。話を聞いていると自分の家のクリスマスイルミネーションを見に来てくれる人を見るのが好きだから、毎年飾るとかっていう。イベントとか見栄とか方向性が意味わからなくなっているのが面白いなと思っていたんです。この作品はどう誰にとってもらってもいいと思ってるんですよ。2011という時の流れとかを人はどう捉えているのかなっていう、時代の流れと人の感情の流れとを考えて作った作品です。

 

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and a Happy new year! / 2012

 

 

この作品以後はなにを作られましたか。

木彫りのクマに金箔を張った作品を作りました。あと、おもちゃのお金で折った千羽鶴と風鈴の先に札のお金をぶら下げた風鈴を窓際にずらっと並べて、「風がなったらお金が揺れて音が鳴るんちゃう」の作品とあわせて初めての個展を開きました。クリスマスイルミネーションの作品のときに世の中の流れと共に変化していく人の気持ちを取り上げて作品にしたので、その中で汚いと言われるところ・とっかかりを感じるようなところを取り上げてやろうと思って作りました。クマの作品だと、木彫りのクマってバブル世代だと北海道のおみやげといえばこれっていうくらい普及してたものなんですよ。木彫りのクマって手作りの民芸品で人が手をかけて作ったものですよね。にも関わらずどんどん廃れていった。これ姉がホームレスから100円で買ったものなんです。そこに金箔を重ねてなにかできないかなあと思って作りました。

 

今後の活動は?

9月24日から10月の5日まで大阪のメゾンダールというギャラリーでグループ展をします。 その後2月18日から23日に京都の東山のKUNST ARZTっていうギャラリーで個展をやります。方向性としてやりたいなあと考えているのは、土地とか風景から作品を形作ることですね。地元が好きだからという理由もありますが、私は奈良県で生まれてそれからずっと奈良に住んでいます。その奈良の土地や風景から発生させた作品を二つの個展では展示できたらいいなと思ってます。
今後の活動の目標としてるのは、海外レジデンスへの参加ですね。シャルジャビエンナーレでアラブに行ったときに色んな国の作家さんと話をして自分の経験値がないことを感じたのですが、楽しかったので。活動範囲を広げて色んなことを吸収したいです。




 

笠原さんの作品は日常のほんの些細なニュースや疑問に目を向けていて、 わたしたちも社会が抱える問題や矛盾点を改めて考えさせられます。 これからも、幅を広げて邁進していく彼女の活躍に目が離せません。

 


 

 

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Artist Profile

笠原 美希 - Miki Kasahara -

 

1988年奈良県生まれ
2013年京都精華大学大学院卒業

主な展覧会
○個展
2012   “ステータス” CAP         STUDIO Y3/神戸
○グループ展
2009  越後妻有アートトリエンナーレ大地の芸術祭      
    “枯木又プロジェクト”         枯木又分校/新潟県
2010  上賀茂神社アートプロジェクト  加茂別雷神社/京都
2012  南宇都宮石蔵秘宝際         ギャラリー悠日/栃木     
     主張てん      ギャラリーアーティスロング/京都
2013  シャルジャビエンナーレ11     / アラブ首長国連邦     
     氣韻展       ギャラリーアーティスロング/京都

 

 


About

展覧会・イベント企画やフリーペーパー発行など、積極的なアーティスト支援活動を行っている京都・関西の美大生団体「SHAKE ART!」による、「京都で遊ぼうART」特別連載コーナー!京都の新たなアートの波=KYOTO NEW WAVE を生み出す、旬の若手アーティストを毎回ご紹介していきます。

Profile

SHAKE ART!

関西の美大生団体SHAKE ART!は若手アーティストや美大生をプロデュース。人や作品を出会い繋ぐきっかけづくりをしています。イベントや展覧会の企画運営やフリーペーパーを発行しています。



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