扇子は日本で生まれ、中国やヨーロッパまで伝わった工芸品です。
京都はその発祥地といわれています。
扇子は既に平安時代初期(9世紀頃)から作られはじめ、16世紀ごろには現在のような技法が確立されました。能などの演劇や茶道などの文化が花開いた京都だからこそ発達した工芸品である、といえます。
京扇子には非常に多くの種類があり、形状・素材用途に応じた美の形が追求されました。おおまかに、木板を束ねた板扇と、竹を骨にして紙や絹を貼った貼扇の二種類があります。
一方で日本の団扇(うちわ)は、その形から中国系、朝鮮系、南方系の三つに分けられます。
京うちわは、南北朝時代(14世紀)に伝わった朝鮮団扇の流れを汲み、細骨を一本ずつ放射状に並べて便面(びんめん:うちわの面)を作り、あとから柄(え)を取り付ける「指柄(さしえ)」構造が特徴です。
「御所うちわ」とも呼ばれ、宮廷でも使われていただけに、柄には漆に金彩といった優美な細工が施されています。また、便面も日本画のような完成度があり、美術工芸品としても称賛されています。
今回の展示会では、既成概念に囚われない、意外性のある図柄の扇子・団扇を揃え展示いたします。今もなお、時代時代の人々の生活に密着して様々な求めに応じ、工夫を加えて作られ続けている京都の扇子団扇の工芸美をお楽しみください。