『KYOTO NEW WAVE』 第2回目は京都市立芸術大学に在籍し、
日本画の制作を行なっている学生アーティストの松平莉奈さんにインタビューしました。
取材・写真・テキスト/中山奈美
2010.04 「時の綾」
大学で日本画を専攻した理由は何ですか?
中学、高校と美術部で油絵を描いていて、その時期は大学に入っても油画を専攻するつもりでした。
でも、大学進学のための絵画教室で、先生に「君の絵は日本画向きだね」と言われていたんです。
その頃から、自分の中では疑問に思いながらも、日本画の画集を見るようになって、それから日本画の魅力にどんどん引き込まれていきました。
竹内栖鳳や、上村松園等の作品を見ては「日本にもこんなにいいものがあるんだ!」って衝撃を受けてましたね。
あと、油画のような自由度の高い制作よりも、日本画の「モノの見方を基礎からみっちり教わる」という制作が、自分にとって「強み」になるだろう、と感じたことも一つの大きな理由です。
自分の世界を作り出してアウトプットしていくことよりも、「観察」「デッサン」という対象物のインプットから始めることが私の中で理に適ってるんだと思います。
だから大学に入学してからは、日本画を専攻することを迷いませんでした。
日本画を制作するとき、大切にしている事はありますか?
人を描くことが多いんですが、やっぱりデッサンが一番大切ですね。線が自分のものになるまで描くようにしています。
人体は、描くときに自分の感覚を反映しやすいので、そういう意味では扱いやすいモチーフだと思います。
あとは、一本の線が表す「意味」や「品格」を大切にして、いいモノを作りたいというのは常に考えています。
そのためにはとっかかりになる対象物や思いが、明確にないと上手くいかないんです。
「何をしたかったのかわからない」っていう失敗をしてしまうんですよね。ただ、失敗しながらでも前に進んでいるとは感じています。
最終的には、何かを表象するための絵ではなく、その絵自体がいいモノとして成立することを目指しています。
絵の中に描かれた一本の線の「美しさ」があってこその「日本画」を描きたいんですよね。
2010.6 「無題」
日本画を制作していて、面白いと感じるところはどこですか?
私は日本画自体が、完璧な美しい工芸品や意味を伝える媒体だけではない、それらを行き来できる存在であることに魅力があると感じています。
それには、日本画独特の制作のプロセスが関係してるのですが、それはまず「観察」と「デッサン」があって、さらに下絵が「小下絵」と「大下絵」があり、そしてやっと岩絵の具を使って「本画」を描く、という長いものなんです。
でもそのプロセスの長さが作品の「品」としての価値を生み出すし、「絵」としていいモノを作り出すんですよね。
それに作業は楽しいですよ。素材が綺麗だし、特殊ですから。胡粉や膠を触っているのはまるでお菓子作りみたいだなと思います。
手間がかかる分、さらに楽しいんです。ただ、まだまだ使いこなせていないですね。使い方を見つけていくのは課題だと思ってます。
休日はどのように過ごされていますか?
外にスケッチをしに行ったり、美術館やギャラリーを見に行ったりしています。
普段は裸婦のクロッキーばかりしているんですが、休みの日は気分を変えて外に植物を描きに行くんです。
日本画専攻の人はみんな、モチーフを探しに結構学外に出ていますね。
ただ制作をしていない時も、日常的にモノの見方が絵を描く見方になっているような気がします。
あとは最近、絵画教室でのアルバイトをしていて、子供に絵を教える事があるのですが、それがすごく楽しいです。
子供に「好きなように描いて」って言っても「何を描いたら良いかわからない」って言う子が多いんですけど、
描く事自体を楽しいと感じてもらいたいな、と思っています。私自身も、そうやって子供の絵を見るのが楽しいし、そこから学ぶ事もありますよ。
2010.12 「無題」
2011.02 「流動するかたち」
今後、どのように活動していきたいと思っていますか?
まずは日本画の世界にどっぷり浸かりたいです。
それで自分の中の「日本画」というのを1つ見つけて、そこから日本画の良さも含めて発信していこうと思っています。
最終的には日本画だけで終わりたくなくて、でもその為に、まずきっちり日本画を「学ぶこと」、そして「見つけること」が目標ですね。
理想はやっぱり、絵を描いて生活が出来ることですが、今重要なのは制作のサイクルを作って、しっかり整えることだと感じています。
公募展やギャラリーさんなどにも作品を出して行きたいと思っていますが、それには自分が他の人と何が違って何が出来るのか、自分自身がわからないといけない。
だから30歳ぐらいまでには一つの答えを見つけたいです。それまではひたすら日本画を学ぼうと思います。
最後に、松平さんにとって、日本画とはどのような存在ですか?
日本画の制作がある生活には満たされていると思いますね。作業はすごくしんどいですけど、幸せですよ。
今それがなくなると空っぽだと思います。描かない生活って想像するだけで、すごく怖いですね。
けどその反面、描く事だけが自分自身の全てではないと思ってます。
見てくれる人がいる意識があってこそ成り立ってるので、自己満足で漫然と描いていても、いいモノは出来ないですから。
ただ「日本画」というものの存在は、正直、私にはまだ全然見つけられてないです。
まだ初めて数年なので、これから一生かけてその答えを見つけていきたいです。
小柄で可愛らしい外見の松平さんですが、お話を聞いて「しっかりした芯をある女性」という印象を受けました。彼女の描く人物は、人を惹き込むような魅力があります。その原点には、彼女の日本画への確固たる考え方がありました。
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Artist Profile
松平 莉奈 (まつだいら りな)
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